マンチェスター・Cはグアルディオラ監督が率い、各国の代表選手がずらりと顔をそろえる。イングランド・プレミアリーグを3連覇し、今季はFA(イングランド協会)カップでも優勝。イングランド勢として、1998/99シーズンのマンチェスター・ユナイテッド以来の「3冠」の偉業がかかる。注目は、今や欧州で最も危険なゴールハンターといえるハーランドだろう。一昨季にチェルシー(イングランド)に阻まれた欧州王者の座を、今季こそつかみ取れるか。一方、インザーギ監督が指揮するインテルは1次リーグから準決勝までの12試合で無失点が8度と守備力が高い。マンチェスター・Cの破壊力と、インテルの堅守によるせめぎ合いという展開を予想する。

 両チームを数字で詳しく比較してみたい。

 マンチェスター・Cはプレミアリーグで38試合94ゴール、欧州CLでも12試合で31ゴールを記録しており、ともに最多。ハーランドはプレミア新記録の36ゴールを挙げており、CLでも12得点で「ダブル得点王」(CL決勝まで残っている選手でハーランドの次にゴールを挙げているのはジェコの4点)が確定的だ。

 インテルは国内リーグ(セリエA)3位で、イタリア・カップはタイトルを手中に収めた。スタッツを見ると、欧州CLではタックル(179回、そのうち勝った回数83回)、ボール回収(461回)がいずれも出場チームで最多をマークしており、途切れない激しい守りが12試合中8試合で無失点という結果に表れているといえそうだ。

 主催する欧州サッカー連盟(UEFA)の公式サイトによると、予想先発は以下の通りだ。

-マンチェスター・C-
GKエデルソン(ブラジル)ウォーカー(イングランド)ルベン・ディアス(ポルトガル)アケ(オランダ)ストーンズ(イングランド)ロドリ(スペイン)ベルナルド・シルバ(ポルトガル)デブルイネ(ベルギー)ギュンドアン(ドイツ)グリーリッシュ(イングランド)ハーランド(ノルウェー)

-インテル・ミラノ-
GKオナナ(カメルーン)ダルミアン(イタリア)アチェルビ(イタリア)バストニ(イタリア)ドゥムフリース(オランダ)バレラ(イタリア)チャルハノール(トルコ)ムヒタリアン(アルメニア)ディマルコ(イタリア)マルティネス(アルゼンチン) ジェコ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

 やはり顔触れは、マンチェスター・Cに分があるといえるだろう。移籍専門サイト「transfermarkt」によると、マンチェスター・Cの選手の移籍市場における価値はハーランドの1億7千万ユーロ(約255億円、1ユーロ=150円で換算)を筆頭に、デブルイネ、ロドリ、ベルナルド・シルバの8千万ユーロ(約120億円)トリオら、高評価の選手がずらりと並ぶ。全選手の市場価値の総額は1575億円に上る。

 インテルはW杯優勝メンバーでもあるマルティネスの8千万ユーロ(約120億円)が最高で、バレラが7千万ユーロ(約105億円)と続くが、総額は約802億円。これも途方もない数字ではあるが、マンチェスター・Cと比較してしまうと、半分を少し上回るほどだ。

 選手に限らず、クラブそのものの規模も数字で比べてみる。準拠したのは国際的な監査法人デロイトが今年1月に公表した数字で、2021/22シーズンのクラブの収入である。マンチェスター・Cは7億3100万ユーロ(約1097億円)で、2季連続でサッカークラブの中では最も収入が多いクラブとして君臨している。インテルは14位で、3億840万ユーロ(約463億円)となっている。選手の市場価値、クラブの収入の規模での比較は、いずれもマンチェスター・Cが大きくリードしており、優位であるのは揺るぎないだろう。むしろ、13季ぶりにインテルが決勝まで勝ち上がったのは、ビッグクラブがせめぎ合う近年の欧州のサッカー勢力図の中では快挙と呼んでいいかもしれない。

出典:デロイト公式サイトより(Deloitte Football Money League 2023)

 少しでも波乱の起こる気配はないだろうか。

 今回の決勝の組み合わせと、舞台となるイスタンブールには、実は浅からぬ因縁がある。イングランド勢と、イタリア勢による決勝は2006/07シーズン以来だが、そのときはACミランがリバプールを下して頂点に立った。しかし、この2チームには物語があり、その2季前にも決勝でぶつかっていた。「イスタンブールの奇跡」とも呼ばれたあの試合をご記憶の読者も多いだろう。その2004/05シーズンのファイナルは今回と同じイスタンブールのアタテュルク・オリンピックスタジアムなのである。

 当時の一戦は、ACミランが下馬評通りに主導権を握って前半だけで3―0と大きくリード。しかし、後半に入るとリバプールが息を吹き返してジェラードらのゴールで追い付き、PK戦の末にビッグイヤーを勝ち取った。

 戦前の予想ではACミランを推す声が大きかった。しかし、後半開始からの約15分までにがらりと戦況が変わってリバプールが追い付いた展開もあって、劇的な決勝の一つに数えられる。

 サッカーはボール保持率やチャンスの数を競う競技ではない。グアルディオラ監督はかつて「ボール保持率が100%」が究極の理想と語ったことがある。つまり、それならゴールを奪われることも、試合に負けることもないからだ。しかし、現実には70、80%まで保持率は高められたとしても、100%というのは起こりえない。

 本命でないチームが、劣勢を耐えて少ない好機をものにして番狂わせを起こす姿は、これまでもピッチで何度も繰り返されてきている(それは記憶に新しいカタールのW杯でも)。そんな展開を期待しながら、キックオフの笛を待ちたい。



CLファイナリストは共にジャパンツアーを実施

 CL決勝進出を果たした両クラブは、オフシーズンに日本でのツアー実施を発表している。マンチェスター・Cのチケット価格は、7月23日の対マリノス戦でカテゴリー5の最低価格で小中高生3,000円、大人は5,000円となっている。かつて2019年にマリノスと対戦した際は、現在ラ・レアルに所属し、久保建英とチームメイトであるダビド・シルバも所属しており、日本のファンの前で華麗なプレーを見せつけ、3-1とマリノスを圧倒した。4年ぶりの対戦となる今回のマッチメイクでは、どのような戦いが見られるか注目が集まる。

 また、なんといっても今季のイングランド王者マンチェスター・Cと、同じく今季のドイツ王者バイエルン・ミュンヘンのマッチメイクも実現し、現在チケット予約が殺到しているそう。今月8日(木)に二次先行の申し込みが締め切られ、13日(火)からは三次先行の予約がスタートするが、一次先行を終えての在庫状況は、「各カテゴリーのメインスタンド側、グッズ付きチケット、カテゴリー5」の在庫が残りあとわずかという。

 そんな状況下で、つい先日イタリアカップ覇者のインテルまでもがジャパンツアーの実施を発表したことで、日本中のサッカーファンは期待に胸が膨らんでいる。インテル戦のチケット価格は、7月27日のアル・ナスル戦で最低価格の車椅子席5,000円、小中高生5,000円で、続くカテゴリーでは15,000円と、マンチェスター・Cと比べると割高になっている。ただ、あのクリスティアーノ・ロナウドが所属するサウジアラビアのアル・ナスルとの対戦が決定しており、開催場所はヤンマースタジアム長居なのだ。インテルにとっての第二戦であるパリ・サン=ジェルマンとの試合会場は国立競技場だが、海外クラブが同時期に集結する東京開催とは異なり、大阪開催の利点を活かして、西日本在住のファン・サポーターを数多く見込める可能性は十分に考えられる。

 公式サイトに記載されているチケット情報によると、250,000円以上もの価格で販売されている「ホスピタリティシート」もあり、あらゆる特典にも注目だ。現在受け付けている最速先行は明日11日(日)23:59に終了となるものの、未だ発表されていない日本国内のアクティビティなど、プロモーションの面でも非常に注目を集めているインテル。欧州CLを手にし、14年ぶりとなる来日に弾みをつけられるか。

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土屋健太郎

共同通信社 2002年入社。’15年から約6年半、ベルリン支局で欧州のスポーツを取材