2019年まで鹿島アントラーズに所属した安西幸輝と鈴木優磨は、次世代における日本代表の中核を担うべくヨーロッパに活躍の場を求めた。最終回となるVol.4では海外で得られた経験値やこれからの意気込みについて語った。

「0からの戦い」となった海外移籍

「0からの戦い」となった海外移籍
ー海外移籍をしてみて、日本で得た経験は生きていますか?

鈴木 海外で活躍した日本人選手たちが、よく「早く海外に出たほうが良い」って言うじゃないですか。僕も安西もそうですけど、ある程度Jリーグで実績を積んでこっちに来ました。ですが、こっちの選手は日本での実績を知りません。どうせ知られていないなら、できるだけ若くして来るのは良いことだと思いましたね。僕らは24歳と25歳で、選手としての時間がそれほどないというのもあります。シント=トロイデンVVにせよ、ポルティモネンセにせよ、長くいるクラブではないというは、みんなもわかっていること。それに対して、得点できない、途中で代えられる、スタメンで出られないってなると、何のために行ったんだという思いが非常に強くのしかかってきます。日本で多くを学んで移籍しましたが、それを生かすというよりまた違ったものを学んでいるという感じですね。

ー1からのスタートというイメージですか?

鈴木 どちらかというと、そうですね。日本で培ったものをこっちでそのまま伸ばすというよりは、0からの戦いになりました。シント=トロイデンVVもポルティモネンセも、日本人に優しいクラブと言われているなかでこのように感じています。次に移籍したら、もっと強く感じるんだろうって覚悟していますよ。

安西 本当に的を射ている話だね。あんまり共感はしたくないけど、本気でそうだなって話を聞いて思いました。

鈴木 海外で厳しい状況になる選手とかいるじゃないですか。たとえば今だと、ニューカッスルで武藤(嘉紀)選手が出ていないとか、でも僕らはそういうレベルではないんですよ。武藤選手は出られなかったら次に行くクラブは、(実績のある)ドイツに環境を変えられるんです。僕らの場合は日本人に優しいと言われるクラブに来ていて、ここでの競走に勝てなかったらどこに行ってもダメで次のクラブに行っても勝てるわけがないんですよ。その焦りで、ときどきすごくネガティブになります。僕らは守られていると思います。

安西 うん、わかる。そうそう。

グリーン車からバス移動に―― 海外で培うハングリー精神

――プレー以外の環境に適応するのに、苦労はしませんでしたか?

鈴木 僕は移籍が初めてで、食事は苦労しましたね。やっぱり主食が米でははないですし、こっちは油を使った料理が多い。ちょっと離れたところで日本食のお店があるとかって、こっちのことを知るまでの時間が必要で慣れるまでに時間は掛かりましたね。

安西 僕は権田(修一)選手もいましたからね。ポルトガルは気候も暖かくポルティモンの街は海が近くにあって、環境面では問題なく過ごせています。食事の面では日本食というものが全くないのですが、ポルトガルの料理はすごく美味しいので、そこまで問題にはなっていませんね。

鈴木 問題ないんじゃないか(笑)。

安西 でも、日本食は食べたいだろ(笑)。

――自炊はしなかったのですか?

安西 優磨はしていたでしょ?

鈴木 数えられる程度しかしてない。シント=トロイデンVVにいる日本人選手は仲が良いのでリフティングのゲームなどをして、負けた人が自炊してみんなに振る舞うというのが流行っているんですよ。だから、一人ではあんまり自炊してないですよ。

安西 僕は全くしないですが、権田さんの家でよくご馳走になっています。優磨がベルギーで自炊を始めたと聞いたときは、さすがに本気でびびって僕もやらないとまずいなって思ったんですけど、やっぱりダメでしたね(笑)。

鈴木 安西のところは、クラブから朝昼晩の食事が出るんですよ。だから、自炊する必要はないんですけど、僕らは朝と昼しか出ないので夜はどうしてもしなければならないんです。

安西 確かに、そうだね。

鈴木 こっちは大変ですよ。サッカーではない部分での戦いも多いですからね。

安西 確かに、それはあるね。

――シント=トロイデンVVは日本企業のDMMが経営しているので、日本人選手にとってもっと良い環境が用意されているのかと思っていました。

鈴木 そんなことないですよ。むしろ、いろいろな意味で這い上がってやろうと思える環境かもしれないですね。恵まれているわけでもありません。こっちよりもJリーグのほうが恵まれていますね。やっぱり日本はすごいですよ。こっちのように活躍してステップアップしなければならないと言われているリーグでは、すべてに対して良い意味でハングリー精神が出てきます。

安西 Jリーグでは鹿島という日本を代表するようなチームにいました。優磨ともよく話していることなんですけど、ポルティモネンセやシント=トロイデンVVは海外のなかではステップアップに利用するようなチームだと思います。Jリーグのときは、飛行機や新幹線での移動が主でした。ポルトガルにも新幹線はありますが、主要な交通手段がバス移動なんです。ポルティモンはポルトガルの端にあるので、アウェイの試合ではだいたい7時間くらいのバス移動になります。日本ではグリーン車とかでの移動が当たり前だったんですけど、バスで7時間なんてプロになってから初めての経験でした。そういったところで、こっちに来てからハングリー精神が鍛えられました。チームメートを見ていても練習から「今日しかない」って感じで挑んでいるので、僕自身もハングリーになれていると思います。

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VictorySportsNews編集部