ダルビッシュとレンジャーズがお互いに示した感謝と『さよなら』

レンジャーズへの惜別、感謝を表しつつ、ファンが納得する形でドジャースでの初登板前にけじめをつけたことは、ダルビッシュの移籍に対して、レンジャーズファンがSNSで前向きな言葉を投げかけていることからもよくわかります。

「僕がどう思うかというより、トレードと言われたら行くしかないし、それに対してプロとして適応するだけ」

7月31日、トレード期限間際の突然の移籍に際しても極めて冷静な対応を見せていたダルビッシュ投手ですが、今回の移籍でその評価はうなぎ上りです。横浜DeNAベイスターズ前社長である池田純氏もダルビッシュ投手のプロフェッショナルとしての対応を絶賛します。

「今年の3月に対談でお会いしてからさらに注目して動向を追っていましたが、もうダルビッシュ投手の時代ですよね」

ダルビッシュ投手と池田氏の対談はこちら⇒『ダルビッシュ有のプロ野球改革論「いつか、日本球界に戻りたいなって思っています」』

移籍に至る過程、決定後の新天地での振る舞い。ダルビッシュ投手の一挙手一投足すべてがニュースになりました。

移籍期限10分前のツイート

特に話題になったのが、ドジャースでの初登板前日となる8月3日付のダラス・モーニング・ニューズへの全面広告掲載です。

「THANK YOU RANGERS FANS.(ありがとう、レンジャーズファン)」という大見出しから始まるこの広告は、日本からやってきた2012年からの5年半の感謝を率直に表したものでした。

「アメリカの慣習的な部分もあると聞いていますが、このダルビッシュの全面広告に対して、(テキサス・)レンジャーズも日本の読売新聞に返礼となる広告を出しました。なぜ読売?とは思いましたがそれはさておき、これでお互いの『さよなら』がしっかり終わりましたよね」

移籍する選手が地元ファンヘ新聞広告で感謝の意を示すことは、過去にも何例かあるようですが、球団がそれに応じて球団、ファン名義で広告を出すという対応は異例中の異例。ダルビッシュ投手は、一歩間違えれば火種になりかねないシーズン途中での移籍というデリケートな問題に対して、見事な対応を見せました。

レンジャーズへの惜別、感謝を表しつつ、ファンが納得する形でドジャースでの初登板前にけじめをつけたことは、ダルビッシュの移籍に対して、レンジャーズファンがSNSで前向きな言葉を投げかけていることからもよくわかります。

特筆すべき“切り替え力”が移籍後のパフォーマンスにもプラスに

池田氏が特に指摘したのは、ダルビッシュ投手の“切り替え”についてです。

「やっぱり一番すごいのは、ドジャースに行ってからの切り替えです。ドジャースに移籍しての初登板の投球は素晴らしかったですよね。突然の移籍は確かに悲しかった。でも移籍した後は、与えられた場所でしっかり結果を残していくんだ! もう自分はドジャースの人間なんだ! 自分が身を置いているのはそういう世界なんだ! という意志が投球に表れていました」

移籍前の登板では10失点を喫したダルビッシュ投手でしたが、ドジャースでの初戦を7回無失点、白星スタートで飾ると、2戦目のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦でも5回を5安打2失点、自己最速タイとなる99マイル(約159キロ)を記録、2戦連続で2桁奪三振をマークするなど、心機一転、新天地で躍動しています。

「試合結果もそうですけど、この世界でしっかりプロとしての“価値”をつくっていますよね。着ているユニフォームだけでなく、脳の中身も“レンジャーズのダルビッシュ”から“ドジャースのダルビッシュ”にスパッと切り替わっている気がします」

池田氏が指摘するのは、移籍前後のダルビッシュのTwitterでの発言と、移籍決定後の発言の変化です。

「契約しているアシックスもドジャースカラーのブルーのグローブを早々に用意して、ダルビッシュ投手もTwitterで『アシックスさん仕事早すぎ!』と言っていたり、聖子夫人も『どんなユニフォームきてもパパはパパです。似合ってます』とツイートしていたり、日本のテレビ番組で高校時代のマウンド上でのつぶやきを読唇術で取り上げられたことに対して『絶対言ってないです(笑)』と反論したり、もう完全に切り替えているんですよ。プロとして結果、成績を残すために、切り替える。これがしっかりできるというのは、プロ野球選手、スポーツ選手に限らず、どんな人であっても仕事でしっかり結果を残していくためにすごく重要なことだなとあらためて学びました」

移籍にまつわるニュースはもちろん、Twitterでのテレビ番組への反応が「ニュース」になるダルビッシュ投手。ちなみに、このテレビ番組にまつわる話題は、放送局側が本人や関係者に謝罪する事態にまで発展しました。さらに、「読唇術って信用できないなと思いました」、「常に『あくまで読唇術で本当に本人が言っているかはわかりません』みたいなのをテロップで出しておかないと信じてしまう人多いと思います。言ってないような事を言ったように放送してたら新聞とかでよくある偽造記事となんら変わらないと思うんですよね」という投稿も話題を呼び、その成績だけでなく、発言でも注目を集めるダルビッシュ投手は、アスリートとしての影響力、その価値を自ら高められる希有なアスリートといえそうです。

取材協力:文化放送
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文化放送「The News Masters TOKYO」(月~金 AM7:00~9:00)
毎週火曜日レギュラー出演:池田純
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「The News Masters TOKYO」

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VictorySportsNews編集部