公募の裏にある、「スポーツ界全体を変革したい」という想い

――今回、Bリーグでは広報部長およびマーケティング部長を公募することになりました。その背景を教えていただけますか?

大河正明(以下、大河) Bリーグの1年目を振り返りますと、前年に比べて多くのお客さまにアリーナまで足を運んでいただきました(※編集部注:年間入場者数は約226万人)。特にB1においては約50%の成長となり、収入規模も大きくなりました。これ自体は非常に素晴らしいことだと思いますが、僕らの夢には、スポーツ界全体を変革したいという想いがあります。

――それはどういうことでしょうか?

大河 もともと日本のスポーツ界は、学校の先生を中心にボランティアでやっていただくような時代が長く続いていました。その後も、スポーツ界で働いている多くの人が決して高いとはいえない給料で働いているのが現状です。僕らはそういった日本のスポーツ界の姿を変えていきたいと考えています。スポーツ界が産業としてもっともっと華やかになり、そこで働いている人たちがきちんと活躍できるような世界にしたい。スポーツ界はいわばベンチャー企業です。特にBリーグは、長い間2つのリーグに分かれていたものがようやく1つのプロリーグとして生まれ変わったばかり。何かモノをつくるという業態ではありませんし、僕らにとっての財産というと、やはり“ヒト”ですからね。

 そのためにはやはり、事業を大きくしていく必要があります。僕らはプロスポーツの一つとしてプロ野球やJリーグと競争するというつもりはなくて、例えばディズニーランドに遊びに行く人たちに、同じエンターテインメントの一つとして見てもらえるようになりたいと考えています。

――エンターテインメントを提供する組織として、さらにその質も量も伸ばしていきたいということですね。

大河 Bリーグでは、「2020年に入場者数300万人」を目標に掲げています。ですので、もちろんスポーツに対する愛情はあったほうがいいですが、それ以上に、多くのお客さまにアリーナへと見に来ていただくという観点から、BtoC領域の経験や知見を生かしていただける方を求めています。また、若い組織でまだまだ完成されていない点も多くありますので、自らルールをつくりながら周りを引っ張っていけるようなリーダーシップのある人に来ていただけると、Bリーグの次なる飛躍につながると考えています。あとは、南社長のスポーツへの強い情熱、ビズリーチの素晴らしい公募実績などが、今回の公募の背景ですね。

南壮一郎(以下、南) Bリーグ事務局長の葦原(一正)さんとは、私が楽天イーグルスで働いていたころ(※)に葦原さんがオリックス・バファローズで働いていたというつながりがありました。先日、ビズリーチで「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の幹部候補の公募を担当させていただき、非常に大きな反響と成果があがったことを知った葦原さんから相談を受けました。Bリーグのさらなる変革、また次のステージへの成長のために、優秀な経営人材に来てもらって、組織としてさらに拡大・強化していきたい、と。

 日本のバスケ界やBリーグを最近見ていると、組織構造上のさまざまな困難を乗り越えながら、新しい時代を迎え、認知度の向上や新たなファンの獲得のためにさまざまな広報やマーケティング戦略にチャレンジする姿は素晴らしいと勝手に感じていました。私自身、スポーツを愛する一人のファンとして、引き続き、スポーツ観戦という体験型のエンターテインメントの新しい形を創造していってもらいたいと思います。Bリーグは、後発のリーグだからこそ挑戦できることはたくさんあると思いますし、今後は、プロ野球、Jリーグ、さらには2020年の東京オリンピックにもいい影響を与えていけるような存在になるのではないかと感じています。
(※編集部注:南氏は楽天イーグルスの創設、および球団運営に携わっていた)

(C)The Asahi Shimbun/Getty Images

「常識にとらわれず、新しいことにチャレンジしてほしい」

――今回公募するのが、広報部長とマーケティング部長という2つのポジションになります。なぜこの2つのポジションなのでしょうか?

大河 先ほども申し上げた、「2020年に入場者数300万人」という目標を達成するためには、「Bリーグとクラブ・選手のさらなる認知向上」と「1試合あたりの平均入場者数の増加」が課題となってきます。現在、Bリーグの認知度は65%で、2015年の41%から上昇したものの、プロ野球の90%、Jリーグの87%には届いていません。これまでバスケの試合を見たことがない方にも来場してもらうためには、やはりBリーグのことをもっと知ってもらうことが必要になります。今シーズンは、認知度を75%に上げていくことを目標にしています。ですので、Bリーグと全国36クラブや選手を生かし、プロモーションを軸とした“攻めの広報”、“攻めのマーケティング”ができるといいなと思っていますね。

南 今回の公募を企画する段階の話し合いで役割の要件定義をしていったのですが、これまで以上に入場者数を伸ばしていくためには、特に若い人やライト層の方々に、「とりあえず一回行ってみようかな」という興味を持ってもらうことが重要なミッションの一つとして決まりました。そのために、オフライン、オンラインを問わずに広報やプロモーション、マーケティングの施策を立案、実行できる方にご応募いただきたいと思います。

――Bリーグの認知度や興味・喚起の向上を図る広報戦略と、そこから実際に試合へと来場してもらえるマーケティング戦略、どちらがどちらというよりもニコイチのようなイメージですね。

大河 そのとおりです。今の世の中って、例えばテレビ番組や選挙もそうですが、50歳以上の方が見る傾向が強いじゃないですか。それはもちろん、テレビを見るのも選挙に行くのも50歳以上の方のほうが人口構成比として多いからなんですが、Bリーグではもっと若い人たちが元気に活躍できるような世界観を訴えかけていきたいと考えています。そのためにも、若い人たちを惹きつけられるような、かっこよくて、おしゃれで、クールで、革新的なブランドでありたいなと。僕らは若い組織ですし、これからもずっと若い組織でいたいと思うので、とにかくもっともっとはみ出たようなことをやっていくことが大事だと思っています。常識にとらわれず、新しいことにも果敢にチャレンジしていってほしい。どんなやり方でもウェルカムですね。

(C)荒川祐史

スポーツビジネスは、あくまでも“ビジネス”

――日本のスポーツ界における大きな課題の一つに、“人材の非流動性”が挙げられますが、今回の取り組みはそうした現状に対してどんな意義があるとお考えでしょうか?

大河 僕はもともと銀行で働いていましたし、川淵(三郎)さんや葦原(事務局長)も他の業界からスポーツ界に入ってきた人たちです。スポーツ界はその中でタコツボ化しているという側面はあると思いますし、もっともっとスポーツ界と他業界で人材の交流はあったほうがいいと思います。

南 ビズリーチの企業理念は、「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」ことです。そもそも、これまでスポーツ業界の経営ポジションが表に出ることは少なかったですし、今回のようなスポーツ業界における重要な求人情報が経営人材の皆さまの耳に届いていません。耳にさえ届けば、今回のような求人案件に興味を持つ方がたくさんいると思いますので、募集する側にとっても、経営人材側にとっても、本当にもったいない状況だと思います。それゆえ、われわれの一番の役割は、より多くの経営人材に、自身のキャリアの選択肢として、今回の公募の情報をまずお届けしたい、知ってもらいたいということにあります。

 政府が掲げている「人生100年時代」という言葉にも表れていますが、キャリアを1社で終えることはまれになっていくと思いますし、これから自分自身で主体的にキャリアをつくっていく時代になっていきます。そんな状況のなか、キャリアの選択肢や可能性を広げるチャンスとして、Bリーグという題材は、マーケティング的にも、広報的にも面白いと思いますし、ダイヤの原石のようにも感じます。全国各地域に根ざすことを目指すこの素晴らしいコンテンツ、全国1億3000万人に向けたブランドを、どう発信しながらもっともっと世の中に影響力を高めていくのか。こんなに面白くてエキサイティングな仕事はなかなかあるものではありませんし、この経験は人生を振り返ったときに思い出すキャリアのチャンスだと思います。

――スポーツビジネスは今後ますます注目を浴びていく分野だと思いますが、どういった人材が求められているとお考えですか?

大河 例えばサッカーの場合、Jリーグが創設されてから25年で、38都道府県54クラブが生まれ、全体で1000億円ぐらいの収入規模になりました。Jリーグができたことで競技人口が増え、サッカースクールやフットサル場が全国にできた。そこでプレーする人たちがユニフォームやシューズを買う。こうした周辺産業も合わせていくと、相当な規模になると思います。プロスポーツは自身の持つコンテンツや興行だけでなく、非常に多くの業種にも関連しているわけです。これはバスケも同じこと。例えば、アメリカのNBAは収入規模でみると一流企業です。NBAのような一流のリーグやチームが出てくることで、さらにその影響というのは大きくなると思います。そこを目指していきたいですし、そういう発想を持った人材を求めています。

南 スポーツビジネスは、何か特別なものではなく、あくまでもスポーツを題材にしたビジネスという捉え方を持つことが重要だと勝手に思っています。ですので、スポーツ界での勤務経験がなくても、さまざまな業界、また職種において経験を積み、そして活躍したビジネス界のオールスターチームがスポーツ業界に集まってきてほしいと考えています。

 また、さまざまな考え方はありますが、スポーツ界に優秀な人材が集まるためにどうなればよいかと考えてみると、優秀な経営人材がスポーツ界に流入し、スポーツ界を発展することに貢献した後に、その経験や学びを生かして、他業界でさらにまた活躍するような人材が増えていってほしいです。そうすれば、スポーツという機会を生かした仕事をすることが、キャリアアップにつながることを世間にアピールすることができますし、結果的には、どんどん優秀な経営人材が自らを磨きにスポーツ界に挑んでくると思います。どの業界でも、経営者の皆さまは「人が重要である」「優秀な人材を集めることが勝負の分かれ目である」とおっしゃいます。だからこそ、スポーツビジネスの世界が、優秀な人材が自分のそれまでの経験やスキルを試してみたり、促進させるためのキャリアの機会になったりすることで、スポーツの未来の発展が見えてくるのだと思っています。

大河 まったく同感ですね。もちろんBリーグでキャリアアップして事務局長やチェアマンになりたいということでもいいと思いますし、ここをキャリアアップのステップにして次につなげてもらうということでもいいと思います。そういう人たちが新鮮なものをつくっていける。どんなスポーツでも戦術はあると思いますが、ずっと同じ戦術だったら選手も飽きてしまいますよね。新しい戦術を取り入れていくことでチームが活性化していくという。ちょっと違いますか?(笑) でもそういう発想だと思います。

南 組織の新陳代謝も大事だと思います。勝手な持論ですが、特定分野における自身のアイデアや感性は有限であり、どんどん劣化していくと思っています。5年、もしくは10年を一つのサイクルと考えて、優秀な人材がいい意味でスポーツを利用する。自分の持っている経験やスキルを思い切って表現して、キャリアアップを図っていけるような業界という認識が広がれば、スポーツビジネスの世界はもっと活性化していくと思います。

(C)荒川祐史

Bリーグの組織をゴルフで例えると、“ドライバーでマン振りできる”

――大河チェアマンが最初に、「スポーツ界全体を変革したい」とおっしゃっていたように、Bリーグがその旗印となりたいということですね。

大河 そうですね。僕らBリーグは、競技経験や年齢という尺度はありませんし、優秀な方が自由に働きやすい環境だと思います。

南 オフィスで働いている方々の雰囲気もそうですし、何よりもチェアマンがお選びになる言葉や表情が若く明るいことに驚きました。どの時代においても、明るさや若さこそが世の中を変えていくエネルギーになってきましたし、今回募集されている広報やマーケティング部長というポジションは、その人の生き様や魂が発信されていくことと同義だと思いますので、今働いている読者の方で、自らを明るく自由に表現できる人に応募してもらいたいですね。

大河 ゴルフでいうと、うちはフェアウェイがすごく広いから。組織って、だんだん画一化されていって、フェアウェイがどんどん狭くなって難しいコースになる。うちはバンカーもOBゾーンもありません。フェアウェイどこにでも、好きなように自由に打ってもらっていいですよ(笑)。

南 チェアマンがそうおっしゃるなら、ドライバーでマン振り(目一杯の力で打つこと)できますね(笑)。


最後はユニークな例えで、Bリーグで働くことの魅力を伝えてくれた大河チェアマン。次回は、バスケという競技の持つ可能性と、Bリーグの未来について語り尽くす。

(後編に続く)

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[対談・後編]大河チェアマンが語るBリーグの未来 必要なのは「居酒屋の飲み会をアリーナでやってもらう」という発想

2016年、長きにわたり待ち望まれていた新プロリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」が華々しく開幕した。開幕戦では全面LEDコートの演出を実施し、試合情報の入手からチケット購入までをスマホで手軽に利用できる仕組みを導入するなど、1年目のシーズンから“攻めの姿勢”を見せてきたBリーグ。「2020年に入場者数300万人」という目標に向け、歩みを止めない彼らが次に打つ手、それが経営人材の公募だ。 前編では、Bリーグ・大河正明チェアマンと、公募を実施する株式会社ビズリーチ代表取締役社長・南壮一郎氏に、今回公募する人材に対する期待や、この取り組みの背景にある壮大な夢を語ってもらった。後編となる今回は、バスケットボールという競技の持つ可能性と、Bリーグの未来について語り尽くした。そこには、スポーツビジネスの神髄ともいうべき数々の金言があった――。(インタビュー・構成=野口学 写真=荒川祐史)

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<了>


[PROFILE]
大河正明(おおかわ・まさあき)
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事長
1958年生まれ、京都府出身。中学でバスケットボールを始め全中4位。京都大学卒。81年三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。95年日本プロサッカーリーグ出向、総務部長。鎌倉・町田等の支店長を経て、2010年退行。同年日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に入局し、12年に理事、14年に常務理事就任。15年日本バスケットボール協会専務理事、事務総長(現任は副会長)、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)理事長。

南壮一郎(みなみ・そういちろう)
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長
1976年生まれ。99年米タフツ大学を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に従事。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーに。チーム運営や各事業の立ち上げをサポートした後、GM補佐、ファン・エンターテイメント部長、パ・リーグ共同事業会社設立担当などを歴任。その後、株式会社ビズリーチを創業し、2009年に即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」(https://www.bizreach.jp/)を開設。現在は戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」(https://hrmos.co/)や求人検索エンジン「スタンバイ」(https://jp.stanby.com/)なども展開し、インターネットの力で、日本の雇用流動化と生産性向上の支援に取り組む。

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野口学

著者プロフィール 野口学

約10年にわたり経営コンサルティング業界に従事した後、スポーツの世界へ。月刊サッカーマガジンZONE編集者を経て、現在は主にスポーツビジネスの取材・執筆・編集を手掛ける。「スポーツの持つチカラでより多くの人がより幸せになれる世の中に」を理念とし、スポーツの“価値”を高めるため、ライター/編集者の枠にとらわれずに活動中。書籍『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)構成。元『VICTORY』編集者。