日本陸上競技連盟は6月25日、「2020全国高等学校リモート陸上競技選手権大会」の開催を発表した。新型コロナウイルスの影響で中止となったインターハイの意義を継承する大会としている。

全国各地で7月1日~9月6日の期間に行われた各都道府県の陸上協会などが事前に指定した大会での結果を得点化して、全国ランキングをつけるもの。対象となる種目はインターハイで実施予定だった個人種目で男子19、女子18種目。タイムや順位、風などの条件を加味するワールドアスレティックス(世界陸連)が世界ランキングに採用をするやり方で計算し、全国のポイントランキングをつける。これでオンラインゲームの対戦のように、離れた場所の相手と競う。新しい競技会の形だ。

また、この「2020全国高等学校リモート陸上競技選手権大会」のように日本陸上競技連盟が主催する大会以外にも、同じような形のプロジェクトは存在する。代表的なのが、男子800メートル前日本記録保持者で、12年ロンドン・オリンピック代表の横田真人さん(32)が代表発起人として企画した、「Virtual Distance Challenge(バーチャル ディスタンス チャレンジ)」だ。

通称「バーチャレ」で、中高生が対象。選手は7月20日以降に撮影したレース動画とタイムを、8月14~23日の期間内に専用サイトにアップロードする。それをもとに、運営側は全国や都道府県別のランキングを作成する。距離が正確ということが証明できれば、場所は陸上競技場でなくとも、学校の校庭でもいいのだという。

コロナ禍によって、目標の大会が消えた中高生のために立ち上がった横田さんは「『僕らにできることはなにか』。3カ月間、僕らはこの問いと向き合ってきました。至った1つ結論は、全中、インターハイは、大会自体を指すのではなく、日々の部活動を指すということでした。全国ナンバーワンを目指す、大会を目指す過程を楽しむ、夏の思い出づくり、なんでも構いません。それぞれが取り組んできた”陸上競技”をここに詰めて、記憶に残して欲しいと願っています」とコメントしている。対象種目は100メートル、800メートル、1500メートル、3000メートル、4×200メートルリレー、4×400メートルリレー、4×1600メートルリレー、走り高跳びを予定。今後、種目は増える可能性もあるとしている。運営資金はクラウドファンディングで募集しており、現在は500万円以上の支援が集まった。

もっと草の根の大会もある。競歩では山形市が拠点の競歩の練習団体「山形競歩」は6月18~21日、各自でタイムを測って競う「オンラインタイムトライアル」を企画した。男女別に一般、大学、高校のカテゴリーに分かれ、距離は高校総体と同じ5キロ。期間中に好きな場所で、GPS付きの腕時計などでタイムを計測。記録を撮影した画像をメールやツイッターで山形競歩に送信する。歩型違反などをチェックする審判などはいないが、全国から120人以上がエントリーした。

リモート大会は国内だけではなく、海外でも存在しているようだ。
6月11日。ノルウェー・オスロでのダイヤモンドリーグ(DL)は、感染予防を最優先したエキシビション形式で行われた。男子棒高跳びにはロンドン・オリンピックの覇者であるルノー・ラビレニ(フランス)が自宅の庭から〝参戦〟するなど、一部の選手は遠隔地にいながら、記録を競い合った。

また7月9日にスイス・チューリヒで行われたDLエキシビション大会でも欧米各地を中継で結ぶ〝リモート対決〟が実現した。ここではハプニングも発生。男子200メートルで、アメリカ・フロリダ州から参戦した昨秋の世界陸上(ドーハ)金メダリストのノア・ライルズ(米国)は3・7メートルという超向かい風の中で、タイムはウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)が持つ世界記録より約0秒3も速い18秒90。ところが、レーンを間違えており、実際に走ったのは200メートルではなく、約15メートル足りない185メートルほどだったことが判明。前代未聞のまさかの事態にライルズは、頭を抱えるしかなかった。

リモート大会は素晴らしいが、やはり勝負の醍醐味は、目の前の相手と勝負することである。それは何事にも変えられない事であろう。早く新型コロナウイルスが収束に向かい、人と人とが離れる必要がない日常に戻ることを願うばかりである。


星野泉