学校の授業や部活の再開もままならない状況で夏の甲子園大会を中止とした判断はわからないでもない。だが、せめてもう少し待つことはできなかったのか。5月20日、日本高野連は、今夏の第102回全国高等学校野球選手権大会の中止を決定した。これにともない実質的な予選となる地方大会の中止も決定。夢の大舞台を目指したすべての高校球児たちが無念の“不戦敗”となった。
「どんなチャレンジをしたのでしょうか?是が非でも困難を乗り越えてやるんだ!という前提で議論が進んだのでしょうか?中止の決断が早かったと思われてもしかたないのではと思います。5日後の25日には全国で緊急事態宣言が解除されました。もう少し待ってからの判断でも遅くはなかったと多くの人々が思ったでしょう。
今は野球でいえば3回裏が終わったくらいの感じともいえる。新型コロナウイルスの世界的流行があり、日本ではみんなが自粛することで予想以上に蔓延を抑え込むことができた。この自粛期間の間はある意味、これから続くであろう『コロナの時代』に向けた準備期間。みんな色々なことを学んだと思います。この先どうしていくか、どう生きていけばいいのかを考えた。高校野球もただ中止にするのではなく、どうにかして開催できないか、どうしたら開催できるかを考えても良かったのではないかと思います。他は多くのものごとが“開くチャレンジ”のフェーズに入っているのに、高校野球は“全部閉じる”という一つ前の、一回の表裏のときのような、必要以上に拙速な判断のように私は感じました」
緊急事態宣言が解除となった25日、プロ野球は6月19日に無観客で開幕することを発表。スポーツ界以外でも “新しい生活”のなかで、様々な対応策を講じて、「止まる」、「やめる」以外の生き残り法を模索している。
「もちろん開催することのリスクがあることはわかります。学業との両立も考えなければならないでしょう。野球だけが特別なのかと批判する声も上がるかもしれない。それでもやり方を考えるとか、時期を考えるとか、色々な方法があったのではないかと思います。
何より、リスクがあるからやめるという姿勢ではなく、リスクと付き合いながらチャレンジする姿勢を大人が見せるべきだったのではないでしょうか。目の前に困難があっても挑戦する姿を高校生に見せることは、教育的にも大きな意味があったのではないかと思います」
新型コロナウイルスとの戦いは、これからが本番。これまでは防戦一方だった。だが、ここからは相手の動きを見ながら“反撃”すべきだろう。準備はできた。まだ3回表。ここからが本当の力の見せどころといえるだろう。
取材協力:文化放送
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なぜプロ野球はやるのに、甲子園は中止なのか?
春に引き続き、夏の甲子園も中止となった。しかしそのわずか5日後に、全国で緊急事態宣言が解除となり、日本は“新しい生活”を模索していくこととなった。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、現在一般社団法人さいたまスポーツコミッション会長、男子バスケットボールB3リーグ・埼玉ブロンコスのオーナーを務める池田純氏は、「これから日本が『コロナの時代』で様々なものごとにおいて”チャレンジして”、”開いていく”フェーズに入る。夏の甲子園開催もチャレンジして、どうにかして乗り越えようとする姿勢を含めて、高校球児に“挑戦して困難に打ち勝っていく”という教育の率先垂範となることを目指してもよかったのではないか」と語る。
(C)共同通信