4月下旬、国際プロサッカー選手会(FIFPro)が新型コロナウイルスによる影響で、うつ病の症状を示す選手が急増しているとの調査結果を公表した。調査は、イングランド、フランスなど16カ国・地域の男女プロ選手を対象に実施。男子1134人と女子468人のそれぞれ13%、22%に無気力などの症状がみられたという。これは、コロナ禍以前の約2倍の数字になるという。

「プロスポーツ選手、アスリートは個人事業主ですから、活躍できなければ収入が下がるし最悪クビにもなる。そのプレッシャー、ストレスは大変なものです。私がDeNAベイスターズの社長だったときも、豪快なイメージの数億円プレイヤーが打席に立つ前にベンチ裏でプレッシャーで嗚咽をもよおしたりしているのを見たことがあります。試合どころか練習やトレーニングもままならない状態では、世界中のアスリートが相当なストレスを抱えているのは間違いないと思います」

埼玉ブロンコスのオーナーでもある池田氏は、積極的に所属選手とコミュニケーションをとることで、彼らの不安の解消につとめているという。

「バスケ選手の場合、ほとんどが単年契約でプロ野球以上に厳しい環境ですから、私はすべての選手とリモートで30〜40分間の面談を行っています。来季の契約や今後についても、素直に“コロナで先行き不透明”であることも伝え、こんなときだからこそ、トップである自分自身が直接マンツーマンで、契約についても現状などを含め話をする。先行き不透明であることは誰にとっても同じで、世の中からみたらそんなに大した話ではないかもしれないけど、私自身の考えや見通しを伝え、同時に彼らの不安や不満を聞いてあげるだけでも、組織の中では効果があると思っています。

意識の高い選手であればあるほど、満足に練習ができないことに対する不安も大きい。こんなにボールに触らない時期が長いのは、人生で初めてです、と。確かにそうだろうなとは思いますが、そういう選手には、今は世界中(日本は少し遅れを取り出したが)みんな同じだからという話をして、タイミングを見て安全に練習できる環境を整えるようにしていく方針も伝えています。もちろん私がすべてを解決できるわけではないですが、球団・クラブのトップである人間と話ができるということが、精神的な安心材料として大きく寄与すると考えています」

現在不安なのは、選手だけではない。チームを運営する側も先行きに大きな不安をいだいているという。

「そういう人たちからも多数の相談を受けています。でも結局、大変で苦しいのは、今はみんな同じ。今はどうサバイブできるかどうか。だからこそ、皆に共通するのは、1日24時間のうち、苦慮の時間も多いかもしれないが、精神的に自分が生きていて楽しい時間、幸せと差し引きで感じられるかどうか。

私の場合、埼玉ブロンコスもさいたまスポーツコミッションやスポーツイベントの仕事も、大変なことだらけだが、それ以外の余りある時間に、好きな音楽を聴いて、おいしいものを食べて、自転車に乗って、運動をして、自分で自分のメンタルをコントロールしています。そういう自分なりの“平常心の保ち方”を見つけることが一番。

プロ野球選手をみていて、また名選手とも話していて大切だったのは、勝っても負けても次の日は平常心ということ。打っても打てなくても次の日は平常心。いつも自分のパフォーマンスを最大化させるための根底は“平常心”でいられるかどうかだと思います」

この時代を生きている誰もが不安に苛まれている。それは全世界誰もが平等に感じていることだ。それを生きぬくには、自分自身で精神面をコントロールするしかない。この時代を、どう楽しく生きるか、生きぬくか。それができる人間がアフターコロナの世界でも生き生きと活躍できるのではないだろうか。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部