NPBは、新型コロナウイルス問題で5000人を上限としていた観客数を9月19日より収容人数の50%と引き上げ、それを受けて東京ドームでは、公式戦入場者数を最大1万9000人まで引き上げて試合を開催している。
「それでも無観客、観客数制限が続いたことでダメージはかなり大きいと思います。180億円の赤字予想ですが、これは野球以外の影響も大きい。プロ野球の場合、チケット収入とグッズ飲食の売上などを合わせて、最大300億円と言われています。これを球団と球場でシェアするわけです。そこから考えると、東京ドームの場合、プロ野球以外のコンサートやイベントができなかったこともかなり響いたのではないかと思います」
東京ドームでこれだけの赤字になったということは、他のスタジアムやアリーナなどは、さらに厳しい状況なのではないかと池田氏は語る。
「たとえば、さいたまスーパーアリーナは、県や市が資本を入れていますので、コロナ対策には民間以上に慎重になっています。プロ野球の観客数制限が緩和され、格闘技などもやっとはじまり出しました。他の「世界らん展」のような催しやイベントがどれくらいのタイミングから始まり出して、人も集まり、収支が成り立つのか―、次の段階も見えてきはじめたはず。この業界では東京ドームがベンチマークになっていますから、少しでも早く元通りの状態になってほしいと多くの人が願っていると思います」
一方、このタイミングで日本での有料会員数が500万人を突破したと発表したのがオンラインの定額制動画配信サービスのNetflixだ。コロナ禍で在宅時間が増えたこと、『愛の不時着』など韓国ドラマのヒットなどの後押しによって、今年だけで200万人の会員が新規登録。2022年末までに日本発のオリジナル作品も15本以上配信予定だという。
「200万人というと、東京ドームのジャイアンツ戦の年間入場者数と同じですからね。とてつもない数字だと思います。民放のテレビ局が視聴者離れ、スポンサー離れで苦しんでいるタイミングで、これだけ躍進したと聞くと、プレイヤーが変わったんだなと思わざるをえませんね」
昭和の時代から、テレビ局とスポーツ界は、蜜月関係を続けてきた。だが、その時代も否応なく変革を迫られそうだ。
「今後、コロナがどうなっていくかはわかりませんが、スポーツ界のテレビ局依存、観客動員依存はもはや限界まできているような気もします。これからはNetflixのような在宅型インフラを持っているところと、どんなふうに手を組んでいくかということが課題になっていくのではないでしょうか」
“かつての栄光”が戻ってくる日を待っているだけでは、いつまでも明るい未来にたどり着くことができないかもしれない。
取材協力:文化放送
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いまこそスポーツ界は変革のとき!? コロナ禍で明暗を分けた「東京ドーム」と「Netflix」
コロナ禍がスポーツビジネスに与えた影響が明らかになってきた。9月10日に東京ドームが2021年1月期の連結最終損益が180億円の赤字になりそうだと発表。10年ぶりとなる赤字は、その深刻さをあらわしている。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、現在一般社団法人さいたまスポーツコミッション会長、男子バスケットボールB3リーグ・さいたまブロンコスのオーナーを務める池田純氏は、この東京ドームの赤字を在宅型のNetflixの大躍進と比較、コロナ後のスポーツ界について語った。
写真=コロナ流行以前の満員の東京ドームの様子。現在は苦しい経営を余儀なくされている