新球場を運営する株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメント(FSE、球団が34.17%、日本ハムが32.91%の株式を保有)は先日、球場を含む「北海道ボールパークFビレッジ」の開業後の状況報告会を開催。プレオープンの3月12日から9月30日までの203日間で来場者が303万人(1日平均1万4942人)に達し、目標に掲げていた300万人の大台をホーム最終戦が行われた9月28日に突破したことを発表した。

 野球が開催された日はもちろん、試合がない日も無料で入場できるFビレッジ。非試合開催日の来場者数は平日で4500人、休日で1万500人規模という多さで、地元だけでなく東京など道外からの来場者が札幌ドーム時代の10%から28%と大幅に増加するなど、まさに行楽地化、観光地化に成功した形だ。その結果、収益構造が大きく変容。札幌ドームを本拠地としていたコロナ禍前の2019年に9億5000万円だった営業利益は26億円となる見込みだ。

 親会社である日本ハム株式会社も2023年9月中間連結決算で、本業の儲けを示す事業利益が前年同期比64.2%増の249億6300万円に拡大。「シャウエッセン」などで知られるハムソーセージなどを扱う「加工事業本部」による約29億円よりも多い、前年比3.3倍増の62億7700万円の利益をたたき出した球団関連の「ボールパーク・その他」事業が、牽引役として大きく寄与したことを公表している。

 その経営的躍進の要因として挙げられるのが、球場を自前で建築するという思い切った策だ。札幌市所有で第三セクターが運営していた前本拠地・札幌ドームでは年間13億円といわれる高額な「家賃(球場使用料)」を支払い、広告や飲食の売り上げも入らないことから、球団経営は大きく圧迫されていた。日本ハムの試合で、伊藤ハムのソーセージを使ったホットドッグが売られている・・・などという笑えない話もあったほど。サッカーやコンサートなど多目的な使用を想定したドームの環境は、野球観戦の臨場感を損なうとの意見も出ていたが、「借家」である以上、球団主導の改修などにも限界があった。

 そこで 日本ハム球団は、「指定管理業者」になったり、球場の運営会社を買収したりといった、これまで他球団が行ってきた施策から、さらに一歩踏み込んだ経営改革の一手として新球場建設を選択。これが会心のヒットとなった。座席やビジョンによる演出など観戦環境の向上を図ったのはもちろん、球場内にクラフトビール醸造レストラン、ホテルや温浴・サウナ施設までオープンさせるなど、自前の球場を持つことで野球以外のさまざまな楽しみを来場者に提供することが可能となった。毎試合後、来場者に実施したアンケートでは試合の勝敗にかかわらず再来場を希望する顧客が多く、そうした取り組みが営業利益の向上を強く後押ししたといえる。

 また、開幕直後は最寄りのJR北広島駅まで徒歩で約20分かかる立地や、駐車場の少なさなどアクセスの悪さが指摘されていたが、シャトルバスによるパークアンドライドの推進や、近隣の大学や工場に協力を求めて駐車場を約1000台分拡充するなど対策を打ち出し、右肩上がりでリピート率が改善された。こうしたスピード感を持った対応ができたのも、自前の球場として運営するからこそだろう。

 開業直前には、ファウルゾーンが公認野球規則で定める本塁からバックネットまでの距離が約3メートル足りないという構造的な問題が判明したが、こちらは日本野球機構(NPB)の実行委員会で「野球振興協力金」の寄付を行うことを条件に「球場を改修せず永続的に使用する」ことが承認され、事なきを得た。日本ハムが去った札幌ドームが、プロ野球に代わるイベントの招致などで苦戦し、永続的な運営に向けて難しい局面を迎えているのとは対照的。工費の問題こそ持ち上がっているものの、JR北海道による徒歩4分の新駅建築の計画もあり、エスコンフィールドならびにFビレッジは、まさに一つの「街」として、さらなる発展が期待されている。

 2016年1月に約74億円で運営会社の株式公開買い付けに成功し、横浜スタジアムを傘下に収めた横浜DeNAベイスターズは、年間約25億円あった赤字を解消し、球団単体での黒字化に成功。球団経営のロールモデルとして、プロ野球界のみならずスポーツ界に大きな影響を与えた。当時の球団社長だった池田純氏は「(球団と球場の)一体経営は家を買うようなもの。理想を実現するには借家では難しい」と話しているが、それはファイターズでも実証された。そして、ベイスターズの取締役事業本部長だった前沢賢氏(現FSE取締役事業統括本部長)がファイターズでプロジェクトリーダーをとして新球場建設を推し進め、新たな球団経営の形を示したあたりも興味深い。

 増益分はチーム強化費や球場などのさらなるハード新設・改修に充てられるという。さらに、来年7月にはエスコンフィールド北海道でオールスター戦が開催されることも決定した。“新球場効果”に沸く人口5万7000人の北広島市。スポーツビジネスにおいて、北海道日本ハムファイターズは、また一つのモデルケースを確かに示したといえるだろう。


VictorySportsNews編集部