親方直々の稽古で若い衆の育成を
鳴戸部屋には12人の弟子が所属している。この取材の前日には東幕下14枚目・元林が勝ち越しを決めていた。1.4万人のフォロワーがいるTwitterからは、場所中毎日若い衆の成績が発信される。公式HPもきれいに整えられ、相撲部屋のイメージを覆された。鳴戸親方はこの部屋の広報も勤めている。
場所中は毎朝7時半から約2時間稽古を行い、一人と20回ほどぶつかる。一回ごとに腕の使い方、上半身の入れ方などを丁寧に伝えていく。「疲れた?」「痛い?」といった体の調子を伺う会話も多い。親方自身、現役時代は怪我に悩まされた。部屋にトレーナーを呼ぶなど、弟子の体のケアも大切にしている。
親方が幹細胞治療を行ったのは2019年の10月。自身の脂肪組織から培養した幹細胞を右膝に投与した。相撲界では前例が少なく、治療内容が報道された後には部屋の電話が鳴り続けた。
投与後に現れた痛みもすでに引いたという。弟子とのぶつかり稽古でも、両膝を深く曲げてしっかりと力を受け止めていた。
ー治療の経過は順調ですか?
鳴戸親方「念のためサポーターはしていますが、もう痛みはないです。稽古前後には膝周りのストレッチを少し丁寧にするくらい」
ー丁寧なフィードバックが印象的でした。
鳴戸親方「鳴戸部屋はオープンな文化。体の調子や、悩んでいるところなども細かく会話します。それが怪我の予防にもつながります」
ー若い衆に勢いがありますが、どんな方に部屋にきてほしいですか?
鳴戸親方「何事にも一生懸命な人。鳴戸部屋では何でも一緒にやるし、新しいことでもいいと思ったら取り入れるのがモットーです」
稽古を終えると、ウォーターサーバーからひしゃくで水を汲む。そのミスマッチが新しく、鳴戸部屋を象徴しているようにも感じられた。2019年には弟子のコンプライアンス違反が発覚し、マネジメント体制を強化した。オープンな文化へのこだわりは弟子を守るためにある。ここから相撲新世代は生まれていくのか。部屋の雰囲気を伝える公式ブログやTwitterの更新にも期待したい。
【VICTORYクリニック】第六回「脱臼後の関節治療」:元大関琴欧洲が感じた、アスリートが幹細胞治療を選択するメリットは
ブルガリア出身力士として人気を博した、元大関の琴欧洲(現・鳴戸親方)が行った「幹細胞治療」が角界で話題だ。現役時代に何度も苦しめられた膝の脱臼治療に、引退後5年で踏み切った理由、そして幹細胞治療選択の決め手は。主治医である、お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長とともに話を聞いた。