■東京五輪への想い

かねてから東京五輪出場に並々ならぬ意欲を見せているのが元日本代表の本田圭佑だ。昨年12月にわずか1カ月半だけ在籍したフィテッセ(オランダ)を退団。一部ファンからは「失礼だ」「逃げ出した」などと批判が噴出したが、自身のツイッターで「フィテッセから逃げ出したと言っている人達。五輪に選ばれるわけないと言ってる人達。ボタフォゴのオファーも客寄せパンダと言ってる人達。本田圭佑の上から目線で自信満々な感じが嫌いな人達。本当にありがとう。心からあなた達に感謝してます。そして愛してます」と独特の言い回しで対応してみせた。五輪イヤーに入って、海外では7クラブ目となるブラジルの古豪ボタフォゴと契約。本田にとって初めて南米大陸のクラブでプレーすることとなった。

本田は、本気でW杯優勝を目指していた。だが、自身3度目のW杯となった2018年ロシア大会は16強止まり。「W杯は僕自身最後になる。やれることはやった」。ベルギーとの死闘に敗れた後、W杯に別れを告げた。再び追う夢が見つかったのは、その年の8月。「東京で(五輪が)あることが一つと、世界一を懸ける必要があり、W杯の代わりになるのは五輪しかなかった」。昨年、所属先が見つからない苦しい時間を過ごす中でも、五輪への思いが本田を突き動かし続けた。

問題は森保監督が、本田を必要としているかだ。指揮官が本田に関して直近で言及したのは、昨年12月4日。当時のフィテッセでの活躍ぶりを問われ、「プレーのコメントは、控えさせていただく。出場している試合は全てチェックしている。東京五輪を目指してプレーしてくれている選手であれば、全ての選手が選考の対象だと考えている」。期待を寄せているようで、当たり障りのない答えでかわしたとも取れた。だが、本田の心は折れない。その数日後。「何が必要なのか、アドバイスなど連絡してほしい」。メディアを通じ、森保監督へ自らメッセージを送った。

本田は6月で34歳になる。その経験値は言うまでもないが、選手としてはもう下り坂に入っている。中2、3日の厳しい日程で戦う五輪で、十分な戦力となれるのか。一方で、W杯ロシア大会では3試合全てに途中出場ながら1得点1アシスト。日本人初のW杯3大会連続ゴールを記録し、周囲を黙らせるのに十分な実績を残してみせた。

「見返したろ、マジで。全員、何回俺に見返されたら気が済むんか、分かってないみたいやから」。昨年11月、自身のインスタグラムで東京五輪への思いを英語で伝えた後、興奮した口調でこう叫んだ。果たして今夏に「見返す」舞台が、本田に訪れているだろうか-。

■森保体制、OA枠候補は

森保体制の活動を振り返れば、OA枠の最有力候補に挙がるのは柴崎岳だろう。A代表ではボランチとして絶対的な地位を確立している。昨年6月の南米選手権では、東京五輪世代が軸のチームで主将を務め、1次リーグの全3試合にフル出場。攻撃のほとんどが柴崎を経由して始まり、別格の存在であることを示した。練習では常に先頭に立ち、練習後には森保監督と何度も真剣に話し込む場面があるなどリーダーとして指揮官からの信頼は厚い。南米選手権にはいなかった五輪世代の冨安、堂安とはA代表でプレーしており、U23代表に一番違和感なく溶け込める存在と言える。

A代表で不動のエースとなった大迫勇也も、有力視される。五輪世代のFWは上田綺世と小川航基がしのぎを削るが、1月のU23アジア選手権では、ともに迫力を欠いた。得点力、ポストプレーの精度など、どれをとっても大迫がいれば頼もしい。所属先のブレーメンも昨年まで五輪への派遣に消極的な姿勢だったが、今年に入って五輪出場を容認すると表明。金メダルを目指す日本にとって、一気に風向きが変わった格好だ。

残る1枠は難しい。サイド攻撃の迫力を求めるのであれば酒井宏樹が適任だろう。A代表では不動の右サイドバックとなったが、所属先のマルセイユでは左もこなす器用さを持つ。センターバックであれば、吉田麻也や昌子源か。A代表で主将を務める吉田は、ロンドン五輪でOAとして加わり4位に入った経験がある。2月に入ってG大阪へ電撃移籍した昌子は、日本復帰を決断する要因にもなった足首のけがが完治するか心配だが、昨年のW杯ロシア大会では、唯一国内組で先発して奮闘した姿は記憶に新しい。

「五輪世代の選手が力をつけてOAの実力と経験はいらないと判断した場合は、五輪世代で出場することも選択肢として考えていきたい。南米選手権に参加したときに、経験の浅い選手と、日本代表の常連として戦ってきた選手たちをミックスしたが、あの時点ではOAとなり得る経験のある選手たちの存在は非常に大きく、その選手たちから若い選手がどう影響を受けて成長していくのかを楽しみにしつつ、経験のある選手たちの存在というものも確認させてもらった。今後のOAの招集については、できれば毎回の活動でしたいが、それはレギュレーション上できることではないので、できるタイミングがあれば考えていきたい」。昨年12月の森保監督の言葉だが、U23アジア選手権の結果を踏まえれば、五輪本番でOA枠を使わないという選択はしないだろう。仮に3月にOA枠の選手を招集し、うまくチームが機能すれば、森保監督の解任論が落ち着く可能性もある。ただ、結果がその反対となれば、今度こそ厳しい立場に追い込まれる。

そう考えると、現状試合から遠ざかっている本田の招集を森保監督が選択する可能性は限りなく低いと考えざるをえない。少なくとも本田はボタフォゴで試合に出ることが求められるが、ブラジルの名門で活躍できるか。まずはそこに注目したい。


VictorySportsNews編集部