「自分が歩んできた道を細かく掘り下げていけたら」連載を通して伝えたいこと

―連載企画でどんなことを伝えたいですか。
石井:僕は順風満帆にステップアップしていったわけではなく、プロになれる人が1割で、なれない人が9割だとしたら、ほぼ9割の方だった人間です。身長もバスケ選手の中では高くないですし、足が速いわけでも、ジャンプが高いわけでもありません。
僕がリーグで結果を残すことで、「石井選手ができるなら自分でもできるかも」と思ってもらえるような存在になれたらと思っているので、自分が歩んできた道を細かく掘り下げていけたらと思います。

―特に影響を受けた言葉や本はありますか。
石井:その都度、影響を受けていることが多いです。小学校から中学校に上がる時も、レベルの壁がありましたし、中学校から高校も壁がありました。卒業文集に「プロバスケ選手になりたい」と書くような、明確に夢を描いていた少年ではなく、「バスケがうまくなりたい」という気持ちのもと、目の前の課題に向き合って1日1日を過ごしていたら、到達したタイプなので、その都度辛いこともありましたが、過ぎてしまうと辛いこともなかったのかなと感じるほど、恵まれていたと思いますね。小中高大と指導してくれた全ての方が、僕に影響を与えてくれて、指導者にも周りにも恵まれていました。大事にしてきたことは、「継続して積み重ねる」ということですね。

「なんで勝てないのだろう」挫折経験について

―人生の中で、一番悔しかったことはありますか。
石井:小学4年生でバスケを始めたのですが、当時の6年生が強くて、全国大会に行くようなチームでした。そして、5年生の時に隣の学校に転校したのですが、6年生が1人しかいなくて、試合に出ることができていたのですが、ボロボロに負け続け、落差に戸惑いましたね。4年生の時は勝っている試合を見ていたのに、5年生で自分が試合に出るとまったく勝てない状況に、「なんで勝てないのだろう」と感じていました。

―中学高校もありますか。
石井:中学も、入ってからなかなか勝てずに予選敗退を繰り返しました。3年生になった時にも転校したのですが、その時にやっと試合に絡んで市の大会で優勝しました。小中は似ていて、最初はまったく勝てずに、最終学年で結果が出たような感じでしたね。
高校は全国大会にずっと出ている学校に進学したので、レベルも高くて、練習もきつくて、それについていくので精一杯でした。でも、だんだん筋肉や体力がついてきて、3年生のインターハイで試合に出られて得点王になるなど、最終学年で結果を出すことができました。
大学に行った時には、当時日本一の大学で、4年生の先輩が日本代表に入っているような人達だったので、入った瞬間のレベルの違いの衝撃がありました。大学は結果を出さないとダメな世界なので、Bチームに落ちてしまって、そこがわかりやすい挫折経験でしたね。本当に通用しないと感じていましたね。

「どんな立場にいる人でもチャンスがある」伝えたいこと

―アスリートが発信していくメリットはどこにあると思いますか。
石井:競技で結果を出すというのは大前提ですが、「試合の時に、どういう考えを持っているか」や、「困難に直面した時にどう乗り越えるか」などの問題は、アスリートだけではなく、全ての人に共通する部分が多いと思います。
それをアスリートが発信すると、アスリート自身の価値を高めるきっかけにもなります。また、競技を見てもらうだけではなく、自分の背景や内面を知ってもらうことで、より応援してもらえる理由を見つけてもらえるなど、ファンになってくれる人が増えるのではないかと思います。SNS上でもファンの方とのやり取りの機会があることで、応援してもらっていることへの恩返しにもなると思いますし、ギブアンドテイクのようなことに繋がっていくのではないかと思いますね。

―今後の競技面での目標を教えてください。
石井:チームとしては、「Bリーグでの優勝」を目標としています。2回決勝まで行きましたが、2回とも負けてしまったので、もう1回ファイナルの舞台に立って、次こそは優勝したいという気持ちがあります。個人としては、チームを勝利に導くようなシュートやプレーをたくさんして、勝利に貢献していきたいですし、33歳という年齢ですが、日本代表に選ばれることを目標に頑張ります。

―ファンからどういう選手に見られたいですか。
石井:おちゃらけたタイプではありませんが、遠すぎる距離感でもないくらいですかね。街中で声をかけていただくのは、とても嬉しいですね。

―競技以外の面での目標はありますか。
石井:競技を通して、僕の今までのキャリアの中で、「どんな立場にいる人でもチャンスがある」ということを伝えたいというのが、僕のミッションなので、それを競技以外の部分でも伝えていきたいと思っています。

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VictorySportsNews編集部