35歳まではヨーロッパの第一線でプレーしたい。香川真司×池田純(前編)

インタビュー=岩本義弘
取材協力=Hai-Sai 六本木

常に心を一定に保つために、池田純が実践していること

©荒川祐史

岩本 続いてマンチェスター・ユナイテッドの話も伺いたいと思います。ドルトムントもトップクラブですが、ユナイテッドはさらに上をいくクラブで、ピッチでも、ビジネス的にも世界のトップ3に入るレベルのメガクラブです。実際、ユナイテッドに所属して、違いを感じました?

香川 確かに、クラブとしての規模は大きかったですね。でも、メディカルススタッフとか、ドクターやマッサージ、トレーナーの質は、ドイツのほうが良いんですよ。

岩本 マンチェスター・ユナイテッドに移籍して、メディカルスタッフが良くなかったら、けっこうショックですね……。

池田 でも、アメリカもそんな感じですよ。日本人って、グローブにすごくこだわるんです。自分のグローブは、どこの革がどうのこうの……って。でも、メジャーの選手の場合は、契約しているサプライヤーがドンって持って来て、「この中から好きなものを選んでください」、「じゃあ、これで」っていう感じです。

香川 実際はどうなんですか? 確かに、日本人選手って、グローブにすごくこだわっているじゃないですか。普通のグローブだと、やっぱりうまくいかないんですかね?

池田 それぞれの環境次第だと思うんですよね。すごく気にしながら育ってきたら、そこが崩れていくと自分の中で自信がなくなってしまう。用具だけじゃなく、ルーティーンもそうですよ。野球はすごくゲンを担ぎますから。パンツを右から履くか左から履くか、曲がり角を左で曲がるか右で曲がるか、全部ルーティーンで決まっていて、そうしたルーティーンどおりに準備できないと、途端にダメになる選手もいる。

香川 そこまでやるんですか。僕らもある程度はやりますけど、そこまで細かくはやりません。

池田 野球も、人によりますけどね。

岩本 香川選手のゲン担ぎは?

香川 試合の日は、だいたい同じパンツを履きますね。勝負パンツを履きます。

池田 常にメンタル、心を一定に保てるか。それは、プロ野球界にいたときにずっとみんなで話していました。波がある選手、それこそ、“ブルペンピッチャー”というタイプの選手がいるんですよ。ブルペンにいると、めっちゃ良い球を投げる。でも、観客のいるスタジアムのマウンドに立つと全然ダメ。だから、どうやって心を常に一定に保つか。3万人の前でヒーローインタビューをするときも、重要な試合でバントするときでもどれだけ心を一定にできるかをみんなで心がけようと話をしていました。そのために、ルーティーンが必要ならやればいいし、必要がないのであればそれはそれでいい。普段の練習で準備して、特に年を取っていくと、毎日の身体の変化ってすごく波があるので。一定にするためにどれだけその準備をちゃんとできるか。とにかく、準備がすごく大切だし、みんなで心を一定にしようねって話をいつもしてました。そのために自分が必要なものはなんなのかだと思う。でも野球界のジンクスの多さは本当にすごい。だって、僕とか、フロントの人間もゲンを担ぐように言われるくらいですから。

岩本 個人だけじゃなく、チーム全体でやるのってすごいですよね。

池田 目的が間違っているんですよ。ゲンを担ぐことが目的ではなくて、試合とか、満員の大観衆の前でプレーするときに心を一定にすることが目的で、そのために何が必要かだけなんです。そのためにゲンを担ぎたいなら担げばいいし、練習が必要なら練習すればいい。どれだけ心が乱れないかだと思うんです。
 僕が社長をやっていてよく言われるのが、記者会見とか投資家の前でいろいろと説明するときに、みんなはそういう場に立つと緊張すると言うんだけど、僕は全然緊張しない。なぜかというと、全員“イモ”だと思っているから。あえての“超上から目線”で、「おれのほうがすごいから、わざわざ時間を作って説明してあげている、理解させてあげているんだ」と。そう思った瞬間、普段どおりの自分の言葉で、生の言葉で喋れるんです。

香川 ちょうど今日、トークイベントがあったんですが……緊張しましたね。ああいう場ってなかなか経験しないので。インタビューをされるときも、後から振り返ってみると、自分の言いたかったこと、伝えたかったことが全然言えなかったなと思うことが、しょっちゅうありますし。

岩本 池田さん、トークイベントやインタビューを自然体でこなすためのアドバイスはありませんか?

池田 いつも平常心でいられるように訓練するだけですよ。でも、そこは本質じゃない。別にトークイベントで緊張してもいい。要は、どんなときも平常心を作れるかどうかの訓練なわけですから。仮に僕がトークイベントに出たとしたら、「プロの社長として仕事をこなすために、こんなところで緊張なんかしてられるか』と思うようにしてる。心を平常心に保つための訓練です。僕は、いつでも平常心になれるように、自分でメンタルトレーニングをしているから。
 どうやるかというと、いわばマインドコントロール。僕がベイスターズの社長やめてから、「なんで絶頂で辞めたんですか?」って、すごく言われるんです。「ここからが優勝したり、楽しいときなのに」って。でも契約満了だったわけだし、僕はオーナーではなくて、社長として雇われていただけですから、契約が切られたら終わりなんです。なのに、契約が終わっても、自分のものだと思ってしがみついてストーカーみたいになっても、どうにもならないし、仕方がないことは仕方がない。だからマインドコントロールをして、次のことしか考えないようにしています。「次は何をやろう」って。たまに家に帰ると落ち込んだりしますよ。でも、平常心に戻るための訓練をしょっちゅうしていますからね。
 お酒を飲んで二日酔いになると、平常心に戻りにくくなるから、二日酔いになるのをやめているんです。アルコールは平常心に戻るのを邪魔しますからね。だから最近、特にこの1年は気をつけています。毎日車で来て、お酒を飲まないようにしている。本当は、お酒が大好きなんですけどね(笑)。

香川 野球選手は、そういうイメージがありますね。巨人の坂本勇人とは同い年で、巨人の選手とは何回か食事に行ったことがあります。

池田 坂本選手も、平常心を作るのがけっこう上手いほうですね。

岩本 確かに上手そうですね。全然、流れとは関係ないときに、いきなり試合を決めるようなヒットやホームランをポーンって打つじゃないですか。

香川 勝負強いですよね。

岩本 そう、勝負強い。僕はカープが好きなんですが、カープ戦でやたとら打つから坂本選手のことは嫌いです(笑)。

池田 彼はメンタルが強いですからね。近くで見ていたからよくわかりますが、CSのときもグッと目が座って、「打ちに行くぞ」っていう顔をしたときは、ほかのことを全く気にしていない様子ですから。多分、観客とかも気にしていない。

岩本 巨人では彼だけが抜けてる気がしますね。そういうところでは。

池田 そう、全部イモに見えてるんだよ。

岩本 そういうメンタルなんでしょうね。香川選手も、「周りがイモ」じゃないけど、自分の状態が良いときは、やりたい放題なときがありますよね?

香川 そうですね。

岩本 ああいうときは、まさにピッチ上でそういう状態なんですか?

香川 この半年くらいはピッチ上で、ずっとそんな感じですね。それこそ、常にその状態をキープできたらベストだと思います。ただ、今シーズンは年間を通してはなかなかうまくいかなかったんですけど、この半年は本当にうまく最後までやれたので、それは新たな手ごたえですね。

池田 それがもっともっと安定すればいいですね。これからもっとメンタルが大人になっていくと思いますが、そのときに逆行して身体の衰えが来るはず。それで、いろいろな選手が悩んでしまう。「昔は打てたのに。なんか打てなくなった」とよく言うようになる。それは過信しているんですよ。「自分はいつまでも打てる」って。でも、実際は人間だから目も衰えるし、知らない間に感覚も変わってくる。プロはその微妙な言葉にできないラインで勝負しているじゃないですか? あれを自分の中で理解して、言葉にして乗り越えている選手は、すごく長くやっている感じがしますね。
 個人的には、中村紀洋(元ベイスターズ)は、その感覚がすごいと思いました。彼はメンタルの作り方に関してはプロですよ。勝負の仕方とか、自分が勝つために打つために、何が必要か。配球を含めた相手のクセとか、ここでこう投げてくるというのを全部見ている。その一つを狙うためだけに、すごく集中している。動いている100何十キロのボールを、ここで捉えるためにどうするか。目は衰えているし、身体も衰えているから、なかなかホームランは打てない。でも、その身体の衰えを補うために、配球のクセとかを、どんどん勉強していった。本当にすごかったですね。

日本代表でも独身は少数に 香川真司の結婚観は?

©荒川祐史

岩本 香川選手が一緒にプレーしていた選手で、平常心やメンタルの部分で、すごい強かった選手って誰かいますか?

香川 強い、弱いはわからないですけど、ポール・スコールズとか、ライアン・ギグスあたりはすごかったですね。わかりにくいですけど、強さはすごく感じましたね。

岩本 ギグスとかスコールズとか、サッカーの歴史に残るレジェンドですもんね。

池田 わからないですけど、一番メンタルが強いのって、カズ選手じゃないんですか?

香川 カズさんですか?

池田 はい。だって変な話、年齢からくる肉体的衰えがある中で、それを乗り越えてあそこまでやっている。相当メンタルが強いんじゃないかと思っています。

岩本 震災の復興試合のときにゴールを決めるなど、持っている感もすごくありますね。

香川 カズさんは自己管理も徹底していますしね。さすがに管理しないとムリですよね、50歳になると。

池田 でも、テキーラをたまに飲むって聞きましたよ(笑)。

香川 よく、テキーラしか飲まないって、言ってますよ(苦笑)。

岩本 でも、普段の食事とか、野球選手が聞いたらビックリするくらいやっていますよ。基本的に、栄養士の用意したものしか食べない。でも、ずっと同じことを続けるわけではなくて見直すんです。栄養士と話し合いながら、「ここがこうだったから、こうしたほうがいいんじゃない」と、メニューを変えたりもしている。そういうところは図抜けているというか、日本のサッカー選手はそういうカズさんの話を聞くから、意識しているところがありますよね、

池田 ただ、それがすべてではないと思うんですよ。自分に何が合っているのか、だから。自分が一番自信満々な状態をどうやったらキープできるのか。そのためにビールを一杯飲むことが必要なのであれば、ビールを一杯飲めばいいと思う。すぐ杓子定規的に、カズがすごいからマネをするとか、ジョコビッチのグルテンフリーをやるとか。それが合っている人もいるけど、合わない人も絶対いると思うんです。特に年齢が経てば経つほど。

岩本 つまり、自分の実力を出すために、どれが一番マッチするかは人それぞれだから、そこをちゃんと自分で見つけないといけないということですね。

池田 僕はそう思います。だって、社長って言ったって、みんな経営学とかが優れている人がすごいとか言うけど、実際はそんなことない。成功している社長で、めちゃくちゃな人もいますよ。

岩本 確かに、めちゃくちゃで感覚だけでやっていて、すごい人もいっぱいいますもんね。

池田 いますね。でも、その感覚だけでやっている人も、自分なりの勝てる法則、やり方は持ってる。

岩本 そうすると香川選手も、自分のやり方、法則さえつかんでしまえばいけるということですね。

池田 たぶん、今年つかんだんじゃないですか。ここから、もっとつかみにいくべきだと思うんですよ。

岩本 一回苦しんだことで、明確につかんだ手応えはありますか?

香川 そうですね。苦しい時期でもやっぱり落ちなかったというか、それこそ自分との勝負ではないですけど、投げやりになって「ああ、ダメか」となるのは、純粋に悔しいですし、練習でアピールするのもそうですが、それに打ち克っていけました。それが徹底してできたのは、一つの経験として大きかったですね。

池田 力の抜きどころ、リラックスする方法は持っているんですか?

香川 それは、自分の家に帰ったときとかですね。

池田 家、好きですか?

香川 家にしかいないです。ほとんど外は出ないですね。

池田 そうなんですか。僕は逆で、家にずっといると、外に出たくなるんですよね。

香川 ドルトムントは周りに何もないですし、基本的にずっと家にいますね。あとは、やっぱり勝った日の夜とかは、最高ですよね。すべてから解放されるみたいな。試合に勝った日に家でリラックスしている時間が一番幸せです。それで、また次の日から切り替えてやっていく。

池田 勝つのが一番、自分がリラックスして、心が一番満足しているんですね。

香川 その時が一番、ホッとしますよね。勝った日の夜は特に。本当に一番、解放されるというか。

池田 ということは、試合に出続けないといけないということですね。

香川 もちろん、もちろん。試合に出てチームに貢献して勝つことが、最高の瞬間です。

池田 それ以外、何かリラックスする方法はあるんですか?

香川 もう、とにかく家にいることですね。

岩本 香川選手は結婚もしていません。代表の主力メンバーで結婚していない人、ほとんどいないんですよ。先日、内田篤人選手のインタビューをしたときに、「真司は(結婚)無理っすね」って言っていました。以前は「誰か見つけてあげなきゃ」と言っていたのに、この前は「無理」ということになっていました。なぜ無理になったのかを聞きたいなと。

香川 池田さんは結婚されているんですか?

池田 結婚していますよ。僕はいつも心を満タンにしておきたい人で、その状況だと自分の実力を出せる人だから。子供たちがいて、幸せな家庭でいるのが、一番、僕の心が満タンな状態。何より家族が優先。家族を満足させていると、僕が一番満タンの状態。自分の平常心というか、最高の状態の作り方を知ってるんです。子供たちの心が満タンな状態を作り出せれば、自分の最高のパフォーマンスを出し続けられるし、その状態で育てば、うちの子供たちも何かになれるのではないかなと思うから。だから僕は家族が大切です。

岩本 取材先から帰るときも、家族にお土産を買うのに異常なほど時間がかかるんですよ。「もう一軒行っていい?」「もう一軒行っていい?」って、すごくこだわって選んでいました(笑)。

池田 それが一番、自分の心が満タンになるし、家族の心も満タンにできるから。心が満タンじゃないと、子供なんてちゃんと育たないから。充足感が高ければ高いほど、パフォーマンスが絶対に出るから、その状態をどれだけ作れるか。

岩本 では、結婚をしないんだったらしないで、うまく満タンの状態を作ればいいと?

池田 心を満タンにするために(結婚が)必要だったらすればいいし、心を満タンにするために必要じゃないならする必要がないと思います。

岩本 でも、香川選手は結婚したことないから、わかりませんよね?

香川 はい(笑)。でも、もし彼女を作って良い心境になればいいとは思います。ただ、まず出会いもないですからね。日本にも2、3週間くらいしかいませんし。

岩本 でも、お見合いおばさんみたいに紹介してくる人とかいないんですか?

香川 いないですね(笑)。

池田 ここまで成功した後だと、なかなか難しいと思いますよ。野球選手にもよく言ってたんですが、「結婚するんだったら、昔からつき合っている人と結婚しなよ」って。これは絶対。何億もつかんでから言い寄ってくる女の人なんて、ロクな人がいないから。

岩本 説得力ありますね(笑)。

香川 それが理想ですよね。ウッチー(内田篤人)とか、(結婚相手が)幼馴染じゃないですか。昔のことを知っている人がやっぱりいいですけどね。

岩本 幼なじみで可能性ある人はいないんですか?

香川 いないですね……。探してはいるんですが。

池田 いや、そのうち出会うもんなんですよ。いろいろ酸いも甘いもわかっている女の人が出てくるから。だから、自然体でいるしかない。

岩本 逆に考えないでいれば、突然現れるかもしれないってことですね?

池田 だって今、心を満タンにするためにそれ必要じゃないんだから、別に必要ないんじゃないんですか。不確定要素になりますよ、きっと。

岩本 何が一番大事かってことですよね。

池田 有名になると必ず嫁を検索される。それで要するに人の品格とか考え方が見えるから。ダルビッシュ選手もいろいろと言われているけど、メンタルが強いから気にしない。そこは個人の自由にしてほしいですよね。

W杯出場権のかかった大一番、どのような心理状態で臨むのか

©荒川祐史

岩本 では、日本代表の話に戻ります。この前はアンラッキーなケガで、非常に重要な試合となったイラク戦に出られませんでした。残り2試合となったアジア最終予選は、シンプルに言えば、2試合中1試合で勝てばいいという状況です。最終予選終盤で、勝てなかったらプレーオフに回るという状況に追い込まれるのは初めてですよね。

香川 そうですね、初めてです。

池田 肩を脱臼してケガをしたとき、どう思ったんですか?

香川 「ああ、もう次は出られないな」って思いました。

池田 そういうものなんですね。僕なんかは、「これはきっと何かの試練なんだろうな」と思うようにしてます。(ケガも)良いときにやったんじゃないかなって。

香川 僕、2年連続で夏にケガしちゃっているんですよね。もし来年の6月に下がしちゃうと、W杯に出られなくなってしまうので、確かに考えさせられますね。今回のケガも防げたケガかもしれないですし。

岩本 そう考えちゃうものですか?

香川 まあ、起こったことは仕方がないですけど、ただ、やっぱり同じケガは絶対に繰り返したくないので。受け身のときにもっと考えてできたんじゃないかとか、練習というか、日々のイメージだったり……いろいろとできたのかなとは思っています。

池田 仕方がないケガは、文字どおり、仕方がないですよ。

香川 でもケガが多い選手は、絶対、自分自身に問題がありますからね。

岩本 でも、脱臼しちゃった今回のようなケガはちょっと違うと思います。アップ不足で肉離れを起こす選手は問題だと思いますけど。今回のケガは守備のときに相手ともつれてバランスを崩したものだから、仕方がないですよね。それこそ池田さんが「何かの試練」って言ったように、そういうタイミングって考えた方が良い気がします。正直、香川選手を応援している身からすると、あれだけで済んでラッキーだったとも思いますしね。

香川 そうですね、逆に膝とか足とかよりはね。そこは不幸中の幸いというか。

岩本 そこさえ治ってしまえば、トップコンディションなわけだし。シーズン始まってしまえばね。

香川 そうですね。ちょうどヨーロッパはシーズンオフだったんで。

岩本 今、どんな気持ちで代表のユニフォームを着て臨んでいるのか。香川選手にとって日本代表は今どういったものですか?

香川 やっぱり年齢を重ねて、国を背負うことの責任だったり、ここ2、3年でより感じるようになりましたし、この舞台で活躍するためにプレッシャーに打ち克つこともそうですし、それは決して楽しくはないですよね。楽しくはないですけど、そこを勝ったときの喜びは、この前のタイ戦のときもそうですが……。

岩本 すごく感情を爆発させていましたね。

香川 はい。そのためにやっているのもありますし、W杯には絶対に出たい。ブラジルでああいう終わり方をして、すごく悔しい気持ちを味わったので、必ずもう一回、あの舞台でプレーしたい。オーストラリア戦に関しては、勝つことしか考えてないです。サウジアラビア戦ではなく、オーストラリア戦で決めるんだっていうことしか考えていないですね。

岩本 これまでのキャリアで、オーストラリアって、どういうイメージですか?

香川 やはりフィジカル的に強いのと、今は前線にスピードのある選手が多くいるので、そこは気をつけないとですね。個の能力は昔より確実に高くなっていると思います。それはアウェーの試合でも感じました。でも、今回は僕たちのホームでできるので、自分たちがいかに前に出ていけるかですね。

岩本 一番慣れ親しんだ埼玉スタジアムでできるのは、大きいですね。

香川 そうですね。大きいです。

岩本 乾貴士選手が久々に代表に戻ってきましたが、乾選手と香川選手ってC大阪のときから非常に合っていました。昨日、乾選手に話を聞いたら、「僕が岬で、アイツが翼だから」という話をしていたのですが、「一緒に代表でやって結果が出せる。その可能性があることに自分はすごくワクワクする」って言っていました。日本のサッカーファンから見ると、香川選手と乾選手は漫画の世界みたいで、感覚がすごく合っている。なかなか、あそこまで合う選手はいないのでは?

香川 今まで何人も一緒にやってきた中で、自分のことを一番よくわかっていて、自分の良いところを引き出してくれるプレーヤーであることは間違いないですね。

岩本 ドルトムントの初年度と2年目のときもチームメートとの相性は良かったけど、やっぱり香川&乾のそれとは違うってみんな感じていて、今回はワクワクしています。実際、久しぶりに代表で一緒に練習をしたときは、どんな感じだったんですか?

香川 すごく楽しかったですね。やっぱり、アイツとやっていて楽しいなって心から感じるというか、純粋に思えますね。ボールを出すタイミングもそうですし、このタイミングっていうところで必ずボールを出してくれる感覚は、いつやっても一緒なので、やっぱり楽しいですね。

岩本 同時に一人のライバルでもあると思うのですが、カンプノウで乾選手が決めた2発はどう感じましたか?

香川 純粋にうらやましかったですね。やっぱり自分もバルセロナと対戦したいですし。ただ、あれで勝てなかったのが、逆にアイツらしいというか(笑)。

岩本 そうですね、それは本人も言ってました。2点目決めたときのカンプ・ノウの静まり返り方とか、すごかったですけどね。それでは、最後にオーストラリア戦に向けて一言お願いします。

香川 さっきも言ったように、いつもどおりに良い準備をして試合を迎えられたらいいなと思っています。変な欲だったりは考えないようにして、それはファンが考えてくれたらいいと思うので、そこは徹底して、それこそ平常心でいきたいなと思っています。

池田 今度のオーストラリア戦、見に行きます。今日はありがとうございました。

香川 ありがとうございました。また、ドルトムントでもお会いしましょう!

35歳まではヨーロッパの第一線でプレーしたい。香川真司×池田純(前編)

これまでドルトムント、マンチェスター・ユナイテッドと世界のトップクラブでプレーしてきた香川真司選手、横浜DeNAベイスターズ社長時代に実現不可能と言われた収支黒字化を現実にした池田純氏。スポーツシーンのトップランナーである2人の対談が今回実現した。前編では2人が背負うプレッシャーとの向き合い方、そして香川選手が描く自身の未来像を語った。

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VictorySportsNews編集部