PSGやJFAアカデミーでの指導歴もある「エコノメソッド」の概念

 アルビレックス新潟が導入したエコノメソッドは、FCバルセロナ下部組織(カンテラ)での指導歴を持つコーチ陣が設立。エスペラント語で「インテリジェンス」という意味を持つ。その特徴は「正しい認知を基に良い判断ができる賢い選手を育てること」と、エコノメソッド責任者のダビッド・エルナンデス氏は言う。サッカーのプレーにおける“認知”・“判断”・“実行”のプロセスのうち、「何をいつ見て、どう動くべきか」という“認知”と“判断”にフォーカスを当てたトレーニングとなっている。試合の状況、ボール、相手、味方、それぞれの位置を正しく理解し、プレーを素早く適切に実行するための「サッカーインテリジェンス」向上をテーマに据えている。

 日本におけるエコノメソッドの活動は、2012年から開始。国内では各地でキャンプやスクールを展開するとともに、分析・コンサルティング部門責任者のフランセスク・ルビオ氏はJFAアカデミー福島U-13の監督を務めたり、日本代表選手の個人コンサルティングを担当したりしている。国外では2016年から3シーズンに渡り、パリ・サンジェルマン(PSG)のアカデミーでメソッド部門を統括。同クラブ史上最多となる8人の選手をトップチームに送り込むなど、育成手腕は折り紙付きだ。

「育成の充実は必要な投資」5億円程度の予算削減でも導入を決定

 アルビレックス新潟とエコノメソッドの提携を進めたのが、アメージングスポーツラボジャパン代表の浜田満氏だった。当時10歳だった久保建英(現・FC東京)のFCバルセロナ加入のきっかけを作った人物であり、FCバルセロナキャンプやU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ、エコノメソッドスクール開催など、日本サッカーの成長を促進する事業を展開している。

 2019年にアルビレックス新潟の代表取締役社長に就任した是永大輔氏とは旧知の仲であり、「浜田さんが日本のサッカーに対してどんな思いを持っていて、どういうクオリティで仕事をしているのかはわかっていたので、一度のミーティングですぐにやると決めました」というスピード感で、是永氏はエコノメソッド導入を決めた。

 是永氏がアルビレックス新潟のトップに立ったのは、1年でのJ1復帰が叶わなかった時期である。それは2年連続でJ2を舞台に戦うことになり、収入が減少すると見込まれている時期だった。「5億円程度の予算削減が必要」という状況に陥りながらも、「必要なことには投資しなければいけない。育成の充実は本質的なところ」という強い信念の基、クラブはプロジェクトを推進していくことになった。

(予告)
第2回となる中編では、アルビレックス新潟がエコノメソッドを導入した理由と狙いに迫る。地方クラブが抱える問題点とは? その解決策にエコノメソッドが一役を担う。


VictorySportsNews編集部