今も昔も、統一戦はそれだけで訴求力が高い。対立する王座統括団体のチャンピオンが激突するという構図に、真のチャンピオン決定戦の趣があるからにほかならない。

 11月1日、さいたまスーパーアリーナのリングではかなりの確率―というのは引き分けの場合をのぞき―でライトフライ級のWBC&WBA統一チャンピオンが誕生する。そしてさらにおもしろいのが、当日のダブルメインカードとしてWBO(世界ボクシング機構)ライトフライ級タイトルマッチも挙行されることである。つまりこの日は、いわゆるメジャー4団体のうちIBF(国際ボクシング連盟)以外の3団体のライトフライ級タイトルマッチが同じリングで開催されるというわけだ。

 いま一度、4団体のライトフライ級チャンピオンを整理すると以下の通り。
・WBA(スーパー王座)…京口紘人(日本)
・WBC…寺地拳四朗(日本)
・IBF…シベナティ・ノンティンガ(南アフリカ)
・WBO…ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)

 WBO戦では、チャンピオンのゴンサレスに同級2位の岩田翔吉(帝拳)が挑む。今回のイベントをライブ配信するプライム・ビデオも、「ライトフライ級のチャンピオン3人が日本に集って戦う」(児玉隆志ジャパンカントリーマネジャー)とアピールしている。

4団体時代の日本人王座の集結

 1990年代にWBA、WBC、IBF、WBOの「4団体時代」になって以降、日本で同一会場に同一階級の3団体の王座が集結した例は過去にもある。ちょうど3年前にやはりさいたまスーパーアリーナで行われた、井上尚弥(大橋)-ノニト・ドネア(フィリピン)のWBA&IBFバンタム級戦とノルディーヌ・ウバーリ(フランス)-井上拓真(大橋)のWBCバンタム級戦がそれである。結果的に井上兄弟の明暗が分かれたのはご存じの通りだが、拓真を下したWBC王者ウバーリと尚弥との3団体統一戦がにわかにクローズアップされもした。

 かように“11.1さいたま”のリングでも、寺地-京口戦の勝者とゴンサレス-岩田戦の勝者との「その次の統一戦」が話題になることは間違いない。

 もとより近年のライトフライ級は日本人世界王者を続けざまに輩出しており、そのつど統一戦を期待する声は上がってきた。2017年の5月には、4団体の王座を日本人ボクサーが独占するという珍しい事態になったことがある。この時は田口良一(WBA)、寺地拳四朗(WBC)、八重樫東(IBF)、田中恒成(WBO)の顔ぶれだったが、寺地が新王者となって4人王者が並び立ったのもつかの間、翌日に八重樫がまさかの陥落となって一日限りだった。その後、井上が優勝した「チャンピオンたちのトーナメント」WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)をライトフライ級で開催されるのではという憶測が出たこともある。

11.1さいたまは伝説となるか

 今回、寺地などは京口と試合をする前から「将来的に4団体統一を目指したい」と豪語している。今年3月、矢吹正道(緑)に一度は追われたWBC王座に返り咲いた寺地は、具志堅用高の持つ日本人王者最多連続防衛記録の夢が潰え、新たに統一チャンピオンを目標にしているのだ。また世界初挑戦となる岩田も「まだ自分に発言権はない」と前置きしつつ、勝ったあかつきには統一戦の選択肢が出てくることを意識している。

 世界的に王座統一戦ブームのいま、これを発端にライトフライ級の統一戦シリーズが展開する――そんな期待感も“11.1さいたま”にはある。


VictorySportsNews編集部