注目の発言が飛び出す約15分間の“雑談”となった。池田氏がベイスターズの球団社長を務めていた当時、YouTubeの「ホリエモンチャンネル」やNewsPicksの企画で対談するなど、これまでも交流のあった2人だが、新たにスタートした音声配信サービスの舞台で今回、久々の共演が実現した。
池田氏といえば、最近話題になったのがTwitterに前触れなく投稿した「横浜未来都市経営研究所を設立します」との宣言。「スポーツやエンターテインメントの価値が政治のど真ん中で理解されていない」ことに疑問を抱き、そうした“資産”を活用した都市経営の道筋を模索しようと、有志と意見交換する場として立ち上げた組織なのだという。
ベイスターズの初代社長として、球団や横浜スタジアムを生まれ変わらせ、横浜の街を元気にした池田氏。現在は、さいたまブロンコスのオーナー兼取締役として親会社文化の下ではない、また新たな形での地域活性化・地方創生に取り組んでおり、1年目にして数億円に及んだ債務を解消して黒字化の見通しをつけるなど、早くも成果を上げ始めているところだ。そんな中、さいたまとの相乗効果も見据えながら、生まれ育った地である横浜への“恩返し”にもなるのが、スポーツ・エンタメによる都市経営の「ロールモデル」構築。政財界から、その手腕や発信力に期待する声が多く届いていることも、今回突然なされた宣言の背景にあるようだ。
そして、迎えた堀江氏との対談。池田氏は、中盤で思わぬ“相談”を堀江氏に投げ掛けた。
「堀江さん、『東京改造計画』という本を出していますよね。今、ちょうど横浜の都市経営に関する本を書いているのですが、それを『横浜改造計画』っていう名前にさせてもらってもいいですか」
これに、堀江氏は「いいよ、もちろん。むしろ、似たパッケージにしてほしい。『みんなの改造計画シリーズ』をやってほしい」と快諾した。
『東京改造計画』(幻冬舎)は、昨年7月5日に投開票が行われた東京都知事選の直前、同5月30日に出版された堀江氏の著書。都知事選出馬に向けた政策本ではないかとの憶測も呼び、大きな話題となった。最終的に、堀江氏本人が都知事選に出馬することこそなかったものの、37項からなる東京都への緊急提言などが記された同著は、コロナ下における都市経営の在り方に一石を投じる内容となっている。
一方、ちょうど横浜でも税収アップの策としてIR(統合型リゾート)計画、いわゆるカジノ招致が取りざたされるなど、地域活性化の道筋が注目を集めている。「子供に説明できないことはやるべきではない」という基本スタンスを持つ池田氏は、依存症などの問題が起こり得るカジノではなく、スポーツビジネスのノウハウを使うことで、多くの市民、家族がワクワクできる街づくりができると考えており、それを示す一つの手段として「『東京改造計画』の“横浜版”みたいなイメージ」と表現する新著を準備しているというわけだ。
スポーツやエンタメの価値を活用した地域活性化
思わぬ展開を見せた対談だが、当然話題は堀江氏が設立した新球団「福岡北九州フェニックス」にも及んだ。北九州が参入を目指す九州アジアリーグは現在、熊本(火の国サラマンダーズ)と大分(大分B-リングス)の2球団からなり、来季から4球団への拡張を目指している。さらに、堀江氏によると、将来的には台湾や韓国なども巻き込んだ国際的なリーグ運営も構想しているとか。北九州が自身の主宰するオンラインサロン「HIU」(堀江貴文イノベーション大学校)のメンバーの一人が社長に就く“オンラインサロン発の球団”という異色の形であることも、注目を集めている。
プロ野球の球団社長、Jリーグや日本ラグビー協会の特任理事、明治大学の学長特任補佐にスポーツ庁参与、そしてB3クラブのオーナー兼取締役と、さまざまな立場を経験してきた池田氏は、経営者として、野球の独立リーグが、どの程度の規模で運営されているのか気になる様子で「1年間、いくらくらいで回すんですか」と直球質問。「1億円くらい」という堀江氏に「じゃあ、私のバスケと同じくらいですね」と応じた。堀江氏は自身がエンジェル投資家として出資しているプロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズと新球団の連携も示唆しており、同じ埼玉県のスポーツチームとして、さいたまブロンコスとの“化学反応”にも期待が膨らむ。
また、池田氏は、北九州市を本拠とする新球団と福岡をはじめ九州で絶大な存在感を示すプロ野球・ソフトバンクの関係性が気になる様子で、以前視察したことがある福岡県筑後市にあるソフトバンクの2軍施設(タマホームスタジアム筑後)について「本拠地球場として、あそこを使うのも良いのでは」と提案。堀江氏が自身の実家が同施設から至近であることを明かすと、池田氏は「良いじゃないですか。地元の名士感いっぱいで」とプッシュする一幕もあった。
すると、話は思わぬ方向に展開。「すごくいいですよ、あの施設」という池田氏に、堀江氏は「知ってる、知ってる。もしかしたらソフトバンクをうまく巻き込むと面白いかもしれない」と呼応し、「王さん(ソフトバンク・王貞治球団会長)もNPBの16球団構想を言っているじゃないですか。実は、その辺もつながるんじゃないかな」と注目発言も。
さらに「独立リーグが野球の裾野を広げているのは事実。今、たまたま調子が悪い選手の受け皿になったり、そういう選手が、またNPBに戻ったりしている」と球界の底上げにつながる取り組みであることを強調。「球場の指定管理が取れれば、遊び施設はつくりますよ。ライト層が遊びに来られる場所にしたい」と、埼玉武蔵ヒートベアーズの親会社である温泉道場のノウハウを活用した温浴施設の設置や合同トライアウト実施の計画など、スポーツやエンタメの価値を活用した地域活性化という、池田氏が思い描く理想像につながっていきそうな構想も明かした。
池田氏は、2011年12月に初代球団社長に就任したベイスターズで横浜スタジアムの友好的TOB(株式公開買い付けによる子会社化)を実現。5年間で観客動員を年間110万人から約200万人まで増やし、損益を約25億円の赤字から黒字に転換させるなど、経営改革を成し遂げた。その土台となったのが、欧米のスタジアム運営などから着想を得た『コミュニティボールパーク化構想』。横浜スタジアムや野球をきっかけに、球場を超え、街の人が集まる、まさにスポーツやエンターテインメントを活用した地域活性化、地方創生の一つのロールモデルが、そこに具現化されている。
そうした実績を知る堀江氏は、最後に「いろいろ手を貸してください、野球界の先輩として」と求め、池田氏も「行きます!」と即答した。キャラクターや世の中へのアプローチの仕方は大きく異なる2人だが、軋轢や毀誉褒貶に惑わされず、さまざまな“壁”を超えていこうとする姿勢には共通するものがある。約15分あまりの対談に、そんな2人の個性が垣間見えた。