悲願の日本一へのその1.史上最大級の血の入れ替え

 まず、最初に行うべきは選手の入れ替えだろう。昨シーズンのオフは総勢34人(うち自由契約後に育成契約が16人、コーチら選手以外が5人)が、戦力外や自由契約、退団となったジャイアンツ。前年の27人を大きく上回る異例の入れ替えとなったが、今シーズンはそれをさらに更新する入れ替えを行われるはずだ。

 “発掘と育成”を掲げて臨んだ今季は、山崎伊織や堀田賢慎、井上温大ら若手投手陣のほか、中山礼都、増田陸、岡田悠希ら多くの若手が出場機会を得た。その結果、守護神として大活躍したルーキーの大勢を筆頭に、先発ローテに入って5勝を挙げた山崎、50試合に出場しショートを守った中山、一時は中田や中島を押しのけてスタメンを張っていた増田などが台頭。

 一方で、シーズン終盤にかけて多くのチャンスが与えられた重信慎之介や若林晃弘、石川慎吾、桜井俊貴ら93年組や、それに次ぐ北村拓己、岸田行倫、八百板卓丸、廣岡大志らの世代は、大きなインパクトを残すことはできなかった。

 概ね29歳の93年組は、大卒ならプロ入り7年目、高卒なら11年目。移籍組で1997年生まれの八百板、廣岡にしてもプロに入ってから8年、7年が経過している。過去のデータを見ると、特殊なポジションであるキャッチャーを除けば、多くの一流選手は高卒なら5年以内、大卒や社会人出身なら遅くとも3年目までには台頭。

 ジャイアンツで見ても坂本は高卒2年目、岡本や丸、中田は高卒4年目から主力として活躍。ドラフト7位ながら93年組の出世頭となった中川皓太は大卒投手としては比較的時間がかかった方だが、それでも大卒3年目のシーズン後半から飛躍し、4年目でブレイクしている。

 1994年生まれだが93年組と同学年の今村信貴、2017年のドラ1でシーズン序盤は快投を続けたプロ入り5年目の26歳・鍬原拓也らは一定の活躍を見せた。ケガもあって今シーズンは不調だったものの2021年シーズンは52試合に登板した畠世周も含め、彼らは本来なら安泰のポジションだろう。

 だが、2年連続のV逸かつ屈辱の最下位もありえる瀕死のチーム状態も踏まえると、かつてないレベルでの血の入れ替えが行われても不思議ではないし、しないといけないのだと思う。

悲願の日本一へのその2.FA補強は絶対すべき

 投手ではタイガースの西勇輝と岩崎優、野手では捕手のライオンズ・森友哉、内野手のゴールデンイーグルス・浅村栄斗、ライオンズ・外崎修汰、ドラゴンズ・高橋周平、マリーンズ・中村奨吾、外野手のカープ・西川龍馬が、FAの目玉となりそうな今秋。

 もちろんジャイアンツファンとしては“発掘と育成”を継続してほしい。だが、レギュラー陣が不在&交代した際に、戦力が極端に落ちるラインアップは、観ていて未来を感じられないし、正直厳しいと言わざるを得ない。

 チーム防御率が12球団最低にまで落ち込んだ投手陣は、ほぼ顔ぶれが変わらなかった過去2シーズンから大きく変わり、希望を感じさせるが、まだ1年を通して計算できるレベルには届いていない。5年以内に日本一を目指せばいいというのなら成長を待てばいいが、ジャイアンツという伝統球団でそれはできないだろう。

 主力の高齢化が進む野手陣も当然、次世代の育成が必須。だが、中山や増田が坂本や中田を上回るにはまだ時間がかかりそう。その間を埋めるのが93年組ら中堅だと思うが、そこが機能していない現状では、FA補強に頼るのが必然。言い方は悪いかもしれないが、若手が成長するまでの繋ぎとして、FA補強を活用すればいいのではないだろうか。

 かつて、原監督第二次政権時の2007年に小笠原道大(現二軍打撃コーチ)と谷佳知、翌2008年にアレックス・ラミレス、セス・グライシンガー、マーク・クルーンを獲得し、2009年にはシーズン89勝の圧倒的な成績で日本一、さらにアジアチャンピオンまで突き進んだジャイアンツ。

 これら圧倒的補強の一方で、2008年には2005年に育成選手として獲得した山口鉄也(現一軍投手コーチ)、2005年ドラフト4位の越智大祐のプロ3年目コンビが風神雷神として活躍。二岡智宏(現二軍監督)のケガからショートのレギュラーを掴んだ2006年ドラフト1位の坂本がシーズンフル出場を果たしている。加えて2009年には、2006年育成ドラフトで加入したプロ入り3年目の松本哲也(現二軍外野守備走塁コーチ)が新人王を獲得。

 この歴史から、補強と育成は単純に相反するものではなく、補強と育成の両立は可能だと言える。お手本やライバルとなる選手の出現が、若手の成長を手助けすることになるのかもしれない。

悲願の日本一へのその3.クライマックス・シリーズには出ない

 ジャイアンツが過去に一度だけ記録した屈辱のリーグ最下位は、長嶋茂雄監督1年目の1975年。それから4年後の1979年、シーズン5位に終わった長嶋監督が敢行した“地獄の伊東キャンプ”は、伝説として語られている。

 プロ1年目を終えた江川卓に、西本聖、鹿取義隆、角三男、山倉和博、篠塚利夫、中畑清、松本匡史ら若手が参加して徹底的にしごかれたという秋季キャンプ。ここで徹底的にしごかれた選手たちが、2年後の1981年に日本一を成し遂げたチームの主力に成長していった。

 CSや日本シリーズに出場すると、スケジュール上本格的な秋季キャンプは行えなくなってしまうので、今回ばかりは出場せずに伝説の再現を夢見たい。チームの敗退を願うのはファン失格かもしれないが、個人的にはそのほうが近い将来の日本一の確率が上がると本気で思っている。

 もう10年もおあずけを食らっている日本一の美酒。今シーズンも望みは叶いそうにないので、やけ酒をあおりつつも、いちジャイアンツファンとして真剣に提言させていただきました。


※敬称略。データは9月14日現在。


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。