ヤクルト:即戦力47+将来性43=90点

1位 吉村貢司郎投手(東芝)
2位 西村瑠伊斗外野手(京都外大西高)
3位 沢井廉外野手(中京大)
4位 坂本拓己投手(知内高)
5位 北村恵吾内野手(中大)

 2年連続リーグ優勝を果たしたヤクルトに足りていないのは先発投手。2桁勝利は1人もおらず、奥川の復帰時期も未定。小川、高橋、サイスニードに続くローテーション投手が求められていた。

 1位の吉村はドラフト前日に指名を公表して見事狙い通りに単独で交渉権を獲得。社会人ナンバーワン投手を巡ってはDeNA、中日、ロッテの注目も伝わってきていたが、中日が先に沖縄大・仲地の氏名を公表したことで、急遽ヤクルトも公表に踏み切り、狙いがハマった形だ。球威、制球力、スタミナといずれも今年のドラフトではトップクラスの投手で、気は早いが新人王筆頭候補にも挙げられる存在。チームの数少ない弱点を埋められる可能性は高い。

 2位指名の西村は高校通算50本塁打、3位の沢井は愛知大学野球リーグ通算10本塁打を誇るいずれも大砲候補で、5位の北村も含めて将来的に村上がメジャー挑戦を決断した場合などに備え、素材型の長距離打者を指名したものとみられる。特に外野手は年齢構成が高くなっていただけに、ここから1人でも主軸が生まれてくれればという狙いが伺える。

 ただ、やはり投手が吉村以外、素材型の左腕・坂本のみという点は気になるところ。若い投手の台頭が少ない現状を考えれば、もう一人くらいは投手に振っても良かったように思える。

DeNA:即戦力45+将来性47=92点

1位 松尾汐恩捕手(大阪桐蔭高)
2位 吉野光樹投手(トヨタ自動車)
3位 林琢真内野手(駒大)
4位 森下瑠大投手(京都国際高)
5位 橋本達弥投手(慶大)

 嶺井、戸柱、伊藤と併用されている3人の捕手はいずれも30代。ここ数年で上位指名した捕手もおらず、強肩強打の高校生捕手・松尾を単独指名できたのは大きい。ドラフト1位での捕手獲得は、球団では谷繁以来34年ぶりとなった。「これで捕手は今後10年安泰」ともいわれるほどの素材だけに、ピンポイントでの補強に成功した形だ。育成1位でも評価の高かった上甲(四国IL愛媛)を指名。一貫性が見える。

 今永、大貫、浜口、石田に加え、来季の活躍や復活が期待される東や平良、小園もおり、屈指の先発陣容を誇るチームだが、即戦力投手では吉野と橋本を確保した。吉野は切れのある直球と2種類のフォークボールを操り、テンポのいい投球が魅力の先発型。橋本は最速152キロで馬力を感じさせる救援型。タイプの異なる投手を効果的に補強できた。

 さらに、二遊間の強化、走力の強化を見据えて林を指名。4位の森下は、左肘のけがで3年時に本来の実力は発揮できなかったものの、2年生エースとして臨んだ選抜大会で4強入りするなど、もともと世代ナンバーワン左腕として1位指名候補に挙がっていた存在。プロでは投手に専念する方向ながら、高校通算21本塁打を誇る打者としてもヤクルト2位・西村と遜色ない潜在能力の持ち主。隙のない指名で、今年も“ドラフト巧者”らしさを発揮した。

阪神:即戦力40+将来性40=80点

1位 森下翔太外野手(中大)
2位 門別啓人投手(東海大札幌高)
3位 井坪陽生外野手(関東一高)
4位 茨木秀俊投手(帝京長岡高)
5位 戸井零士内野手(天理高)
6位 富田蓮投手(三菱自動車岡崎)

 今年のドラフトで数少ない競合のあった選手、浅野を巨人との争いで外し、代わって指名したのが同じく長打力のある外野手、森下。岡田新監督が浅野の抽選を外しても冷静だった辺り、大学生でより即戦力の期待が大きい“外れ1位”の獲得は、実は現場としては願ったりかなったりだったのでは。右の強打者タイプは若手に少なく、一貫した狙いが伺える。

 2位以下は高校生中心。ただ、気になるのは課題である二遊間の選手を1人も指名しなかった点だ。DeNA3位の林、日本ハム5位の奈良間と、有望株はいただけに、弱点の解消という部分ではやや不満の残る結果となった。まだまだ完成度としては高くない選手が多く、成果が見えてくるには時間がかかりそうだ。

巨人:即戦力45+将来性50=95点

1位 浅野翔吾外野手(高松商高)
2位 萩尾匡也外野手(慶大)
3位 田中千晴投手(国学院大)
4位 門脇誠内野手(創価大)
5位 船迫大雅投手(西濃運輸)

 1位指名は浅野。阪神と競合したが、見事に当たりくじを原監督が引き、くじ11連敗の歴史にピリオドを打った。9月末にいち早く指名を公表した“執念”が実り、興奮を隠せない原監督の姿も話題となった。中田ら主軸野手にベテランが多く、将来性のある長距離打者は何より求められていた。

 一方で、2位以降は1位で競合した阪神と対照的に、大学生、社会人と即戦力候補に特化した指名となった。特に、課題の救援陣に厚みをもたらす存在として田中、船迫、さらに育成1位の松井颯(明星大)にかかる期待は大きい。昨年1位指名した大勢はクローザーとして大活躍したが、こちらの3人も1年目からチャンスをつかむ可能性は十分にある。

 高校生のスター候補を1位で確保し、2位以下で即効性のある補強を行う。バランスに優れたドラフトとなった。

広島:即戦力40+将来性45=85点

1位 斉藤優汰投手(苫小牧中央高)
2位 内田湘大内野手(利根商高)
3位 益田武尚投手(東京ガス)
4位 清水叶人捕手(高崎健康福祉大高崎高)
5位 河野佳投手(大阪ガス)
6位 長谷部銀次投手(トヨタ自動車)
7位 久保修外野手(大阪観光大)

 1位で指名を公表していた斉藤、2位で内田と投打で将来の軸となり得る選手を指名しつつ、3位に益田、5位に河野、6位に長谷部と計算のしやすい社会人の即戦力投手を並べ、リスクを最小限に抑えた。課題だった救援陣の厚みは確実に増しそうだ。特に益田は、今年の社会人投手でヤクルト1位の吉村と並びトップ級の評価を得ていた選手。即戦力として大きな期待がかかる。

 鈴木誠也(カブス)がメジャーに移籍し、その穴を埋められない現状がチーム低迷の大きな要因にもなっており、即戦力の大型外野手は確保しておきたかったところ。ただ、全体的には即戦力と将来性のバランスが取れた指名といっていい顔ぶれだ。

中日:即戦力35+将来性35=70点

1位 仲地礼亜投手(沖縄大)
2位 村松開人内野手(明大)
3位 森山暁生投手(阿南光高)
4位 山浅龍之介捕手(聖光学院高)
5位 浜将乃介内野手(日本海L福井)
6位 田中幹也内野手(亜大)
7位 福永裕基内野手(日本新薬)

 仲地を公表通りに1位指名。沖縄の大学から初の1位指名を勝ち取り、プロでの活躍が期待される。

 疑問なのはチームの課題である長打力を期待できる野手の指名がほとんどなかった点。今季の62本塁打、414得点は12球団ワースト。得点力不足の解消が求められる中で、今季セ・リーグ最下位のためウェーバーで2位の指名順が早いにも関わらず、ヤクルト2位の西村、オリックス2位の内藤といった高校生スラッガーや巨人2位の萩尾ら即戦力の強打者タイプをスルーし、村松、浜将、田中と俊足巧打を持ち味にする同タイプの内野手ばかりを選んだ。

 ようやく7位で長打力が魅力の福永を指名したが、さすがに1人にチームの課題克服を委ねるのは無理がある。広いバンテリンドームを本拠地とするだけに、チームとしてその分野に特化したい思いがあるのかもしれないが、最下位に低迷した中、もう少し目の前の弱点解消に向けた指名があっても良かったように思える。


VictorySportsNews編集部