1988年、当時12歳の池田少年は、誕生したばかりの東京ドームで野球観戦をしたのだという。
「室内で野球が行えるということだけで大きな話題でしたからね。何もかもが最新ですごい球場だなと思いました。でも30年以上たった今でもほとんど変わってない印象ですよね。水道橋の駅から見た緑色のネオンサインも昔のままですからね」
この旧態依然とした東京ドームに苦言を呈しているのは、株式会社東京ドームの9.6パーセントの株を所有する香港のファンド、オアシス・マネジメント・カンパニー。「東京ドームシティを訪れてみると、まるで過去に戻ったかのように感じます。主要なアトラクション、球場の設備、施設の利用料金は長年にわたってほとんど見直されていません」という声明とともに、デジタルサイネージやネーミングライツの採用などの施策を提案。すべてを実施することで約71億円の利益の上積みが可能だとしている。
「東京ドームは、プロ野球が放映権料で成立していた時代につくられた球場です。当時は、巨人戦の放映権料が1試合1億円と言われていた時代ですから、大げさにいえばお客さんが入らなくてもじゅうぶんに儲かっていた。球場でお客さんを“おもてなし”する理由がなかったんです。その後、野球人気が低下して、入場料が主たる収入源になると、新しく造られるスタジアムはお客さんのことを考えるようになっていったんです」
2011年、池田氏が横浜DeNAベイスターズの社長に就任したときの横浜スタジアムも旧来型のスタジアムだった。
「1978年にできたスタジアムですから古いし、小さいし、きたない。これではお客さんも集まらないと思い、どんどん改革を行いました」
トイレやコンコースを改修し、飲食店もリニューアル。フェンス上部にリボンビジョンを取り入れることで広告収入をあげ、さらには飲食店も改革。オリジナルビールなどを発売することで収益性をアップ。花火やレーザー光線など、観客が喜ぶ演出も積極的に採用した。
「球場は大きなメディアなんです。これを利用しない手はない。たとえばディズニーランドも大きなメディアじゃないですか。あの場所が魅力的になることで多くのコンテンツが売れるし、関連グッズも売れる。だからディズニーランドはどんどん投資をして進化しているんです。東京ドームは、野球以外でもかなりの利益をあげている会社です。シーズンオフはイベントが目白押しだし、放っていてもかなり儲かる。でも外資の株主となると、それでは満足してくれない。日本を代表するドーム球場ですから、そろそろ進化してもいいんじゃないかと思います。そうすることでジャイアンツの人気もふたたび盛り上がる可能性もあるんじゃないでしょうか」
いまだ開幕の見通しが立たないプロ野球界だが、スタジアムの付加価値を高めることで、コロナ騒動も関係ないほどの人気を確立できるかもしれない。
取材協力:文化放送
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文化放送「池田純 スポーツコロシアム!」
月曜後6・45〜7・00、Podcastで拡大版配信中
パーソナリティ:池田純
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外資系ファンドからの提案で東京ドームが最新型に進化する!?
日本初のドーム型球場として誕生した東京ドーム。1988年の当時、最新設備を備えていたスタジアムも30年の時を経て、いまや旧式ドームといってもいいレベルで、外資系の株主からは改革を求められているという。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏は、かつて横浜スタジアムを大幅に進化させた実績を持つ。彼は現在の東京ドームをどんなふうに見ているのだろうか?
(C)Getty Images