東京オリンピック金メダリストの実力は伊達じゃなかった。3回のパフォーマンス中の最高得点で順位を争う決勝で、堀米はなかなか思うように技が決められず、得点を伸ばせなかった。2回目が終わった時点では4位だった。最後の3回目もなかなか技が決まらず、1分間の制限時間を半ば過ぎたところで技を決めた。一気に1位に踊りでて逆転優勝を決めた。
「すごくホッとした気持ち。大会がまた日本でこうやって開催されて、多くの人たちが見に来てくれて自分もすごく嬉しいし、家族も見に来てくれて、良い滑りを見せたかった。こうやって自分の滑りができたのが嬉しかった。1、2本目でうまくいけていたら、もうちょっと違うトリックで攻めたい気持ちはあったんですけど、1、2本目、最後のトリックがうまくいけなくて、最後、自分なりにちょっと変えて、うまく乗り切れたのがすごく良かった」
契約を結ぶ楽天主催の大会であり、大会の目玉でもあった。さらには地元・江東区の大会ということもあり、負けられない、負けたくないプレッシャーがある中での優勝は見事と言うしかない。
主催の楽天とは昨年4月に戦略的パートナーシップ契約を結んだ。スケートボードの普及や認知に関わる活動を楽天と一緒に取り組んでいる。スケートボードの国際大会を日本で開いた意義については、下記のように語る。
「この大会もレベルが高くて、世界のシェーン・オニール、イショッド・ウェア、ジェイミー・フォイとか、普段は五輪の大会とかをあまり滑らない人たちも出ている。本当のプロのストリートスケーターたちが滑っているから、皆新しいインスピレーションとか、楽しみとかを受けられるコンテストなんじゃないかな。」(堀米)
女子Vの上村、優勝したら犬を飼うと母と約束も・・・
女子で優勝したのは中学3年の上村葵。決勝の2本目で、今コースの難所の一つ、12段の階段のレールでのトリックを決めると、次々と技を決めていった。自宅に作ったコースで普段練習している上村は「1位になったらお母さんと犬を飼うって約束したんですけど、試合後、『そんな話ない』って言われました」と記者達を笑わせた。今後も諦めずに交渉していくようだ。
(C)Rakuten Sports上村ら若いスケートボーダーにとって、こういった国際大会を国内で味わえるのは大きい。
「海外に、街中に手すりがあるような有名なところがあるのですが、それとほぼ同じようなセクションが置かれていたので、そこが良かった」(上村)
コースには1990年代のものを再現したり、スケートボードをしているものなら誰もが知るコースをも再現したという。そういった点でも選手達には魅力に映ったようだ。
また、ベストトリックで優勝した前田や濱村も、
「海外の人も日本に来て皆で戦えたので、交流が増えたのもあるし、日本の皆にもこういうのがあるよというのが魅せられたと思う」(前田)
「まずこのような大会に参加出来たことも嬉しいですし、海外の選手とともに戦えたことが一番よかったと思います」(濱村)
と話していた。
大会1日目のプレスカンファレンスにおいて、UPRISING TOKYO Red Bull Official Broadcast Commentatorのアメリア・ブロッカ氏は「競技は日本が大活躍している。若い選手たちも多く、世界と比べても群を抜いている。他の国が日本にインスパイアされている」と話していたが、実際、今大会には多くの10代のスケートボード選手達が出場し、華麗なトリックを見せていた。日本の若い選手達にとっても、国内で挑戦できる国際大会として「(意義は)大きい」と声が出ていた。
指のスケートボードに子供達熱狂
一方で、競技だけでなく、イベントをさまざまな角度で楽しめる仕掛けが今大会には多くあった。
サブアリーナではスケートボードに親しんでもらうための仕掛けがあった。スケートボードをしたことがない初心者や子供向けの教室が連日開かれ、大人の参加者も意外と多く、ボードの乗り方を教わっていた。
会場にはファミリー層が多かったこともあってか、子供も多く来場していたが、特に人を集めていたのが、スケートボードのミニチュアを指で操る「フィンガースケートボーディング(指スケ)」のブースだった。指先でスケートボードをくるくると回すなど技を決めながら、コースも滑るというもの。会期中にあった大会では指で繰り出す技に、子供達が大喜びしていた。
また、メイン会場では、今回のイベントの総合演出監督をになった書道家の憲真さんが「初めて使いました」という巨大筆で書いた「UPRISING TOKYO」が飾られたり、若手アーティスト達によるライブペインティングなども行われ、来場者が楽しんでいた。
スケートボードの歴史を、過去に使われていたボードの現物とともに紹介するコーナーや、アメリカのスケートボード文化に大きな影響を与えた鹿児島出身のアメリカ人・久保正吾さん(故人)の偉業を讃えるコーナーもあるなど、スケートボードをより知るきっかけにもなる大会となった。
楽天は次回以降の開催も見据えており、堀米とともに今後も日本のスケートボードのカルチャーの発展に関わる考えだ。