開催まであと2年! 2019年ワールドカップの盛り上がりは?

世界的にはサッカーのW杯と並んでスポーツのビッグイベントとしてとらえられているラグビーのW杯ですが、開催まで2年を切った現時点での日本での注目度は高いとはいえません。

ラグビーW杯の日本大会組織委員会は、大会全48試合でおよそ180万から200万人の来場者を目標に周知を進めています。2015年に開催されたイングランド大会ではのべ247万7805人 が観戦をしたラグビーW杯。ヨーロッパでのラグビー人気や、移動のしやすさを考慮しても、最大で200万人という目標設定は決して低くありません。ちなみに、2002年、日韓共催で行われたサッカーW杯の観客動員数は64試合で270万5197人でした。

「あと2年しかありません。W杯期間中、外国からラグビーファンが大挙来日すると見込めるのはいいことですが、日本ラグビー界の発展を考えると、日本国内でどれだけラグビーが盛り上がり、2019年以降の景色が変わるのかが大切になります。世の中の人がいったいどれだけこのラグビーW杯に対する認知があるのか、興味があるのか、正直疑問に感じます」

W杯に向けた盛り上がりについて疑問を呈するのは、日本ラグビー協会特任理事も務める、元横浜DeNAベイスターズ社長、池田純氏。

「ラグビーW杯といえば、世界3大スポーツイベント、いわゆる“お祭り”ですよね。お祭り感をまだ感じず、ワクワクしてきません」

池田氏は、今年4月、ラグビー協会の特任理事に就任し、観客動員、集客などの施策に対してアドバイスを重ねています。

「ラグビー協会とスーパーリーグに参戦しているサンウルブズには関わっているんですけど、W杯は組織自体が別です」

池田氏が担っている特任理事としての役割は、国内のトップリーグや協会管轄の試合、サンウルブズに関わるものに限定されていて、組織委員会が主となるW杯は管轄外とのこと。とはいえ、日本ラグビーの活性化のためには世界的なビッグイベントの爆発的成功は必須。池田氏は、W杯の認知やお祭り感が欠如していることを憂慮しています。

観客動員数の目標200万人達成には日本国内の需要喚起が必要

「観客動員数の目標にしているのが180~200万人(※のべ人数)として、海外からの観客を50万人くらいと見込んでいると思うんですね。その人たちが複数の試合を観るとしても、やはり相当数の日本人にも観に来てもらわないと厳しい。現状はどうなんでしょうね。今年の11月4日、W杯決勝の舞台となる日産スタジアムで、日本代表とオーストラリア代表の一戦が組まれています。開催まで2週間に迫った今でも、ラグビーファンは別にして、一般人レベルでこの試合に興味のある人がどれだけいるのか。それ以前に、この試合のことを知っている人があまりいないように感じます」

この一戦は、世界の強豪であるワラビーズ(オーストラリア代表)を呼んでの前哨戦。決勝のちょうど2年前に行われる試合は、大会自体の成功を占う上でも重要な試合だと言います。

「日産スタジアムは、最大収容人数が7万人を超える大きいスタジアムです。ここを満員にできるかがキーになります。いまのままでは満員にならない可能性が高いんじゃないかなと思います。ここからあと2 年でどれだけ盛り上がるかですよね。W杯はある種のお祭りなので、これから本大会に向けてどうお祭りの空気を日本中につくっていけるのか。それがマーケティングの肝になってくると思います。2015年のイングランド大会で日本代表が南アフリカ代表を破った大金星により一気に活気づいた日本ラグビー界でしたが、その勢いはすっかり落ち着きました。ブームで終わってしまった。2015年のフィーバーがあったのに、その前と後で、日本ラグビーの景色を変えることはできませんでした」

世界を驚かせたエディー・ジョーンズ率いる日本代表のフィーバーの再来はなるのか? 池田氏は、徹底したスカウティングとチーム強化で大金星を挙げたエディー・ジャパン同様に、マーケティングにも秘策が必要だと言います。

(C)Getty Images

チケット販売に工夫も「価格議論重視じゃダメ」。重要なのは「飢餓感」

こうした状況に組織委員会も手をこまねいているわけではありません。大会開催年にちなみ、2019円でチケットを販売することを検討するなど、格安チケットで大会の認知度を上げるニュースを提供しようという試みも伝えられています。

「2019円チケットに関して、それ自体はすごくいいアイデアだと思います。でも、このアイデア単発で大会自体が成功だというラインまでチケットが売れるわけではありません。ビジネス的に見ても2019円では収益につながりません。2019円チケットは限定的なもので、やはり2万円、3万円のチケットも売りたいわけです。価格設定も大切ですが、チケットを『買わなきゃいけない』と事前に思ってもらえるか、そういう空気に日本中が覆われるかどうかが大事です」

ベイスターズの球団社長時代には、就任前には5試合だった満員試合数を54試合にし、プレミアムチケット化させた実績がある池田氏は、チケットの価格設定は「金額だけで考えてもうまくいかない」と言います。

「バランスなんですけど、安いチケットと高いチケットの売り上げの総和を儲かる方向に持っていかなければいけない。2019円チケットみたいな企画物も、安いものも必要だし、高いチケットも用意しなければいけない。しかもそれらは単なる価格設定の話ではなくて、席割をテーマパークのように見せるとか、価格と席のバラエティも議論していかなればいけません。それ以前に、“事前に”買っておかないと無くなってしまうという“飢餓感”をどう創出できるかが大事です」

チケット飢餓感をどう創出するか?

池田氏は話題性も大切としながらも、「お客さまがラグビーW杯のチケットを買う、観に行く理由をつくること」がより重要だと説きます。

「早く買わないとなくなっちゃうという“焦り”ですよね。チケット購入サイトを見たらどんどん席が埋まって×印や△印が増えていく。そうなれば、『観に行かなきゃ』『チケット買っておかなきゃ』という状況になります。そうできるかどうかはここからの企画やマーケティングに大きく左右されると思います」

例えば、池田氏が特任理事として関わるサンウルブズの試合では、秩父宮ラグビー場のチケットに飢餓感の空気を創出するプロジェクトがすでに始まっています。

「チケット価格の議論のときから、秩父宮を一つのラグビーパークのようにつくっていくことがセットで議論されています。その中で席種もテーマパークのように分けて、この席はファミリーが楽しむための席、このシートはラグジュアリーな雰囲気と、お客さまが何を求めているかで席を選んでもらう。単なる価格勝負じゃなく、新しい楽しみ方を提示して、“体験”に対してお金を払ってもらう。ラグビーパークをつくることに挑戦する過程も含めて、期待感、来る理由をつくって、それを世の中に対してコミュニケーションして、『買ってみようかな』という層や『早く買おう』というマーケティングにつなげようとしています」

試合日程やチケットの価格などは、国際統括団体のワールドラグビー側と価格設定を協議中で、11月2日に発表される予定です。単なる価格ではなく、席割や演出面も含めた工夫があるのかどうかにも注目が集まります。

<了>

取材協力:文化放送
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VictorySportsNews編集部