2020年1月26日に第39回目を迎えた大阪国際女子マラソン。白熱したレースが実現するまでには、大会としても「最後は、私。」という今大会のキャッチフレーズを言葉だけで終わらせないための周到な準備があった。

■設定記録最優先へ、こだわりは安定・高速ペース

このレースでは、順位がすべてのMGCや五輪本番とは違い、厳然たる設定記録への挑戦が至上命題。それには安定して、かつ高い水準でペースを刻むことが不可欠だった。そこで配置したのが、1kmごとのラップを見てペースメーカー横につけたバイクからペースを指示する「ペースメーカー制御バイク」。国内では東京マラソンのみが導入する取り組みを、女子の大会としては初めて取り入れた。ペースが上がっていれば抑えるように、逆にスローであれば早めるように、目の前で、肉声で直接制御することを可能にした。

さらに序盤のラップの乱れを防ぐべく、新谷仁美、萩原歩美と2人の日本人ペースメーカーを招聘。特に大会1週間前にハーフマラソンの日本記録を48秒も更新し、大阪国際では「蛍光アームバンド」で集団を引っ張った新谷は序盤のハイペースに大きく貢献し注目を集めた。また、先頭集団の前方を走るテレビ中継車の背面部にはタイム計を設置し、5kmの関門通過ごとに「直近の5km ラップタイム」を表示。選手たちが自然とタイムを意識できる環境を整備した。今大会には松田以外にもワコールの福士加代子、天満屋の小原怜といったMGC経験者がレースに臨んだが、福士を指導する永山忠幸監督が「大阪国際はペースメークもそうですし、気象条件も含め、すべてにおいて完璧なレース環境だった」と話すなど、いま一歩及ばなかった選手の指導者からも高評価を受けた。

■拡散した「マラソンあるある」、様変わりしたネット戦略

大会に向かうまでのPRにも力を注いだ。特にSNSでの告知展開は大きく様変わりした。関東圏での視聴率アップを狙ったPRを念頭に置きつつも、これまで取り組んでいた東京都内での巨大看板やつり革広告などを全廃。その予算をTwitterのプロモーションツイートなどに割いて情報拡散を目指した。大会の約1カ月半前からは、過去全大会のハイライト動画をTwitter上で順次公開。PRツイートには増田明美とレイザーラモンRGを起用し、大会前の1週間に「マラソンあるある」を計8バージョン集中投稿した。該当8ツイートの総インプレッション数(表示された数)は130万5779、エンゲージメント率(見た割合)は6.77%と高い水準を記録した。

LINE NEWSの「特集」でも有力選手のコラムを掲載。レース当日はTwitterとも連動した速報動画配信サービス「Replay Cast」を随時通知した。過去の全特集企画でベスト10に入るほどのPV数で、マラソンに関心がない層へ「目の前のレースに気付かせる」機能として活躍。テレビにとどまらない幅広い導線からレースへの接続を果たした。結果として関東圏での視聴率は、2012年大会以来8年ぶりとなる10%を突破(10.4%)。関西でも13.7%、占有率は29.4%と高い数字を記録した。

■大盛況の選考レースから、節目の40回へ

こうしたレース内外のさまざまな変化を通って、第39回大会を大盛況で終えた大阪国際女子マラソン。来年1月には節目の40回を迎える。五輪イヤー後はじめての大会へ向け、次のヒロインはまばゆい新星か、それとも酸いも甘いも知る経験者か。まさに松田瑞生が2018年の第37回大会で初マラソン・初優勝を果たし、2年後浪速路へ戻って日本代表へ手を伸ばしたように、大阪から世界へ羽ばたこうとする選手たちに伴走し、多様な方法で応援していく準備は始まっている。ランナーたちと共に、大会もさらなる発展を目指し歩みを止めることはない。

邨田直人

著者プロフィール 邨田直人

サンケイスポーツ運動部(大阪)。1994年、大阪府高石市生まれ。2018年度に入社し、2019年2月から関西サッカー担当。現在、2022カタールW杯予選全試合を取材中。第38、39回大阪国際女子マラソンの広報を務めた。