結果を求めず、プロセスを求める

―今所属しているスペインのチームで、初出場までの経緯を教えてください。

丹羽:3月初旬に今のチームと契約をして、そこからビザを取る手続きをしていたのですが、ビザを取るのに日本に帰らなくてはいけないことが契約してから1ヶ月経ってから分かり、4月の上旬に急遽日本に帰国しました。
そして、そこから約1ヶ月後の5月にビザを正式に取得することができました。
契約してからビザの取得まで約2ヶ月かかりました。
ビザ取得をしてから直ぐに日本からスペインへ戻りチームに合流して、その2日後に試合があったのですが、その試合がスペインでの初出場した試合になりました。
日本に帰国していた1ヶ月間は、隔離期間などもある中で自主練習をしていました。
チームに合流してから2日間のトレーニングのみで、直ぐに試合に出場させていただきました。
直ぐに試合に起用してくれた監督、クラブの方の信頼を感じましたし、
それと同時に日々の練習を真摯に取り組む、ということがどれだけ大切かを改めて実感しました。
3月に契約をしてから、いつビザが取得できるか?どこの試合に照準を合わせればいいのか?正直全くわかりませんでした。
若い時は、例えばリーグ戦やカップ戦の決勝にピークを持っていけるように準備したりしていましたが、ここ数年は、精神的にも身体的にも良い状態で、いつでも試合に臨めるようになりました。

―ピークを維持するのは疲れてしまいませんか。
丹羽:年齢と共にピークというのを作らないようになりました。
普段の生活から平生を整えることによって、コンディションやメンタルの浮き沈みがなくなりました。
ここ数年は特に、いつ、どの試合に呼ばれても、自分が思っているパフォーマンスを出せるようになりました。
今回チームに合流して3日後の試合で良いパフォーマンスが出せたのも、試合までのプロセスを大切にして、普段の生活から『平生』をしっかりと整えて試合に臨めたからだと思います。

―言葉で言うと簡単に感じますが、それを体現するのは難しいと思います。それがなぜできるのですか。
丹羽:平生を整える。の延長の話しになるのですが、オフ・ザ・ピッチの生活や考え方、行動から来る精神的【メンタル】な安定です。例えば、道にゴミが落ちていて、拾うか拾わないかはあなたの考え方次第です。
僕はゴミが落ちていたら、必ず拾ってゴミ箱に捨てに行きます。
一見サッカーの試合とは全く関係ない話に聞こえますが、僕は普段の生活からゴミを拾う事で、運を拾って、ギリギリの勝負のかかった場面で自分に運を引き寄せたりする事に繋がる。そういったことを普段の生活から意識して過ごしています。
「試合に出ること、出れないことの意味」の考え方が年齢とともに変わってきました。
プロサッカー選手は試合に出ることはもちろん大切なのですが、試合に出る、出ないよりも大切な事は、試合までのプロセス、アプローチの仕方に自分がどれだけ納得できるかにフォーカスを当てる事です。
未来の試合の結果は誰にもわかりません。
ただ、試合までのアプローチの仕方は自分でいくらでも変えることが出来ます。
そういったことを考えて行動することで年齢と共に僕自身、良いパフォーマンスが出せるようになりました。

―それはアカデミーや若手の選手が大切にすべき考えですよね。
丹羽:そうですね。でも、正直若い時期は難しいと思います。僕も今この話しをしながら、どの年齢から今の考え方になったのかハッキリとは覚えていません。
もしかすると「努力をしている」や「頑張っている」という感覚が年々なくなっているのかもしれません。
「これだけ努力しているのに」「これだけ頑張っているのに」と思ってしまうと、精神的にも体力的にも疲れてしまうと思うので、その考え方が少しずつ変わっていきました。
小学生の頃にサッカーをしていた時は自分が努力しているとか、頑張っているとかそんな感覚ではなくサッカーをしていました。
「努力することは3食のご飯を食べることと同じ」くらいの感覚で、僕の中で「努力」と言う言葉は年齢と共になくなっていきました。
ただ、今の考え方は10代20代前半の頃には出来ませんでした。
だからこそ、この記事を少しでも多くの方に見て頂き、オフザピッチからキチンと『平生』を整えて良いパフォーマンスが出せるようにしてもらえたらと思います。

―このような考えを知れるのは大きいですね。
丹羽:「自分が努力している、頑張っていることを評価してほしい」と思ってしまうと、実際その評価をしてもらえなかった時に、苦しくなってしまいます。
評価を他人にしてもらうのではなく、先ずは自分で自分の評価することです。
要は24時間自分自身と向き合う事です。
自分のことは自分自身が一番わかっているので、「自分が嫌いになる時」というのは自分に原因があります。
自分で自分自身のことを評価するとギャップはありませんが、他人の評価は、どれだけ努力しても評価されなかったり、努力をしていないのに逆に評価してもらえたりと、他人の評価と自分の評価にギャップが生まれてしまいそのギャップに苦しむ人が出てきます。
なので自分のことを自分で正しく評価できるようになると、自ずと苦しまないようなります。

―どうしたら、そのようなメンタルを持つことができますか。
丹羽:これは親御さん達にも伝えたいのですが、僕は家族、両親、兄弟、友人から「無償の愛」を受けながら育てて頂きました。
「無償の愛」を受けることで、本当の命の有り難み、生きることで幸せを感じ取れます。
逆に「無償の愛」を受けないと、「自分は何のために生きているのだろう?」「自分の生き甲斐ってなんなんだろう?」といったことを考えてしまいがちになります。
僕は幼少期から周りの多くの方から、「無償の愛」を受けて育ててもらったので、今の考え方に至ることができました。
他人から認めてもらいたいと思う人はコンプレックスや、承認欲求が強かったり、逆にコンプレックスがない人は、他人に認められるかどうかよりも、自己実現欲求が高かったり、生きていること自体が幸せだったり、他人に認められることよりも大事な欲求がどんどん出てくると思います。
生まれながらにコンプレックスを持っていたりネガティブな考えになってしまっている方は、この考え方をキチンと理解して、無性の愛の意味をとことん考えていく事で、今後コンプレックスがなくなり、より生き甲斐を感じ取れる人生を過ごせるのではないでしょうか。
人生はいつでも誰でもすぐに変えることができます。それは今、この時から考え方を変えることです。

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VictorySportsNews編集部