「大変な時期だからこそ届けられる“スポーツの価値”」

―前編でも、「コロナ禍でスポーツなんて」という声に納得できると仰っていましたが、その中でもアスリートの価値っていうものは、どのような部分にあると感じられましたか?

奥原:スポーツ界に限らず、例えば音楽業界でも活躍の場が減っている中で、無観客のライブ配信などを積極的にされていて。実際それを自分も体験して、音楽が届ける素晴らしさは、何にも変えられないものがあると思ったんですよね。スポーツでも同じことができると思っていて。試合だけでなく、そこへの取り組み方が、人々の心に何か届けることができると思いますし、大変な時期だからこそ届けられる、スポーツの価値があると思っています。

―コロナ禍で奥原選手自身、様々な取組をされたと思うのですが、その中で成長を感じられた部分はありますか?

奥原:今までスポーツを内から見てきて、スポーツが世の中からどんなふうに見られているのかが、わかっていなかったんですよね。だからこそ、スポーツがまだまだ盛り上がりに欠けるっていうのは、気付いてこなかったんですけど、オリンピック延期に対するいろんな意見を見て。そこで、プラスよりマイナスの意見の方が多いと感じたんですね。その現実を受け止めつつ、変えられるところを変えていけばいいじゃないかなと思いました。コロナ禍で考える時間も多かったので、そういういろんな視点から物事を考えるきっかけになりましたね。

―いわゆる「普通」の選手とは違う角度で物事を捉えてらっしゃいますよね。

奥原:あんまりそういう意識はないですけど、先輩と今までシャトルを交えて感じたものは大きかったですね。そこから色々と学ぶことができました。現役選手がジュニアの選手とラリーをしたりすることは、ジュニアの選手にとって言葉以上に、何か感じてもらえたり、いい経験になると思います。それは自分の経験も根拠としてあるので、一番は次世代の子たちを大事にしたいと思ってきました。

―引退した選手からではなく、現役の選手からの方がより良い経験になる、ということですかね?

奥原:バドミントンのプレースタイルも、時代の変化に伴って変わっていくので、引退した選手よりも、現役の選手が直接関わるのは本当に大事だと思っています。現役選手にとって時間は大切で、オフの過ごし方も大事になってくるとは思うんですけど、未来の日本を背負っていく子供達への投資も考えていかないと、バドミントン界の盛り上がりも一時的なものになってしまうと思います。自分たちの世代だけでなく、次の世代ももっと盛り上がってほしいなと思っています。

「ライバル同士のかけがえのない時間が奪われている」

―コロナ禍でファンの方からSNSなどで寄せられた声などで、印象に残っているものはありますか?

奥原:インターハイや、全中が中止になった時に、インスタグラムのストーリーにたくさんのコメントをいただいて。バドミントンだけでなくて、他の部活の子供達からも、「今厳しい状況ですけど、ブログを読んで、少しでも前を見ようっていう気持ちになりました」みたいなコメントをたくさんもらいました。活躍する舞台がなくなってしまったことで、苦しんでいる子はたくさんいるんだなっていうのは感じました。

―ご自身の経験から、活躍する舞台がなくなってしまう、という事態に対して、どのような課題を感じられていますか?

奥原:小学校の時は全然タイトルをとることができなくて。中学校に上がって初めてタイトルに取れたんですけど、負けた試合も勝った試合も、課題が見つかったり、自信を得られたり。それから実戦形式でしか味わえない緊張感であったり、ライバルとのエピソードとかは一生宝物になると思います。今でもそういう話は盛り上がるので、ライバル同士のかけがえのない時間が奪われている現状を何とかしたいと思っています。

写真=ベースボール・マガジン社

子どもたちにも活躍の場を作っていきたい

―そんな中で、今回スポーツギフティングサービスという、ファンから投げ銭のような形で支援金を募るものに参加されるとお伺いしたのですが、参加したきっかけを教えて下さい。

奥原:コロナの影響でそういう活動をやる選手が増えだして。そういったこともあり、気になっている中で今回のお話を聞きました。Unlimさんは、何かこちらがサービスを提供して、それに対する対価をいただく形ではなくて、それぞれの選手に対しての想いだけでギフティングしてもらえるっていうことで、そこに心を惹かれました。純粋に応援したいっていう気持ちがそこに表されているので、いいサービスだなと思っています。

―集まったギフティングはどのように活用されるんでしょうか?

奥原:今はコロナの影響でいろんな人たちが苦しんでいるとは思うんですけど。その中でも私は次世代の子供達の活躍の場がなくなっている現状を解決したいなと思っています。私自身、さっきも言ったように様々な経験があって今があるので、その代わりとなるイベントだったり、活動ができたらいいなと思いますし、世の中に還元できるようなことに使わせていただければいいなと思っています。

―具体的にそのイベントなどの内容などはイメージされていますか?

奥原:自分の本業のスケジュールが確保できない中で、どう動いたらいいのかっていうのは、正直わかっていないので、具体的な話はまだできていないですね。東京オリンピックもありますし、確実に何かできるようになるのは、もしかしたら来年とかになるかもしれないんですけど。元々、地元で毎年一回は講習会を開いていて、子供たちと接する機会は東京オリンピックが終わったら、より積極的にやっていけたらいいなと思っています。

―このギフティングサービスに参加することによって、ファンから得られる刺激というものをどのように捉えられていますか?

奥原:これほどファンの方からの想いが目に見えて分かるサービスは今までなかったし、新たな形で受けるファンの方からの思いを背負って挑戦していこうと思っています。

―ファンの方の応援の力を感じられたエピソードなどあれば、教えて下さい。

奥原:怪我をしていた時は特に感じられました。もちろんそばでサポートしてくださった方もありがたかったんですけど、自分からは遠い存在の方からもあたたかい言葉をいただいて。自分の想像できないくらい、多くの人に支えてもらっていることを実感しました。その時、自分の目標は自分のものだけではないと、覚悟を持つようになりました。

奥原選手に応援メッセージを贈ろう!

奥原選手に応援メッセージを贈ろう!
奥原選手への想いをメッセージにして、お金と共に届けることができます。届けられたお金は、記事中で言及されていた奥原選手のバドミントン振興活動などで活用されます。

写真=ベースボール・マガジン社

VictorySportsNews編集部