NCAAは遠くない存在に

横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏は、「今野、NCAAへ」というニュースを目にして、ふたつの驚きを感じたという。

「ひとつは、『日本の女子バスケットボールにそんな有力な選手が登場したのか』ということ。そしてもうひとつが “NCAA”(全米大学体育協会)という言葉がニュースの見出しになるくらい一般化してきていることです。いまの高校生にとって、NCAAは遠い存在ではなくなっているんでしょうね。日本の高校で育った将来有望なアスリートがどんどんアメリカ、海外へと渡っていく時代がもう始まっているのかもしれないですね」

いま日本のプロ野球界が抱えている大きな問題は、有力選手、人気選手がより高いレベルを求めて、MLBに行ってしまうことだ。ダルビッシュ有投手、田中将大投手、前田健太投手、そして大谷翔平選手。このシーズンオフには菊池雄星投手もメジャー挑戦を表明している。高年俸に惹かれるだけならともかく、大谷選手は年俸を大幅に下げてまで、メジャーでの道を選んでいる。もしこの流れが進んでいけば、日本のプロ野球はMLBのファームのようになってしまわないか懸念される。日本の高校生がNCAAに進学するということは、他のスポーツでも、しかも高校生レベルで同じ現象が起きようとしていることのあらわれかもしれない。

「アスリートがより高いレベルで勝負したいと考えるのは当たり前だと思います。ましてやNCAAは奨学金の制度も充実していて、学業をきちんとやることを義務付けています。NCAAでは、どんなスター選手でも学業で優秀な成績をおさめられなければ試合に出ることもできない。つまり、NCAAで活躍するということは、基本的にその選手が“文武両道”であることを意味しています。もしそのアスリートがプロへの道を歩まなかったとしても、引く手あまたの人材として、未来は明るい。もし自分が高校生で、NCAAから声がかかるようなアスリートだとしたら、迷わずNCAAへの進学を選ぶと思います」

日本版NCAA「UNIVAS」

残念ながら日本の大学スポーツは、NCAAのように充実した環境にあるとはいえない。今年は、日大アメフト部や至学館大学レスリング部など、大学スポーツ界の問題点が明るみになるような出来事もあった。文武両道どころか、「競技だけやっていればOK」という推薦制度や奨学金制度も多いと聞く。日本のプロ野球選手にも大卒の選手は多いが、「4年間毎日練習していたが、授業には1回も出たことがない」という話も少なくない。彼らはプロになれたからいいが、それが叶わなかったとしたら18歳からの4年間、野球しかしてこなかった人間になってしまう。これでは大学を卒業した途端、進路に困るようなことになってしまうのではないだろうか。

そんな大学スポーツをめぐる状況を変えようと来年発足するのが、日本版NCAAである「UNIVAS」だ。

「日本人選手が世界レベルで活躍することは、もちろんうれしいです。でも今のままでは、日本の大学でスポーツをがんばろうという若者が減ることになりかねません。UNIVASは、とにかくスピーディな改革で、日本の大学スポーツをより魅力的に変えていくべきだと思います」

日本の大学スポーツ界が“空洞化”してしまわないように、UNIVASの構造改革に期待したい。


[初代ベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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