進路選びで常に大事にした信念

――中学時代にはジュニアオールスターで神奈川県選抜に選出されていますが、福井県にある強豪・北陸高校へ越境進学をしています。初めての寮生活など北陸高校での3年間はいかがでしたか?
本当に最初はしんどかったですね。親元を離れるのも初めてですし、末っ子で甘えん坊でしたから。多くの部員の中でアピールして試合に出るまでも大変でした。そうした切磋琢磨の中で日本一を目指す環境で3年間を過ごせたことは、人間的にもすごく成長しました。また武器であるディフェンスの基礎を教わったのもこの頃です。

――その後、日本大学に進学されたきっかけは?
これも“トップリーグに行くために”という思いだったので、いくつも大学を調べました。早く試合に出るために、ポイントガードのライバルが少しでも少ないところを考えましたし、それでいて才能あるインサイドの選手が豊富に揃っている大学を探しました。雑誌も見ましたし、母親が関東大学リーグを録画しに行き、それを送ってもらって見たりしていましたね。

――大学時代の経験が今に生きていることはありますか?
サインプレーを考慮して、いくつもあるセットプレーの中からタイミングに応じて使い分けをすることの基礎が身についたのは日大での4年間でした。また我慢強くやる、ということを学んで大人になったかなと思います

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想像していなかった世界を日々戦っている

――Bリーグが誕生し4年目のシーズンも10月から始まります。Bリーグになってからの変化はどのように感じていますか?
本当に色々な変化はありましたし、お客さんも比べ物にならないくらい増えて、認知度が上がってきたことは感じます。ただ、よく言うのは“これがプロ野球やJリーグと比べてどうかと言われるとまだまだなリーグだ”ということです。ここからが勝負どころです。

――そして“日本代表の主将として東京五輪1年前を迎える”という現在の状況は想像できましたか?

子供の時もそうですし、つい数年前までは五輪に出るというイメージも正直ありませんでした。バスケットボールで登りつめたいという漠然とした気持ちはありました。自国で開催されることもそうですし、そのタイミングで招集されてチャンスを掴みかけているという状況はイメージできていませんでした。この数年でバスケットボール界が目まぐるしく変わり、子供の頃には想像していなかった世界で日々戦っているという感じです。

――高校・大学時代と世代別代表に選出され、国際大会を経験されていますが、その際はどんなことを感じられましたか?

“どうにか世界を驚かせてやりたい”という高いモチベーションで大会に臨んで、練習でもハードに追い込むことができていました。でも、接戦には持ち込めても勝てない。悔しいというか寂しかったのは、単純に“リバウンドに届かない”ことですね。ディフェンスを頑張っても、一生懸命ポジション取りをしても、上からヒュイっと取られてしまう。そういう悲しさみたいなものはありました。“どこをもっと頑張ればいいんだろう?”と。厚い壁を感じました。

――今回のW杯予選では開幕4連敗から一気に連勝街道に転じました。チーム内で一番の変化はどんなことですか?
予選途中からの(ニック・)ファジーカスの帰化、八村(塁)の招集というのは一番のターニングポイントだったと思います。その2人のインパクトのおかげもあって、(世界ランク当時10位の)オーストラリアに勝つことができ、メンタル的にも大きな転機になったポイントだったと思います。

“リバウンドが届かない”という課題を解消してくれたのがこの2人だと思いましたね。“外れたシュートを拾えるかどうか”でこんなにも変わるのかと感じました。

――“リバウンドを制する者はゲームを制す”とも言いますが、まさしくそんな変化だったのですね。
本当にそうですね。勝てなくても、対等ぐらいにはなれています。これまではリバウンドだけで20、30本の点差つけられるというのが日本のいつものパターンだったので、それが五分五分になるだけで“これだけ楽になるのか”と。

――予選途中からは主将を務めることになりましたが、その中で心がけたことはあるのでしょうか?
キャプテンになったからといって急に何かを変えたというようなことは全くないですね。W杯で戦った15人は多少の入れ替えはありましたが、本当に良い選手ばかりで。変にまとめる苦労とかはなく、自然とまとまってやれたというのは大きかったです。また、10年くらい結果が出ない中でも代表を引っ張ってきた選手たちが、その苦しさを知っている分しっかり支えてくれました。これも大きかったですし感謝しています。

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バスケがかっこいいということを伝えたい

――W杯そして東京五輪への抱負を教えてください。
まずは9月にW杯があります。五輪に向けて、まずはこの目の前のW杯に全力を注ぎたいと思います。それに対して最高の準備をしなければいけません。

――バスケの魅力はどんな部分だと思いますか?
シュートもそうですけど、パスで味方に喜んでもらうこと、ドリブルで相手をかわすこと、観客を沸かせること、様々な魅力が詰まっているのがバスケだと思います。今バスケをしている子たちや、始めようか迷っている子たちに伝えたいのは “バスケってカッコイイんだぞ”ということですね。

――W杯、東京五輪と、Bリーグ誕生よりももっと一般の人が見る機会が増えますよね?
僕も様々なスポーツを観ますが、現場(会場)で見ると感動しますし、鳥肌も立つし“やっぱりスポーツってカッコイイな”と思うんですよね。だからバスケットを見たことないとか、ルールがあまり詳しくないという人ほど1度近くで見て欲しいんです。バスケは観客とプレイヤーの距離がめちゃくちゃ近いスポーツです。ボールが転がってくれば選手が目の前に飛び込んでくるし、飛び越えていってしまうことだってある。演出や飲食などにも力を入れていますし、まず1度、それこそライブやフェスに行くくらいの気持ちでBリーグに遊びに来てほしいなと思います。

〈了〉



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篠山竜青(しのやま りゅうせい)

1988年生まれ、神奈川県出身。横浜市立旭中、福井・北陸高、日大を経て2011年に東芝ブレイブサンダース(現川崎ブレイブサンダース)に加入。年代別日本代表にも複数回選出された。日本代表には2016年から召集されている。178cm75kg。


VictorySportsNews編集部