「流れを大事にしないと」

 三浦監督のこの言葉が、今のDeNAを象徴しているといえるだろう。2分けを挟んで開幕から6連敗。9試合目となった4月4日の広島戦(横浜)で、ようやく今季初勝利を挙げ、6~8日の中日とのカード3連戦(バンテリンドーム)に勝ち越したが、続く阪神戦(横浜)で3連敗を喫し、12球団最速で10敗に到達するなど、どうにも乗り切れない。9日の阪神戦は一回にいきなり3点を失い、六回には2番手・国吉がルーキーの佐藤輝に場外弾を許すなど6失点して試合を決められ、10日の試合も1点を追う七回無死1、2塁で神里が送りバントを失敗。11日も一回に大和の悪送球で2点を献上。「全員がミスを防いでいかないと」と指揮官は嘆く。

 このように、今季のDeNAは試合の流れを変える勝負所での失点やミスが目立つ。また、開幕当初は“八回の男”に指名していた石田が4試合連続で失点するなど、防御率2桁台(12.00)の大不振。それでも雪辱の機会を与え続けるなど、新監督の“温情采配”が裏目に出た面もあった。開幕からの15試合中9試合で七~九回に失点と、昨季セ・リーグ2位の防御率(3.54)を誇った救援陣の不調がチームの不振に大きく影響しているのは間違いない。

 また、先発陣も安定せず、15試合でクオリティースタート(QS=先発6回以上自責点3以下)は4度だけ。飛躍が期待された平良は右肘の張りで1、2軍を行き来しており、浜口、京山、入江と若手も不安定だ。4月3日の広島戦(横浜)では二回に犠飛で先制したが、直後に京山が3本塁打を浴びるなど、点を取った後に失点して良い流れをふいにする場面も目立つ。投手陣の被本塁打数12はヤクルトに並ぶリーグワーストとなっている。

 さらに、三浦監督が「点の取られ方が流れを止めている」と指摘するように、四死球から崩れるパターンも多い。与四球55は5位のヤクルト(42)と離れたリーグワースト。3月27日の巨人戦(東京ドーム)では10四死球を与え、4月9日の阪神戦も一回に押し出し四球、六回には四球でランナーを出してから5失点を喫した。「大量失点には四球が絡む」は野球の鉄則だが、まさに典型的な形。現役時代に抜群の制球力で通算172勝を挙げた三浦監督にとっては、ストレスがかかる敗戦が続いている。

 これだけのマイナス面があれば当然結果は出ない。多くのメディアでも、今季のDeNAに対する悲観的な見方が大勢を占めている。ただ、逆に言えば、低迷している理由は明確でもある。ここからは、「DeNAの浮上が確実な理由」として、いくつかの要素を列挙してみる。

①外国人選手の合流

 DeNAはコロナ禍により外国人の新規入国ビザの発行が停止された影響を最も大きく受けたチーム。育成を含む全10選手が開幕に間に合わなかった。DeNAは昨年11月の段階でビザを取得後に入国する形を選択したが、ビザの発給が凍結されたことで、12球団で唯一1人も外国人選手が来日できないという逆風に見舞われてしまった。ちなみに、これを「球団の失態だ」と批判する声もあるが、手続きの形で明暗が分かれたものであり、あくまで結果論でしかないだろう。

 ただ、外国人選手の存在はやはり大きく勝敗に影響するのは確かだ。守護神・スアレスや打線の中軸を担うマルテ、サンズが揃う阪神は開幕から好調を維持。スモーク、テームズと実績のある新助っ人を補強しながら合流が遅れている巨人は、球団ワーストの12試合連続3得点以下を記録するなど貧打にあえいでいる。

 主砲の筒香が昨季からメジャーに挑戦し、梶谷がFAで巨人に移籍するなど、DeNA打線はただでさえ外国人選手に依存する面が大きくなっているだけに、この影響は大きかった。一方で、130試合に削減された昨季も計45本塁打を放ったソト、オースティンが合流し、実力を発揮できる状態になれば、これ以上ない“上がり目”になるのも事実。昨季首位打者の佐野、2017年首位打者の宮崎、さらに新人ながらリーグ上位の打率を維持する牧と確実性の高い打者は多いだけに、一気に破壊力も増す。チーム打率が.252と高いのとは対照的に、四死球が少なく、出塁率.301、長打率.352はリーグ4位と“強打者不足”は数字にも表れており、今何より求められるのが、13日にも1軍に登録される予定の2人の存在といえる。

 また、昨季56試合に登板した最速160キロ左腕・エスコバーも4月3日に来日し、4月末には合流できる見通し。安定さが目立つ救援陣、特に七、八回を任せられる投手が加わることは大きなプラス要素となる。

 他球団でこれから加わる外国人選手の多くは今季から日本でプレーする新外国人だけに、日本の野球への適応などでオープン戦を経験できない点はマイナス。DeNAのようにぶっつけで1軍合流とは、なかなかいかない事情もある。これもDeNAと他球団の“伸びしろ”の差につながる要素だろう。

②先発陣の充実

 昨年10月に左肩のクリーニング手術を受けたエース・今永は3月31日のイースタン・リーグ、巨人戦(平塚)で試合復帰。228日ぶりの実戦マウンドで最速146キロを計測し、2回無失点と復活に向けて上々の再スタートを切った。「プラン通り順調に進んでいる」と本人も強調しており、期限こそ決めていないものの早ければ5月中にも1軍に合流できる可能性がある。

③“番長流”の浸透と采配力の向上

 昨季のDeNAは打率、本塁打数はリーグトップながら、得点は3位。今季から指揮を執る三浦監督は、この課題を解消するため、ラミレス前監督時代とは大きく異なる意識をチームに植え付けようとしている。攻撃ではバントや走塁技術の向上を目指し、昨季リーグ最少だった犠打数は最多の12と、既に数字にも表れてきている。助っ人不在で開幕から長打力を欠く中、得点はリーグ2位の54で、チーム打率.252はトップと僅差の3位、安打数129はトップと確実に“つなぐ意識”は醸成されている。10敗のうち6敗が3点差以内の僅差で、投打がかみ合っていない面があるが、外国人不在で戦うことを強いられた序盤が、逆に今後に生きてきそうだ。

 また、今季のセ・リーグではただ一人の新人監督である点も重要な要素だ。石田を勝利の方程式で起用することにこだわるなど、采配面で学んでいる最中なのは明らか。球団幹部も「いろいろ経験しながら、監督としても存在感を増していってほしい」と話す。実際に、石田をビハインドの展開での起用に代え、状態の上がっている山崎に八回を任せるなど臨機応変さが出てきたのも確か。打線でも、好調の神里を6番で起用し、4月6日の中日戦での満塁本塁打を“演出”するなど、選手の状態に合わせた柔軟な起用が出始めている。

④新外国人選手のポテンシャルの高さ

 新監督就任に際して、多くの球団は大型補強でアシストする例が多いが、今季のDeNAは日本選手に関しては、前所属球団を戦力外になった風張(前ヤクルト)、宮国(前巨人)やFAの人的補償で指名した田中俊(前巨人)が加わったくらいで、FA戦線をにぎわすこともなかった。ファンの間では「生え抜き監督を後押しする気持ちがなさすぎる」などと批判もあるが、実は外国人選手に関しては先発、救援投手で実力派の獲得に成功している。

 先発候補のフェルナンド・ロメロは直球の最速は161キロ、平均球速155キロを誇る剛腕で、球団幹部は「26歳と若く、ストレート、変化球ともにトップレベルの評価。必ずやチームの力になってくれる」と大きな期待をかけている。昨季は米国のビザが発給されずメジャーでプレーできなかったが、本来なら「日本に来るレベルの選手ではない」(球団関係者)との証言も。2017年にはMLB.comの「有望選手ランキング」で71位に選出され、米スポーツサイト「ジ・アスレチック」は「なぜロメロは日本の球団と契約したのか」と異例の検証記事を掲載するなど、米メディアでは日本行きが驚きを持って報じられたほどの注目株だ。

 また、メジャー通算31試合、マイナー通算264試合登板(18勝27敗42セーブ)の経験を持つケビン・シャッケルフォードには昨季限りで退団したパットンに代わる救援陣の中心選手として大きな期待が寄せられている。2018年に右肘靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた影響で、19年以降は登板から遠ざかっているため育成での契約となったが、投球に問題がないことが確認され次第、支配下登録される予定。また。今年度26歳以上になる新入団育成外国人の支配下登録期限は従来3月末だったが、コロナ禍の影響で来日が遅れた状況を鑑み、今季は7月末への延期が決まった。これに該当する選手はシャッケルフォードしかおらず、救済が認められたのはDeNAにとって大きな後押しといえる。

 ロメロは3月27日の来日時にPCR検査で陽性判定を受けたものの、隔離措置を終えて既に練習を再開。同日に来日したシャッケルフォードも2軍での調整、テスト登板を経て、合流となる見通し。もちろん、新外国人選手だけに未知数の部分もあるが、外国人の補強で成功例の多いここ数年を見ても、球団が三浦新監督のために用意した2人の助っ人には期待が高まる。


 いずれにしても、まだプロ野球は序盤も序盤。多くのメディアで「勝てない理由」ばかりが取り沙汰されているDeNAだが、この現状を打破するだけの“上がり目”は確実にある。チーム生え抜きの投手出身者としては1975、76年に指揮を執った秋山登監督以来45年ぶりとなる三浦監督。満を持して就任した新監督の行く末が注目される。

VictorySportsNews編集部

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