体力的・精神的な苦しみから2年間の休養へ

ーリオまでの準備期間が苦しかったと伺いしましたが、具体的にどのような苦しみがありましたか?

2012年のロンドンが終わって、2016年のリオまでの4年間は、年齢的な難しさがありました。当時の水泳界は大学でキャリアを終える人も多くて、25歳前後ではほとんどの選手が引退していました。

リオの時の私は26歳。しかも、練習環境は大学生と一緒なので、だんだん同じ練習についていけなくなったり、疲れが取れにくかったり。とにかく体力的にきつくなる4年間でしたし、しんどかったですね。

ー大学生と別のメニューを行うことはできなかったのでしょうか?

母校である日本体育大学で練習をしていたのですが、社会人だから別メニューということはなかったです。常に70人くらいの大学生と同じメニューをこなしていました。

ーその中で精神的な苦しみもあったのではないでしょうか?

大学生の時は、コーチやチームメイトとぶつかることはたまにあったものの、基本的には仲良くやっていました。ただ、社会人になってからはコーチとぶつかることが多くて。「練習がうまくいかないから(練習量を)落としてほしい」と要望しても、コーチは私のことを昔から見ているので、甘えるなと。意見が通らなくて悩むことはありました。

ーリオの後に競技からしばらく距離を置きました。まず最初に何をしましたか?

1カ月間は何もしなかったですし、ひたすら寝ていました(笑)。練習が忙しくて、なかなか外に出ることがなかったですが、外に出るよりもめざましを掛けずにゆっくり寝たかったんです。

ー水泳以外の道を探すこともしたのでしょうか。

リオで辞めるつもりでいたので、これからどうしようかと考えていました。当時はミキハウスに所属していて、大阪にある本社で働くという選択肢もあったものの、東京を離れる不安もなんとなく感じていました。

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曖昧だった夢が、口に出し続けることで“本気”に

ー競技に復帰したいと思い始めたきっかけを教えてください。

自分が出ていないアジア大会や世界水泳を見ていて、「楽しそうだな」「あそこに自分がいたらな」と心の中で思い始めたんです。みんなの結果を見ていて、「私だったらこのタイムでいけたのに...」と自信が湧くこともありました。でも、やっぱりきつい思いはしたくない。今日はやりたくても、明日はやりたくない。気持ちにすごく波がありましたね。

ー近くの方にサポートを求めることはあったのでしょうか?

全くなかったですね。誰にも言わずに自分ですべて決めました。昔からそういうタイプで、良い意味で人の意見を聞かないというか。自分の思ったことが正解だという信念があったので。

誰かに言ってしまったら、実行しないといけない気がするじゃないですか。「やっぱりやめたい」と弱音を吐けなくなってしまう。逃げ道を作るために黙っていたのかもしれないですね(笑)。

ー復帰する覚悟がしっかりと固まったタイミングは?

2018年に入ってからですね。2017年の時は、やりたいけどやりたくないという感じでしたが、2018年になってからは泳ぎたいという気持ちが何日も続いたんです。

休んでいた2年間に、いろいろな小学校や中学校で、「夢を持つことの大切さ」をテーマに公演をしていたことは大きかったです。その公演の最後に、自分の夢を子どもたちに話すのですが、私は「東京五輪に出ること」が夢だと語っていました。

最初は「実際は分からないんだよな...」という気持ちでした。でも、何校も周って公演しているうちに、「これだけ言い続けているなら、本当にやらないといけない」と。そう思ってからは、子どもたちに対して「私が夢を叶えたら、次はみんなの番」と言えるようになりました。

ー現役復帰を発表した時の周囲の反応はいかがでしたか?

かなり驚かれました。東京五輪の時は30歳(延期が決まる前は)ですし、そこまで続けている女子の選手はなかなかいないですから。8割くらいの方は驚いていて、残りの2割くらいは『言うと思った』と。中には『無理でしょ』という方もいましたけどね。

ー以前の課題だった練習環境は、現在は整えられているのでしょうか。

今はやりたいように練習ができていますし、コンディションに合わせて練習量も調整しています。池江璃花子選手を育てた村上二美也コーチの指導を受けていますが、お願いする時は「璃花子の泳ぎを教えてほしい」と言いました。

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ファンからの支援が、水泳界の底上げに繋がる

ー今は純粋に練習を楽しめているのでしょうか。

練習はきついですけど、頑張れば頑張るほど成果が出るのが楽しくて。2年間も休んでいたので、最初は帰り道で吐きそうになるくらい辛かったですけどね。練習で良いタイムも出せるようになって、今はすごく自分の変化を楽しんでいます。

一競技生活を続けていく中で、ギフティング(ファンからアスリートにお金という形で応援する行為)を募るというお話をうかがいました。

水泳は個人競技なので、チームスポーツのようなサポートはありません。コーチやトレーナー、栄養士など、様々な方にお金を払ってサポートしていただく必要があるので、遠征や合宿ごとの人件費が大きくなります。金銭面で苦しんでいる選手も多いのではないでしょうか。

一その中でファンからギフティングしていただくことには、大きな意義がありそうですね。

選手はものすごく助かると思います。私はまだ恵まれているほうですが、金銭面で競技を辞めざるをえない選手は多いですし、所属先が見つからなくて引退する選手もいます。スポーツギフティングサービスを活用できれば、遠征に行けたり、良いトレーニングができる選手が多くなると思います。水泳界の底上げにも繋がるはずです。

一ファンの方の応援が力になったと感じた瞬間はありますか?

今はSNSが普及して、ファンの方との距離が近くなっているので、結果に対してたくさんの声が届きます。その言葉の一つ一つが嬉しいので、SNSは積極的に活用しています。

一そういったファンの方々が、スポーツギフティングサービスを通じて、より直接的な支援ができるようになりますね。

ファンの方から「頑張れ!としか声を掛けることができないけど...」と仰っていただくことは多かったです。そういった方がより直接的な支援をできるようになりますし、私は結果で恩返しをして、お互いがWin-Winになれればすごく嬉しいと思います。

一最後に今後の目標を教えてください。

東京五輪の出場権をまずは獲得することです。そして、東京五輪で自分史上最高の結果を出して、笑顔で大会を終えたいと思っています。

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VictorySportsNews編集部

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