ネクスト・フロイド・メイウェザーの実力

 というのも、相手がとびきりの大物であるからだ。19戦全勝9KOのサウスポー、スティーブンソンはアマチュア時代から注目を集め、2016年リオ・オリンピックでバンタム級銀メダルを獲得。この大会を視察に訪れ、スティーブンソンをほめちぎったのがあのフロイド・メイウェザーだった。自らのプロモーションの将来を担う金の卵を探しに南米を訪れたメイウェザーは、

「ネクスト・フロイド・メイウェザーを発見した。もし私のレコードが破られるとしたら、それはこの子だろう」

 49戦全勝(当時)の記録を超える“後継者”に指名したのだ。その後、プロ転向するにあたってスティーブンソンはメイウェザープロモーションズを選ばなかったが……。選手のキャリアづくりに定評のあるトップランク社と契約したスティーブンソンは、プロでも順当にフェザー、スーパーフェザーの2階級で世界チャンピオンに輝く。スーパーフェザー級の王座は昨年の防衛戦で計量に失格して喪失したが、これで同級に見切りをつけ、3階級目となるライト級に参戦した。

 対する吉野もここまで16戦全勝12KOの無敗レコードを誇る。吉野もまたアマチュアで豊富な試合経験を持ち、プロでは日本、アジアの王座を獲得。日本タイトル防衛戦の頃から盤石だったが、とくに昨年の日本人対決2試合は、吉野の価値をさらに押し上げることになった。元世界王者の伊藤雅雪、そしてワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とも対戦した中谷正義と強豪を連破し、国内最強をしっかり印象付けて世界に打って出る。掛け値なしに日本代表と目されるのが吉野なのだ。

 スティーブンソンの前では吉野でなくとも不利とみなされるが、相手の地元に乗り込む吉野に気後れしたところは一切ない。スティーブンソンの実績、知名度に臆することなくファイターとしての実力を発揮してもらいたい。

 スティーブンソン−吉野戦の2週間後(22日)には、これも見逃せない大一番が予定されている。

話題が絶えない両者の戦い

 28戦全勝26KOのジャーボンテイ・デービス(アメリカ)と23戦全勝19KOのライアン・ガルシア(アメリカ)、若手のスター同士が激突する。両者の実力に個性的なキャラクターも相まって、この試合は今年の上半期最大級のビッグファイトとして熱い視線が注がれている。

 “タンク”が異名のデービスはダイナミックなサウスポーのパンチャー。素行の悪さも有名だが、毎回のように裁判を抱えながらその影響を感じさせないパフォーマンスで結果を残している。メンタル的にも並のボクサーとは一線を画している。

 一方のガルシアはハンサムな容姿とあってSNSのフォロワーが900万人という超人気者である。もちろんリングの実力も折紙付きで、スピードとシャープなブローが持ち味のボクサーパンチャー・タイプ。

 ざっくり東(ボルティモア)のデービスと西(ロサンゼルス)のガルシア、またアフリカ系アメリカ人(デービス)vsメキシコ系アメリカ人(ガルシア)という対比も対決を演出しそうだ。試合の発表会見ではさっそく激しくののしり合い、舌戦が異様に盛り上がっている。二人が雌雄を決するのはラスベガスのT−モバイル・アリーナだ。

5月はスーパーテクニシャン登場

 スティーブンソン対吉野、デービス対ガルシアと、いずれも世界王座こそかからないが要注目の試合。さらに4団体のライト級王座をまとめる王者デビン・ヘイニー(アメリカ)に元王者で史上屈指のスーパーテクニシャン、ワシル・ロマチェンコが挑む一戦は5月に予定されている。

 かくして4月5月のライト級はボクシング界の話題の的になりそうなのである。


VictorySportsNews編集部