相場以上のファイトマネーとは別に、優勝賞金1000万円が贈られるとあって話題になった。日本のこの手のトーナメントでは破格の金額である。

 「相場以上のファイトマネー」にしても、決勝戦に勝ち上がった選手が日本や東洋太平洋、WBOアジアパシフィックのチャンピオンなら500万円、世界ランカーなら400万円、日本ランカーは300万円。ノーランカーでも200万円の報酬となることが明らかにされている。

現役日本チャンピオンも参戦

 今回の出場者に現役の日本チャンピオン、堤聖也(角海老宝石)が名を連ねたことはうれしいサプライズだった。シードの堤は8月の準決勝からの参戦となるが、これはれっきとした日本タイトルマッチとなる。堤は日本チャンピオンベルトを防衛しながら優勝を目指すつもりなのだ。

 堤以外の出場者は、富施郁哉(ワタナベ=日本2位)、穴口一輝(真正=日本11位)、梅津奨利(三谷大和スポーツ=日本12位)、増田陸(帝拳)、内構拳斗(横浜光)、石川春樹(RK蒲田)の6名。粒ぞろいのフレッシュ・ホープたちが集まった印象である。

 実績的にもチャンピオンの堤がトーナメント大会の優勝候補筆頭になる。しかしほかの6名にとっても堤の出場は歓迎すべきことであるに違いない。言うまでもなく、堤と対戦するということがタイトル挑戦のチャンスを手にすることと同義だからだ。

 準々決勝にあたる初戦は、富施-増田、穴口-内構、梅津-石川の組み合わせで行われ(すべてノンタイトル8回戦)、その結果、増田、穴口、梅津が勝ち上がった。この日最も目立ったのは富施に7ラウンドTKO勝ちを収めた増田だったろう。プロで2戦しかしていないノーランカーが日本2位を破ったのだから。

 増田には広陵高校、立教大学で65戦のアマチュア経験があるとはいえ、プロでの2戦はどちらも初回KO勝ちだった。プロで14戦(12勝2KO2敗)の富施のキャリアを買う声も出て当然。それがフタを開けてみたら格上から2度のダウンを奪って最後は仕留めるという快勝だった。

 武器の左強打で最初のダウンを奪ったのは、まだ1ラウンドのことだ。その後もサウスポースタンスからの右ジャブをヒットし続け、富施にダメージを与えた。富施も粘りはしたものの、迎えた7ラウンド、またしても増田の左がヒットして2度目のダウン。クリンチでピンチをしのごうとする富施に対し、左ストレートから追撃してレフェリーのストップを呼び込んだ。

増田の次は日本タイトルマッチ戦

 これまで未知の部分だったスタミナや試合運びも証明して勝利した増田は晴れて準決勝へ。そこで対戦するのがシードの堤である。つまりルーキーの増田はプロ4戦目の次戦で一躍日本タイトルマッチに挑むことが確実となったのだ。

 堤-増田の一戦は興味深い。話は少しさかのぼって、トーナメントの組み合わせ抽選会でのこと。準々決勝のカードが出そろって、堤はこんな感想を漏らしたのだ。

「このメンツで強いと思っていたのが富施選手と増田選手だった」

 その両者がいきなり初戦で対戦するとあって、堤本人も注目していた。
 富施を破った増田はリング上のインタビューでさっそく、

「絶対に次勝って、日本チャンピオンになりたいと思います」
と意欲をアピールしている。

 一方で、この試合はあくまでトーナメントの準決勝である。もうひとつの準決勝で対戦する穴口、梅津にしても将来性豊かな若手同士、好勝負が大いに期待できる。シャープなサウスポーの穴口か、攻撃力のある梅津か。勝ったほうは12月の決勝で優勝賞金1000万円のみならず日本王座にもトライできそうとあって、目の色をかえてくるはず。堤-増田戦の勝者がそのまま決勝も制すとは断言できない――破格の賞金トーナメントはチャンピオンのエントリーにより面白みが倍増したのは間違いのないところだ。


VictorySportsNews編集部