日本野球機構(NPB)は、11日に12球団代表者会議を開催し、6月中旬から下旬、最短で6月19日の開幕を目指すことで一致した。翌12日にはオーナー会議を開き、緊急事態宣言解除後に準備していくことや現状の経営へのインパクトも訴えていた。台湾や韓国では無観客試合で開幕し、台湾では少しずつ観客を入れることも決定した。緊急事態宣言の解除、ガイドライン作成、移動リスクを低減させるための日程作りなど、課題はまだまだ多い。
「それでも、なんとかプロ野球を開幕して欲しいのは多くの国民の願い。経営が大変なことは十分わかっている。しかし、これまで国民からもらってきた元気、今背負っている期待は大きい。プロ野球は開幕する方法を考えて実現してリードしていくべき立場。その先には必ず経営に還ってくる」
経営者がビジネスのことを考えなくてはならないのも分かるが、それが公器ともうたってきたプロ野球の務めなのかもしれない。
「日本におけるプロ野球というのは、スポーツ界はもとより、さまざまなエンターテインメント分野のベンチマークです。現在の疲弊した状況を打開していくためにも、まずはどうにかしてでも開幕して、選手たちの元気なプレーを届けることが、たくさんの人に元気を与えることになる。プロ野球の開幕と、来年の東京オリンピック開催。オリンピックに関してはこの経済状況下での否定論もありますが、この2つは、日本が元気になるために欠かせない要素だと私は思っています」
もちろん従来どおりというわけにはいかない。すでに交流戦やオールスター戦も中止となり、試合数も限定されるのは間違いない。いま求められるのは、安心・安全に野球の試合ができるための「新しいルール作り」や「変える力に基づく卓越なまでの準備と環境変化」だ。
「変わることや失敗を恐れていては、物事は前に進みません。“with コロナ”の時代にどうやって折り合いをつけていくかを判断し、時代にあわないものは変えていくしかない。そして挑戦に失敗はつきもの。失敗しないと成功はない。だからまず挑戦して失敗して成功にたどり着くリーダーがこの時代には求められている。
たとえば、選手や家族、プロ野球に関わる全員が、中国の武漢のような全員抗体検査をして、毎日PCRないし抗原検査をして、少しでも高かったり体調が悪かったりする選手は、球場に入れずに帰らせ、安全が確認できるまで登録を抹消する。これまでなら末梢から再登録までは一定期間が必要でしたが、安全が確認できた段階ですぐに登録可能にする、一軍登録可能な人数も増やす。サッカーでは、これまで試合中の交代が3人まで認められていましたが、今年から5人交代可能になるそうです。
もちろん変化に伴う痛みやリスクもあるでしょう。なぜ安易に変えるんだと文句をいう人もいるかもしれません。でもそれを恐れていては、何もスタートしない。いま求められているのは、何が何でもやるんだ!という志と、そのための準備や対応をする力。すべては、現状を“変える力”だと思います」
どうやらこのウイルスとの戦いは、長いものになりそうだ。ならば元通りになるのを“待つ”のではなく、新しい時代へと“変わる”、“変える”しかない。「プロ野球や政治は関わりやしがらみが多いんだ!そんな簡単なものじゃない!」という人もいるだろう。変化や意思決定に時間がかかること、調整や配慮が大変なことは国民誰しもが重々わかっている。しかし、これからの時代は「変える力」が求められている時代。プロ野球がその先鞭を切ることができれば、ファンだけでなく多くの人がそこから力をもらえるのではないだろうか。
取材協力:文化放送
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プロ野球、6月開幕なるか!?いま日本の“変える力”が試されている
開幕が先送りになっているプロ野球だが、6月下旬の開幕を目指すことで12球団が一致した。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、現在一般社団法人さいたまスポーツコミッション会長、男子バスケットボールB3リーグ・埼玉ブロンコスのオーナーを務める池田純氏は、「それでも」プロ野球の開幕が実現することを切に願うと語る。
(C)共同通信