熱戦の舞台は『冬のソナタ』のロケ地でも

23回目を迎える冬季オリンピックですが、アジアでは1998年の長野大会以来の開催となります。韓国のオリンピック開催となると夏季大会の1988年、ソウルオリンピック以来30年ぶりになります。

開催地となる平昌(ピョンチャン)は、ソウルから200キロ圏内とアクセスも良く、冬のリゾート地として人気を集めています。なかでも今大会でアルペンスキーの大回転・回転競技の会場になる龍平(ヨンピョン)リゾート(通称:ドラゴンバレーリゾート)は、韓流ドラマブームを巻き起こした『冬のソナタ』のロケ地としても知られます。日本でも、ドラマのロケ地を直接訪ね歩く “聖地巡礼”のファンで溢れるようになったことで有名になりました。

『冬のソナタ』をより一層ロマンティックに彩った白銀の世界が、冬のスポーツの祭典の舞台になります。

今大会は冬季オリンピックとしては史上最多、7競技102種目が行われ、全世界の90以上の国と地域から約6000人の選手が集まります。

7競技と聞くと案外少ないように感じますが、その内訳はスキー、スケート、アイスホッケー、ボブスレー、バイアスロン、カーリング、リュージュの7つ。

「肝心のフィギュアがない!」と思う人もいるかしれませんが、フィギュアは「スケート」競技のなかの一つに数えられ、こうした細かい競技を見ていくと15競技、10種目でメダルが争われることになります。

史上最多の種目が行われる平昌オリンピックは、冬季オリンピック史上初めて、金メダルの数が100を超える大会でもあります。団体競技を加えれば100人以上の金メダリストが誕生することになるオリンピックですが、やはり気になるのは「日本人メダリストはどれくらい生まれるのか?」ということでしょう。

データによる客観的な予測でも日本選手団は「史上最強」

©The Asahi Shimbun/Getty Images

日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化常任委員会は、平昌オリンピックでのメダル獲得目標を「複数の金メダルを含む前回大会を超えるメダル数をめざす」としました。

前回大会となるソチオリンピック(2014年)の日本の獲得メダルは8。記憶に新しいソチでのフィギュアスケート男子シングル・羽生結弦選手の金メダル、スキージャンプの“レジェンド”葛西紀明選手、ノルディック複合の渡部暁斗選手、スノーボード・ハーフパイプの平野歩夢選手、パラレル大回転の竹内智香選手の銀、ジャンプのラージヒル団体、スキー・フリースタイルの小野塚彩那選手、スノーボード・ハーフパイプの平岡卓選手の銅メダル以上のメダルを目標としています。

冬季オリンピックのメダル最多獲得数は、自国開催だった長野オリンピックの10個。今大会はその記録を超えるメダル獲得が期待できるという声もあります。

世界トップクラスのエンターテインメントデータ提供企業、アメリカのグレースノート社のスポーツ部門が発表した予測によると、日本のメダル総数は14個、金メダルは2個と分析しています。

これは開幕まで10日となった1月末までのあらゆるデータをもとに、「現時点でオリンピックが行われたらどうなるか?」を予測した結果です。あくまでも予測ですが、第三者の客観的なデータに基づく分析でこれだけの成果が予測されているという事実に期待も高まります。

羽生結弦に小平奈緒、平野歩夢、高梨沙羅らが“世界一”を目指す

金メダルが予測されているのは今季圧倒的な強さでワールドカップ負け知らずのスピードスケート500メートルの小平奈緒選手。スピードスケートでは、高木菜那、美帆姉妹が引っ張る団体追い抜きも金メダル予想となっています。

連覇のかかる羽生結弦選手は銀メダル予想。日本では、右足じん帯を負傷して“ぶっつけ本番”で競技に挑む羽生選手を心配する声もありますが、演技の完成度、表現力を含めた総合力などのデータがメダルはもちろん、金メダル争いに加わるとの結果をはじき出しています。もちろん、宇野昌磨選手、女子の宮原知子、4大陸選手権を制した坂本花織選手にもメダルの期待がかかります。

データに基づく予想をベースに選手を紹介していきますが、スピードスケートの小平奈緒選手は、実績から言えばメダルが確実視される注目選手です。前回大会、ソチオリンピックは得意の500メートルで5位と失意のうちに終わりましたが、その後オランダ留学を経て、一気に才能が開花。帰国後のトレーニングで強さを手に入れ、500メートルではワールドカップ15連勝と敵なし、1000メートルでも世界記録をマークするなど、複数メダル獲得も視野に入る無双っぷりを発揮しています。1000メートルでは、1500メートルでの活躍が期待される高木美帆選手との“ワン・ツーフィニッシュ”も期待でき、スピードスケートの種目決勝開催日は、君が代を聴ける可能性がかなり高いといっていいでしょう。

©Kyodo News/Getty Images

ソチでの雪辱を誓う選手といえば、スキージャンプの高梨沙羅選手も忘れてはいけません。ワールドカップ53勝の最多勝利記録を持ち、ジャンプの女王として君臨しながら、ソチでは4位に終わり、平昌での雪辱を目指します。グレースノート社の分析では、高梨選手は銀メダル予想。今季ワールドカップでは勝利がなく、マレン・ルンビ(ノルウェー)、カタリナ・アルトハウス(ドイツ)といったライバルたちに水を空けられ、メダルも厳しいとの見方もありますが、オリンピックの怖さ、メダル逸の悔しさを知る高梨選手だけに、シーズンのピークを平昌に合わせ、大ジャンプを見せてくれる可能性は十分にあります。

スノーボードでは、平野歩夢選手がハーフパイプで“キング・オブ・スノーボード”、アメリカのショーン・ホワイト選手に挑みます。15歳で銀メダルを獲得したソチオリンピックでは、ショーン・ホワイト選手が大技を失敗しメダルを逃しましたが、「世界一のスノーボーダー」の座は変わらずショーン・ホワイト選手のものです。2017-18シーズンに大ケガを負った平野選手ですが、復帰してからも世界最高峰の大会、X Gamesで史上初の2連続4回転高の大技を成功させ、金メダル候補であることを示しています。

そのほか、ワールドカップ今季5勝のノルディックスキー複合の渡部暁斗選手、女子ジャンプの伊藤有希選手、スキー・女子ハーフパイプの小野塚彩那選手、モーグルの堀島行真選手、スノーボード・女子スロープスタイルの鬼塚雅選手ら、メダルの期待がかかる選手が目白押し。“長野越え”も現実的な布陣で平昌に乗り込みます。

ロシアのドーピング問題による選手団除外と個人資格での出場、北朝鮮の一部競技への参加、韓国との合同チーム結成など、スポーツの本筋ではないところで注目を浴びてしまった平昌オリンピック。世界最高の技術と実力を持つ選手たちが、純粋に競技に集中できない状況があるとしたら残念ですが、大会期間中、競技を行っている時間は選手たち、スポーツを楽しむ私たちのためのものです。

今回は、日本人選手たちの活躍を中心に見どころを紹介しましたが、ライバルの選手たち、世界の一流選手の滑りやプレーにも注目です。

<了>

羽生結弦が自らのスケート人生を投影したFS/『Hope & Legacy』

羽生の生まれ育った町には、「七北田川(ななきたがわ)」が流れる。仙台平野を潤す河川の一つだ。ヘルシンキではフィンランドの壮大な自然をイメージしたという羽生。今季ラストとなる美しい調べに、母なる地を重ねてみたい。

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VictorySportsNews編集部