井上尚弥は統一王者で輝かしい1年に

 WBA&IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(大橋)の2022年の理想は3試合行い、「バンタム級4団体王座統一」そのうえで「スーパーバンタム級に上げて4階級制覇」を成し遂げること。この通りにいくと今年はモンスターのキャリアで最も輝かしい一年になるはずだ。

 「1階級1王者」はいつだってボクシングファンの願いだが、WBA・WBC・IBF・WBO――主要4団体のベルトをまとめようとするトップファイターが近年現れている。過去に成功した6人のうち4人が現役だ。テレンス・クロフォード、オレクサンドル・ウシク、ジョシュ・テイラー、そしてサウル“カネロ”アルバレス。いずれもPFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングの常連でもある(テオフィモ・ロペスをカウントして7人とする説もある)。最新の例は、ボクシング界を代表する選手となったカネロで、昨年11月にスーパーミドル級の完全制覇を成し遂げた(ちなみにカレブ・プラントを倒して最後のIBF王座を吸収したこの試合でカネロが稼いだ額は3500万ドルとも4000万ドルとも言われている)。

 井上の場合、残りの2王座(WBC、WBO)を持つフィリピンのチャンピオン、ノニト・ドネアとジョンリール・カシメロを連破すれば、「唯一の王者」の称号を手にする。いまの適正体重であるバンタム級で無類の強さを発揮するモンスターにはぜひとも達成してほしい偉業である。順番では、ドネアとの2019年11月以来のリマッチがカシメロよりも先になりそうだ。

誰もが見たい夢の対戦が実現できるか

 ところで、そんな井上が“もうひとつのビッグマッチ”をぶち上げた。それが4階級制覇王者の井岡一翔(志成)との対戦である。はっきりと井岡の名前こそ口にしたわけではないが、仮に戦う話になればこれを大歓迎するふうなのだ。

 実現にはハードルがいくつもある。とりわけネックとなるのは階級差。わずか1階級とはいえ、井上がスーパーフライ級に体重を落とすことはまずないし、井岡が5階級制覇をかけてバンタム級に上げる可能性はあるにしてもまだ先の話だ。それまで井上がバンタムにとどまっているかどうか。ともに自身のベストウェイトに関して厳格なプロフェッショナルである。

 この点、井岡がその気にならない限りは困難なカードだろう。そもそも井岡もまさにスーパーフライ級で統一戦シリーズをもくろんでいるところだ。

 昨年末に行うはずだったIBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との2団体王座統一戦は、外国人新規入国停止の水際対策の影響を受けて延期に。井岡は急きょ代役の福永亮次を挑戦者に立ててリングに上がった。福永の頑張りに判定防衛の結果だったが、リスクを排除して勝ちに徹する試合運びを選択したのも「次のことを考えた」と、あくまでアンカハス戦につなげるためだとアピールした。

 アンカハスは2月にアメリカで10度目となる防衛戦を行うと報じられており、井岡同様に仕切り直しの統一戦に向けた試合という位置づけ。井岡はアンカハス戦が再セットされるなら海外であろうと辞さない構えだ。アンカハスに勝って2団体王者となり、さらに別の王者へと対戦を持ちかけるつもりだから、こちらもまた4王座統一の意欲が大なのである。

 今回の対井上戦は井岡にとって降って湧いたような話だが、瞬く間に“夢のマッチング”として脚光を浴びるのだから、黄金カードとしての魅力はたしかである。もっとも、すでに井上と井岡は“王座統一レース”でしのぎを削っていると言えなくもないが――。


VictorySportsNews編集部