2024年1月1日に国立競技場でタイと対戦する日本代表のメンバーが発表されました。今回はJリーガーが第二次森保ジャパン発足後、一番多い8人選出されています。また、GKでは野澤大志ブランドン(FC東京)、MF/FWでは伊藤涼太郎(シントトロイデン/ベルギー)が初選出されました。

 他にも、まだ代表出場経験のない藤井陽也(名古屋グランパス)、奥抜侃志(ニュルンベルク/ドイツ)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)という3選手、A代表出場5試合以下のフィールドプレーヤーは、森下龍矢(1試合:名古屋)、町田浩樹(5試合:ユニオン・サンジロワーズ/ベルギー)、毎熊晟矢(3試合:セレッソ大阪)、中村敬斗(4試合:スタッド・ランス/フランス)、佐野海舟(1試合:鹿島アントラーズ)、細谷真大(2試合:柏レイソル)の6選手が含まれるというメンバー選考です。

 森保一監督はメンバー発表記者会見で「可能な限り未来に向けて戦力の底上げをしていく」「これまで召集しようと思っていてもできなかった選手を招集させていただいてチームの戦力として考えていけるように」と選考基準を語っています。

 さらに「試合を見て、パフォーマンスを見て、最終的にアジアカップのメンバーを決める」と、タイ戦が1月12日から2月10日に開催されるアジアカップ2023(2024年開催)に向けたメンバー選考も兼ねていることを明言し、タイ戦の直後にアジアカップメンバーを発表することも明らかにしています。

 このアジアカップは、ヨーロッパのリーグが開催されている間に行われる大会です。通常でしたらFIFAが設定するインターナショナルマッチデーは、3月、5月または6月、8月または9月、10月、11月の年5回に設定され、その時以外は各クラブが招集に応じる必要がありません。そのため、五輪はインターナショナルマッチデーに該当しない開催日に行われるため、クラブが了承しなかった有力選手が出られないということが起きます。

 今回のタイ戦はそのインターナショナルマッチデーに該当しないので、11月の日本代表から招集していない選手が多くいます。たとえば現在の日本代表の主力である遠藤航(リバプール/イングランド)、鎌田大地(ラツィオ/イタリア)、三笘薫(ブライトン/イングランド)、冨安健洋(アーセナル/イングランド)、久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)らの名前を挙げることができるでしょう。

 FIFAは各大陸連盟が開催する主催大会をインターナショナルマッチデーとして承認しているので、今回呼べなかった選手でもアジアカップには招集できます。ヨーロッパのクラブは森保監督が招集したいと要望したら、1カ月にわたって選手を代表に送り込まなければなりません。

 ただし、ここで考えなければいけないのは、アジアカップにどんなメンバーで参加するかということです。僕の考えとしては、タイ戦に招集できなかった選手を無理にアジアカップに呼ぶ必要はないのではないかと思います。

 正直に言うと、アジアカップよりもヨーロッパの五大リーグのほうがレベルは上です。だったら選手はヨーロッパで試合に出たほうが、より「個」を伸ばせるのではないでしょうか。そして個々の選手の能力が伸びていったほうが、長期的には日本代表のためになると思います。

 2015年アジアカップまでは優勝チームがワールドカップの前年に開催地で行われていたプレ大会のコンフェデレーションズカップに出場することができました。ワールドカップ開催国で公式戦ができることで、都市や会場の様子など知ることができたのです。ところが2017年を最後にコンフェデレーションズカップは廃止されてしまいました。今はアジアカップに優勝することで賞金を獲得することはできますが、ワールドカップ本大会を睨んだ活動とは結びつきません。

 その大会に、負傷気味だったりポジションを争ったりしている五大リーグの選手を呼び、ヨーロッパと違う気候で戦わせ、大会後のコンディション調整に不安を与えてしまうことが本当に選手や今後の日本代表にとっていいのかという疑問があります。だったら、今回のアジアカップは、このタイ戦に招集しているようなJリーガーや、代表経験の浅い選手たちで挑んではどうかと思うのです。

 それに、アジアカップに出場することはJリーガーにとってもメリットがあります。2011年カタールアジアカップのときはヨーロッパのスカウトが多数視察に来ていました。大会終了直後に岡崎慎司がシュツットガルトに向けて出発し、移籍を決めたという例もあります。ヨーロッパ進出を目指す選手にとって、きっかけとなりうる大会なのです。

 ですから、このタイ戦のメンバーにはぜひいいパフォーマンスを見せて、森保監督に「このメンバーでアジアカップに優勝できる」と思わせて、このままアジアカップに参加できるようになってほしいと思います。そうすることが、いろいろな意味で日本代表の未来につながっていきます。特にJリーガーのみなさん、がんばってください。


前園真聖

鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、2005年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。