2019年、J1は平均入場者数で過去最多記録を達成

  2019年、J1は1試合20,751人の平均入場者数を記録。史上初の20,000人超えとなった。J1全体で見ても前年度より516,143人の増加となり、18クラブ中13クラブで入場者数増加を達成した。これには、15年ぶりのリーグ優勝となった横浜F・マリノスと2位でフィニッシュしたFC東京が最終節の直接対決まで優勝争いを繰り広げたことが影響しているだろう。日産スタジアムで行われたJ1第34節の両者の最終戦は63,854人が来場し、Jリーグ最多入場者数を更新した。

 さらに、2018年夏にヴィッセル神戸に加入したアンドレス・イニエスタが初めて1シーズン通してJリーグでプレーしたことも1試合平均20,000人超えを記録したことに大きく影響していると言えるだろう。実際、2019シーズンのJ1各クラブのホームゲーム入場者数を見てみると、17クラブ中10クラブが神戸戦で最多入場者数を記録した。イニエスタのようなスター選手の存在は、所属クラブだけではなく、対戦相手のクラブの入場者数を増やす要因にもなる。

 なお、J2を見てみると、2019シーズンの1試合平均入場者数は7,176人で、前年の2018シーズンの7,049人と比較して127人が微増する結果となった。J3リーグの2019シーズン平均入場者数は2,396人で、2018年シーズンの2,491人から95人減となった。2019シーズンはJ1、J2、J3全体で3.1%増加となっている。

年々増えていた入場者数もコロナの影響で減少を余儀なくされる

 J1は2015年から1試合あたりの平均入場者数を毎年、数百人単位で増やしていた。2019シーズンには前年比1,687人と大幅に増加することに成功し、この勢いを維持できるか、2020年シーズンは勝負の年となるはずだった。しかし、1月に新型コロナウイルスの感染者が日本国内で初めて確認されると、感染者数は瞬く間に急増。なんとかJ1の開幕戦は開催できたものの、J1、J2は第2節から、J3は開幕節から延期となり、3ヶ月以上リーグが中断した。6月末にようやくJ2が再開し、J3は満を持して開幕、7月1週目にはJ1が再開した。しかし、無観客試合や入場者数5000人、またはスタジアムの収容率50%以下などに制限されるなど、観客動員数は大幅に減少を余儀なくされた。2021シーズンも計10試合が無観客開催となり、有観客試合も収容人数の制限があったため、J1の1試合あたりの平均入場者数は6,661人となった。

ファン・サポーターの獲得のために様々な施策を行うJリーグ 無料招待は有効なのか?

 今年9月20日時点でのJ1リーグ1試合あたりの平均入場者数は13,520人となっている。これは、コロナ禍前の2019シーズンの20,751人と比較して65%という結果となっている。声出し応援の実証実験対象は、声出し応援エリアの入場者数を50%に制限するなどの対策を行っているため単純比較はできないものの、伸び悩んでいると言える。

 この要因として、年間数試合をスタジアムで観戦するライト層がコロナの影響により離れてしまっていることや、新規ファンが観戦を躊躇することなどが考えられる。そうした状況を打破するため、新規のファン・サポーター獲得及びコロナによって一時離れした顧客のカムバックを目的として、Jリーグはゴールデンウィークや夏休みに無料招待企画を実施した。

 ゴールデンウィークでは、J1からJ3クラブの計25試合24,000人の招待を実施。そして、夏休みには対象エリア、クラブも大幅に拡大し、合計80,000人を招待する大型企画を実施している。その他にも、7月2日に行われた清水エスパルスVS横浜F・マリノス戦、および9月18日に行われたFC東京VS京都サンガの試合(いずれも国立競技場で開催)で、それぞれ10,000人を無料招待した。清水戦は56,131人の入場者数を記録し、同クラブのホームゲーム最多観客動員数の記録を更新し、FC東京戦も50,994人が来場し、こちらもホームゲームの最多観客動員数を達成した。

 これらの招待企画については、SNS上で「タダ券のばら撒き行為だ」「試合やリーグの価値が下がるのではないか」などの反対意見も多数見受けられた。たしかに、無料招待券を多く配布することで試合の価値が下がる可能性や入場料収入が減るデメリットもあるだろう。しかし、今回の無料招待企画はJリーグID取得者を対象に応募者を募り、抽選方式で実施していた。そのため、JリーグIDを持っていないユーザーは企画に応募するために登録をする必要がある。そこで登録者が登録したデータを基に居住地や年齢、その後のチケット購入履歴などのマーケティングデータを収集することができる。そして、無料招待の企画をきっかけにその後も継続的にチケットを購入し、有料で試合を見に来てもらうきっかけとなれば顧客獲得に繋がる。無料招待は対象者や回数を限定して行うことで、顧客の獲得や離れていた顧客の再獲得に繋がる可能性も大いにあるといえる。そして、ライト層とディープ層に二極化するファン・サポーターにどのようにアプローチするかも重要になるだろう。

代表人気も低迷!?その要因とは?

 また、コロナ禍におけるJリーグの集客問題と同時に、日本サッカー界の課題となっているのが日本代表の人気低迷だ。以下は2014年(ブラジル)、2018年(ロシア)、そして2022年(カタール)のアジア最終予選のホームで行われた平均入場者数だ。

2014ブラジルワールドカップアジア最終予選 平均入場者数 61,797人
2018ロシアワールドカップアジア最終予選  平均入場者数 58,715人
2022 カタールワールドカップアジア最終予選 平均入場者数 44,600人
※埼玉スタジアムを会場とし、収容人数100%の試合のみを対象とする

 ブラジルワールドカップのアジア最終予選では、ホームの埼玉スタジアムで行われた試合の1試合あたりの平均入場者数は61,797人で、大台の60,000人を超えていた。2018年のロシア大会予選では、平均入場者数が3,000人減となっていた。また、テレビ視聴率を比較してもブラジル大会の予選から12%も低下している。そして、2022年のカタール大会の最終予選ベトナム戦では、入場者数44,600人を記録。視聴率もロシア大会予選からさらに5%低下した。カタール大会予選の他のホームで行われた試合は、観客動員数50%以下などの制限があったため、ベトナム戦のみの比較にはなったが、様々な事情を考慮しても入場者数が45,000人以下となったのは現実だ。コロナ禍であってもマイナスの影響を受けないであろう視聴率も低下しており、日本代表人気は確実に低迷している。更には、今年7月19日に鹿島スタジアムで行われたE-1サッカー選手権大会の香港戦では4,980人を記録。それまでのワースト1位の試合は観客動員数5,000人以下の制限だったため、事実上のワースト記録を更新する結果となった。

 代表戦の人気低迷の要因として考えられるのは、メディアの露出機会の減少とタレント不足ともいえるだろう。メディア露出に関しては、人気サッカー番組のやべっちFC(テレビ朝日)が2020年9月に、スーパーサッカー(TBS)が2021年3月に放送終了となった影響で、地上波のサッカー番組が減少した。更に、当時は本田圭佑のようにメディアに向けて注目の発言をし、注目される選手もいたが、今の日本代表の選手達はメディアの前でも控え目な印象が見受けられる。長友佑都や大迫勇也、吉田麻也といった古株のメンバーも数名残っているものの、以前のようなインパクトは残せていない。象徴的な存在の選手が減ったこととメディアへの露出減少が日本代表の人気低迷に繋がっているのではないだろうか。

日本でサッカー自体に人気がないわけではない?

 Jリーグの人気が伸び悩み、日本代表も人気が低迷している日本サッカーだが、日本でサッカー自体に人気がないかと言われるとそうでもないだろう。今年6月6日に日本代表は新国立競技場でネイマールらを擁するブラジル代表と親善試合を行った。スター軍団を見ようと、コロナ禍にも関わらず、63,638人が来場した。

 そして、7月にはリーグ・アン(フランスリーグ)のパリ・サンジェルマン(PSG)がジャパンツアーで来日。同20日の川崎フロンターレ戦は64,922人を集め、新国立競技場の最多入場者数記録を更新。同23日の浦和レッズ戦(埼玉スタジアム)は61,175人、同25日のガンバ大阪戦(パナソニックスタジアム吹田)でもスタジアム記録となる38,251人が詰めかけた。PSGジャパンツアーのチケット価格は平均で15,000円を越えていたにも関わらず、3試合全てで満席となっている。

 このようにスター選手が多くいる強豪国やビッグクラブと対戦するカードではチケット価格が高く、且つコロナ禍あってもスタジアムは満員となる。決して日本にサッカー人気がないというわけではないだろう。きっかけさえあれば、人が多く集まるポテンシャルはあるのだ。今後もスタジアムに来てもらう機会やきっかけを如何にして作るかがカギとなるだろう。


VictorySportsNews編集部