池田氏といえば、横浜市長選(8月8日告示、同22日投開票)の渦中にいる人物だ。6月23日付サンケイスポーツが出馬の可能性を報じ、ダイヤモンド・オンラインや文春オンラインなどでは、自身のコラムで立憲民主党から推薦の打診があって断ったことや、その過程で横浜市政や市長選の問題点を改めて認識するに至った現状をリアルにつづっている。

 そんな中での今回のラッピングバス。当然、市長選との関連が取り沙汰されるところだが、関係者によると、あくまで著書のPRが目的で、市長選出馬を想定したものでは一切ないという。同著では市長選の在り方や、選挙の主要な争点になるとみられるカジノを含むIR(統合型リゾート)への疑問にも言及しているが、出版自体も出馬を前提にしたものではなく、自身が市長選を巡る動きに巻き込まれた中で感じた「選挙への関心の薄さ」「若者不在の議論」といった現状を世の中に問うことがメインの目的なのだと、周辺は経緯を説明している。

 ただ、周囲は“渦中”の人物の動きに、敏感に反応した。ネット、SNSでは「新しい」「やりすぎ」「出馬するなら大変な覚悟だ」「一若者横浜市民としてはこの人が市長になってくれると新しい風が吹くのではと思う」など賛否さまざまな意見が上がり、実業家の堀江貴文氏はFacebookで「きた!ラッピングバスは良きアイディア」とコメント。また、池田氏が球団社長を2016年に退任しているにも関わらず、横浜DeNAベイスターズはメディアを通じてこの件に関知していないことを発表するなど、思わぬ余波もあった。いずれにしても、横浜の未来を大きく左右する選挙への関心の薄さを危惧する池田氏の思惑通り、一政令指定都市の選挙が、にわかに注目され熱気を帯びてきたのは事実と言える。

 池田氏の出馬が、なぜそれだけ注目を集めるのか。それは、やはりベイスターズで実現した改革、横浜の街にもたらした熱気がファンや市民の心に今も刻まれているからだろう。横浜スタジアムの友好的TOB(株式公開買い付け)を実現し、年間24億円あった赤字を解消して黒字化。年間の観客動員を約1.7倍の200万人近くにまで増やし、「ボールパーク化構想」のもとでハマスタ周辺をすっかり明るい雰囲気に包んだ。東京五輪では野球・ソフトボールの主会場として使用され、まさに日本を代表する「ボールパーク」の一つとして世界に発信されるところまで来ている。

 もちろん、スポーツビジネスの世界で成功を収めてきた経営者が政令指定都市の首長に就くのは極めて異例で、しがらみや忖度がはびこる政治の世界でどれだけの改革を成し遂げられるかは未知数だ。ただ、カジノの建設を税収増の“切り札”とせざるを得ない現状からの脱却へ、経営者目線のアイデアに期待を寄せる声が少なからずあるのは、今回の動きへの世間の反応を見ても確かなようだ。

 横浜市長選は、自民党衆院議員の小此木八郎氏(56)がIR誘致の「取りやめ」を掲げ、出馬を表明。他にいずれも無所属で、市議の太田正孝氏(75)、動物愛護団体代表理事の藤村晃子氏(48)、元衆院議員の福田峰之氏(57)が立候補を表明しており、新たに横浜市立大教授の山中竹春氏(48)、水産仲卸会社社長の坪倉良和氏(70)も立候補を表明した。7月初旬の時点で、池田氏は依然出馬する否かの正式な表明をしておらず、状況は流動的。横浜を変革するべく自ら立ち上がるのか、別の方法に活路を見いだすのか。その動向が市長選の行方にも大きな影響を及ぼしそうだ。


VictorySportsNews編集部