FA補強は昨秋のドラフトで掲げた「発掘と育成元年」に逆行するようようだが、打倒ソフトバンクへ選手が育つのを待っていられないのも事実。梶谷&井納の2人が“足りないところ”を埋める活躍を見せ、9年ぶりの日本一が叶うことを願うばかりである。
ただ、そもそも高卒1年目から故障もなくバリバリやらない限り、30代になってからになる日本でのFA制度。今回の梶谷が32歳、井納は34歳での加入で、基本的にキャリアの後半、よくてピークでの移籍になるため、加入から長く活躍することは難しい。若手育成への影響や人的補償も含めて弊害も多く、個人的には好きではないが、今回のようなケースでは短期的にチームの出力アップになればいい制度だと考えたい。
そう捉えてこれまでに獲得した26人(12球団最多)のFA選手が、日本一達成のために有効だったのかを、再確認も含めて振り返ってみようと思う。
~ジャイアンツに加入したFA選手~
◆落合博満内野手(中日からFA)
・加入初年度(1994年)成績(当時40歳):129試合、打率.280、15本塁打、68打点
→チームは日本一
・巨人通算成績(在籍3年):352試合、打率.296、53本塁打、219打点
◆広澤克実内野手(ヤクルトからFA)
・加入初年度(1995年)成績(当時33歳):131試合、打率.240、20本塁打、72打点
→チームはリーグ3位
・巨人通算成績(在籍5年):384試合、打率.259、56本塁打、178打点
◆川口和久投手(広島からFA)
・加入初年度(1995年)成績(当時36歳):17試合、4勝/6敗、防御率4.42
・巨人通算成績(在籍4年):85試合、8勝/13敗、4セーブ、防御率4.32
◆河野博文投手(日本ハムからFA)
・加入初年度(1996年)成績(当時34歳):39試合、6勝/1敗、3セーブ、防御率3.29
→チームはリーグ優勝
・巨人通算成績(在籍4年):108試合、10勝/4敗、5セーブ、防御率3.76
◆清原和博内野手(西武からFA)
・加入初年度(1997年)成績(当時30歳):130試合、打率.249、32本塁打、95打点
→チームはリーグ4位
・巨人通算成績(在籍9年):846試合、打率.266、185本塁打、576打点
◆江藤智内野手(広島からFA)
・加入初年度(2000年)成績(当時30歳):127試合、打率.256、32本塁打、91打点
→チームは日本一
・巨人通算成績(在籍6年):627試合、打率.256、101本塁打、296打点
◆工藤公康投手(ダイエーからFA)
・加入初年度(2000年)成績(当時37歳):21試合、12勝/5敗、防御率3.11
・巨人通算成績(在籍7年):128試合、53勝/40敗、防御率4.05
◆前田幸長投手(中日からFA)
・加入初年度(2002年)成績(当時32歳):53試合、4勝/4敗、1セーブ、防御率2.74
→チームは日本一
・巨人通算成績(在籍6年):240試合、11勝/8敗、4セーブ、12ホールド、防御率3.80
◆野口茂樹投手(中日からFA)
・加入初年度(2006年)成績(当時32歳):1試合、0勝/0敗、防御率9.00
→チームはリーグ4位
・巨人通算成績(在籍2年):32試合、1勝/1敗、4ホールド、防御率4.74
◆豊田清投手(西武からFA)
・加入初年度(2006年)成績(当時35歳):38試合、1勝/4敗、13セーブ、7ホールド、防御率3.32
・巨人通算成績(在籍5年):197試合、9勝/14敗、22セーブ、71ホールド、防御率3.12
◆小笠原道大内野手(日本ハムからFA)
・加入初年度(2007年)成績(当時33歳):142試合、打率.313、31本塁打、88打点
→チームはリーグ優勝
・巨人通算成績(在籍7年):701試合、打率.296、138本塁打、413打点
◆門倉健投手(横浜からFA)
・加入初年度(2007年)成績(当時34歳):12試合、1勝/5敗、防御率5.97
・巨人通算成績(在籍2年):23試合、1勝/7敗、2ホールド、防御率5.28
◆藤井秀悟投手(日本ハムからFA)
・加入初年度(2010年)成績(当時33歳):23試合、7勝/3敗、防御率3.76
→チームはリーグ3位
・巨人通算成績(在籍2年):24試合、7勝/3敗、防御率3.83
◆村田修一内野手(横浜からFA)
・加入初年度(2012年)成績(当時31歳):144試合、打率.252、12本塁打、58打点
→チームは日本一
・巨人通算成績(在籍6年):795試合、打率.274、109本塁打、391打点
◆杉内俊哉投手(ソフトバンクからFA)
・加入初年度(2012年)成績(当時31歳):24試合、12勝/4敗、防御率2.04
・巨人通算成績(在籍7年):91試合、39勝/22敗、防御率3.03
◆大竹寛投手(広島からFA)
・加入初年度(2014年)成績(当時31歳):22試合、9勝/6敗、防御率3.98
→チームはリーグ優勝
※在籍中
◆片岡治大内野手(西武からFA)
・加入初年度(2014年)成績(当時31歳):126試合、打率.252、6本塁打、32打点、24盗塁
・巨人通算成績(在籍4年):271試合、打率.246、18本塁打、72打点、49盗塁
◆相川亮二捕手(ヤクルトからFA)
・加入初年度(2015年)成績(当時39歳):40試合、打率.313、4本塁打、17打点
→チームはリーグ2位
・巨人通算成績(在籍3年):106試合、打率.264、4本塁打、24打点
◆金城龍彦外野手(DeNAからFA)
・加入初年度(2015年)成績(当時39歳):36試合、打率.233、1本塁打、10打点
・巨人通算成績(在籍1年):36試合、打率.233、1本塁打、10打点
◆脇谷亮太内野手(西武からFA)
・加入初年度(2016年)成績(当時34歳):54試合、打率.157、1本塁打、7打点
→チームはリーグ2位
・巨人通算成績(在籍3年):106試合、打率.192、1本塁打、7打点 ※FA加入後のみ
◆山口俊投手(DeNAからFA)
・加入初年度(2017年)成績(当時30歳):4試合、1勝/1敗、防御率6.43
→チームはリーグ4位
・巨人通算成績(在籍3年):60試合、25勝/14敗、1セーブ、1ホールド、防御率3.47
◆森福允彦投手(ソフトバンクからFA)
・加入初年度(2017年)成績(当時31歳):30試合、1勝/3敗、6ホールド、防御率3.05
・巨人通算成績(在籍3年):39試合、1勝/3敗、9ホールド、防御率4.33
◆陽岱鋼外野手(日本ハムからFA)
・加入初年度(2017年)成績(当時30歳):87試合、打率.264、9本塁打、33打点、4盗塁
※在籍中
◆野上亮磨投手(西武からFA)
・加入初年度(2018年)成績(当時31歳):25試合、4勝/4敗、1ホールド、防御率4.79
→チームはリーグ3位
※在籍中
◆炭谷銀仁朗捕手(西武からFA)
・加入初年度(2019年)成績(当時32歳):58試合、打率.262、6本塁打、26打点
→チームはリーグ優勝
※在籍中
◆丸佳浩外野手(広島からFA)
・加入初年度(2019年)成績(当時30歳):143試合、打率.292、27本塁打、89打点、12盗塁
※在籍中
こうして振り返ってみると、小笠原を筆頭にチームの力になってくれた選手は数多くいる。もちろん成功とは言い難い選手もいるが、小笠原のほか、落合や工藤、前田、杉内らは加入初年度に活躍してチームを日本一に導いてくれた。
データを整理すると、ジャイアンツがFA補強を行った全16シーズンの結果は、リーグ優勝が8回、うち日本一4回という結果。FA制度が導入された1994年シーズン以降のチーム成績は、27年間でリーグ優勝が12回、日本一5回なので、データからFAでの戦力補強は即効性があることがよく分かる。
同リーグからの移籍になる梶谷&井納はある程度活躍のメドが立つし、データが後押しするようにリーグ3連覇、そして悲願の日本一へ力となってくれるはずだ。
ただ、2人がソフトバンクと対戦した2017年の日本シリーズでは、梶谷がホームランを1本打ったものの打率.217、井納は3試合に登板して防御率9.53と、どちらも……だったけれど。
※敬称略。データは2/22現在
梶谷&井納が日本一に導く?ジャイアンツのFA補強を考察
「ジャイアンツに足りないところに力を必要とした」(原監督)として、梶谷隆幸外野手&井納翔一投手をフリーエージェント(FA)で補強したジャイアンツ。梶谷は近年定まらない1番バッターとして、井納は先発ローテの一員として、新たな力になると期待したい。
巨人への入団記者会見でグータッチを交わす(左から)井納翔一投手、原監督、梶谷隆幸外野手 (C)共同通信