いち早くフィジルカル強化に取り組んだ青山学院大 原晋監督「いかに陸上が遅れていたことか……」

 青山学院大が初めて箱根駅伝を制した2015年、青山学院大が取り組んでいる“青トレ”(体幹トレーニングや動的ストレッチなどフィジカルトレーニングの総称)が一躍フィーチャーされた。それに追随するように、他大学の取り組みが紹介される機会も増えると同時に、新たにフィジカルトレーニングを取り入れたチームも多くなった。
 それぞれでアプローチは違うかもしれないが、「それぞれのトレーナーの方たちが考えるトレーニングはどれも正しいと思います」と青山学院大のトレーナーを務める中野ジェームズ修一氏が言うように、各チームがそれぞれのメソッドを確立させてきた(または、その途中にある)。
 今や上位校にとってはフィジカルの強化は常識。「私らが現役時代にやっていた補助トレーニングというと、腕立て、腹筋、背筋、懸垂といったもので、それが今の時代にまで続いていました。いかに陸上が遅れていたことか……」とは、青山学院大の原晋監督がよく口にしていたことだが、この数年でその様相はかなり変わったように思える。

自重のトレーニングがベースの青山学院大 ウエイトトレーニングで強化した東海大

 前回まで箱根駅伝で4連覇した青山学院大の“青トレ”は、ランに必要なインナーユニット(腹部をコルセットのように包む腹横筋、背中側にある多裂筋、横隔膜、骨盤底筋群で構成されている)の体幹を強化するもので、また、ランニングに必要な部位の動的ストレッチなどのケアにもフォーカスしている。
 一方、今年の箱根を制した東海大は、自重が基本の青トレに対して、器具を用いたウエイトトレーニングを積極的に採用している。これには、2014年から両角速駅伝監督の参謀を務める西出仁明コーチの存在が大きい。西出コーチはアメリカの名門・オレゴン大学式のトレーニングを導入。自らもウエイトトレーニングに取り組み、それを長距離選手の指導に生かしている。また、体育学部の准教授として高地トレーニングも研究しており、科学的なアプローチも取り入れている。
 これまで長距離ランナーに器具を用いたウエイトトレーニングは不要という考えも根深かったが、東海大の活躍あった中で、昨年男子マラソンで日本記録を樹立した大迫傑(Nike)もウエイトトレーニングを重要視しているとあって、大きく見直されている。

革新のシューズばかりが注目されるが 「履きこなすためにはフィジカルの強化が必要」

 往路2連覇の東洋大もフィジカルトレーナーの下で強化に当たっている。世界の長距離界を席巻している厚底シューズ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」を東洋大の選手たちも履いているが、「これを履きこなすためにはフィジカルの強化が必要」と酒井俊幸監督が話すように、シューズばかりが注目されるが、選手に力が伴っていることは大前提だ。
 もちろんシューズを履きこなすことばかりが、フィジカルトレーニングの目的ではない。上半身を強化することで上体が安定し、臀(でん)部やハムストリングを強化することで出力も大きくなる。昨今、長距離のスピード化が話題になっているが、フィジカルの強化とスピード化は決して無関係ではないだろう。
 もちろん一因に過ぎないし、結果を出しているチームの取り組みが、必ずしも万人に合うものとは限らない。とはいえ、「フィジカルがしっかりしているチームは、しっかり結果を残している」と酒井監督も言うように、ここにスピード化した駅伝で優勝争いをするチームの共通点があるだろう。

基礎があって効果が得られる最新式トレーニング

 フィジカルトレーニングの話題からは180度転換するが、最新のスポーツ科学が着目される一方で、走り込むことの重要性も再認識させられた今年の正月だった。
 数多くのスピードランナーを擁する東海大だが、今回の箱根駅伝に関しては走り込みを増やして箱根駅伝に照準を絞ったという。すでに東海大の勝因は多く語られているが、そのスタミナを養ったからスピードが生きたのだろう。また、スピード型の選手ばかりではなく、ハーフマラソンで結果を出してきたスタミナ型の選手の活躍も大きい。4年間かけて力をつけた湯澤舜や、なかなか駅伝で結果を残せずにいた湊谷春紀(4年)が、それぞれ2区、9区の長距離区間で堅実な走りを見せた。また、山で好走した5区の西田壮志(2年)、6区の中島怜利(3年)も長い距離のロードを得意とする選手だ。
 そういえば、元日のニューイヤー駅伝でも、“陸上競技部”ではなく“マラソン部”のMHPSが、最終盤まで優勝争いをして2位に入る健闘を見せた。
 時代に合わせて最新式トレーニングを取り入れることも大事だが、長距離走の原点はやはり走り込むことなのだろう。その基礎があって初めて最新式トレーニングの効果も表れてくると考えられる。

和田悟志

著者プロフィール 和田悟志

1980年生まれ。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。