FIFAワールドカップロシア大会が開幕しても、私はいつもと変わらず、東京でデスクワークをしていた。良い処取りをしようという魂胆で6月末からのロシア渡航は決定事項の中、続く連日の好試合に酔わされ、気持ちがフライングしていたことは否めなかった。神経が麻痺し生活サイクルが狂ってしまう4年に一度のダメダメ月間、しかしそれがフットボールファンの性なのだろう。

『えっ?!まだ買えるのか??』

それは対コロンビア戦の勝利で列島の盛り上がりが爆発する前のことだった。ふとチケットの売れ行きが気になり、FIFA公式販売サイトを覗いてみて興味深い事実を眼にすることとなる。日本代表の予選3試合は綺麗に売れ残っていたのだ。
生活を切り詰めながら貯めた軍資金を握りしめロシアへ集うフットボールホリックは勿論、開催国ロシアのファンまでもが、FIFAランク60位代のアジア代表の試合にはそこまで興味がなく、高額なチケットを買ってまでしてスタジアムへ観には行かないということなのだろう。日本人としてはえぇー?! と少々寂しい気持ちになってしまうが、世界ではこれが現実なのである。

『でもチケットが買えるなら、行ってみようかな』

自らの渡航計画には組み込んでいなかった日本代表戦、しかし「現地で我らがサムライブルーを鼓舞するファンが多くないなら自ら行くしかないな」という、今更ながら勝手な使命感に駆られた勢いでチケットを衝動買いしてしまうこととなる。その後の渡航日程を早める調整をすることが大変になることなど気にもせずに。

ヴォルゴグラード行き搭乗ゲート    (C)佐々木裕介ヴォルゴグラード行きの飛行機に乗り込む日本人サポーター   (C)佐々木裕介ザビワカの置物      (C)佐々木裕介FIFA FAN FESTA前        (C)佐々木裕介試合前に記念撮影するポーランドサポーター   (C)佐々木裕介スタジアム外観風景    (C)佐々木裕介

日本代表、史上初の8強進出をかけた一戦も残券あり!?

『虫は飛んでいないが、暑過ぎる』

旅の拠点としていたモスクワから試合会場のあるヴォルゴグラードまでは試合当日、臨時便を合わせ各社延べ10本以上の直行便が飛んだが流石にどの便も満席、筆者が搭乗した朝一の便も日本人で溢れていた。
ヴォルゴグラード国際空港へ降り立った時点での気温は33℃。試合開始時にはより上昇することは想像に容易かったが、日本代表が執った試合運びが世界を巻き込み、気温以上に熱い議論を生むことになることまでは想像しい得なかった。
日本代表が攻める意思を捨て、自陣でのボールキープを始めた瞬間、スタジアムは強力なブーイングで包まれた。その殆どがローカルファンからのものだったように思うのだが、「無気力な試合を観に来た訳ではない」と言わんばかりに終了のホイッスルを待たずして席を立ち始めたファンも多かった。趣旨は違えど、それはまるで東京ドームの7回裏の光景を連想させる画であった。

筆者、いまでこそ偉そうに能書きを書かせてもらっている身だが、98年フランス大会から現地観戦を継続するいちフットボールファンでもある。
そんな私が伝えたいこと、それはワールドカップで日本代表戦を観ることは想像されている程に大変なことではないということである。確かに休暇を得るための仕事や家庭内での調整は必要だろう。しかし観戦チケットは事前手配が出来なくても意外と現地でどうにかなるものだ。航空券や宿手配然り、ネットインフラが整う今日において、探せば安価な代物と出会うこともあるからだ。

日本代表は現地時間7月2日午後9時に、ヤロスラヴリ州ロストフでベルギー代表と相まみえることとなった。この原稿を執筆している現時点では、その試合のチケットも公式サイトで絶賛販売中である。
日本サッカー史上初となる、ワールドカップベスト8の椅子を掛けた世紀の一戦、要はその歴史の証人になるにはまだ間に合うということだ。
現地へ出向き、自らの肉声で“バモ、ニッポン!”と叫びたい気持ちをお持ちであれば、先ずはFIFA公式販売サイトを覗いてみていただきたい。中には筆者と同じく、後先大変になることも考えずに衝動買いしてしまう方もいらっしゃるだろうが、それはそれで良き縁なのである。

ヴィレッジ・ピープルの名曲“Go West”の歌詞のように“西”へ飛んでみようじゃないか。そこには想像以上の満足感が得られるだろう場所があるのだから。

声高らかに国歌を歌うポーランドサポーター    (C)佐々木裕介選手入場     (C)佐々木裕介日本人から鉢巻をもらい「必勝」の意味を聞きに来たファン  (C)佐々木裕介

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佐々木 裕介

1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営む傍ら、趣味が嵩じてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行うフリーランスライター。 また自らを“フットボール求道人”とも呼ぶ。また「スポーツ✕トラベル」の素晴らしさを伝える“スポーツツーリズムアドバイザー”としても活動中。