乱立する団体と団体内統一戦

 ちなみに前回は、井上がIBFとWBAの“レギュラー”バージョンのチャンピオンで、ドネアはWBAのスーパーチャンピオンだった。ややこしいのだがWBAタイトルのほうは「団体内統一戦」と言えるもので、これに勝った井上が晴れてWBAの最上位王者(スーパーチャンピオン)となった経緯がある。

 パート2で再び井上が勝てば日本初の3団体統一王者である。まさに快挙だが、井上の場合は残るWBO(世界ボクシング機構)のタイトルも獲って「主要4団体完全統一」を期待されるところが、モンスターたるゆえん。現在のWBOチャンピオン、ポール・バトラー(イギリス)が井上-ドネア戦勝者との対決に乗り気であると聞けばなおさらだ。ボクシングファンなら、その先のストーリーにまで胸を躍らせるに違いない。

 4つの世界王座をまとめ、「アンディスピューテッド・チャンピオン(比類なき王者)」の地位を確立するのが近年のトレンド。そしてこれは当然トップファイターだけに許されるチャレンジである。

錚々たる”比類なき王者“たち

 直近でもジャーメル・チャーロ(アメリカ)がブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)を激闘の末10回KOで破り、スーパーウェルター級初の4団体統一王者となった。いわゆる「世界王座4団体時代」に突入して30年余、ベルトの一本化に成功したのはチャーロで7人目。現役ではテレンス・クロフォード(スーパーライト級、17年)、オレクサンドル・ウシク(クルーザー級、18年)、ジョシュ・テイラー(スーパーライト級、21年)、サウル“カネロ”アルバレス(スーパーミドル級、21年)に続く5人目の偉業となった。バンタム級4団体統一チャンピオンの誕生も待ちたいところだ。

またも地上波での放送はない

 さて6月7日の大一番は、Amazonの「プライム・ビデオ」でライブ配信されることが決まっている。

 プライム・ビデオが日本でもスポーツのライブ配信を開始し、その第1弾として中継されたのが4月に行われた村田諒太-ゲンナジー・ゴロフキンの世界ミドル級王座統一戦。井上-ドネアはその第2弾となる。

 かつてはテレビの地上波中継で高い視聴率と人気を獲得したボクシングも、ここにきて放送形態が大きく様変わりしつつある。巨額な興行経費のかかるビッグマッチなどは現在のテレビマネーでまかなうのが難しく、それを可能にするのがネット配信サービスの資金力となる。また世界タイトルマッチ以外でも、動画配信という新時代に即した放送が増えている。観たい人がコンテンツを購入する有料視聴は当たり前のものとなり、無料の地上波放送がさらに遠のけば潜在的なファンをつかみづらくなると憂慮する声もあるが、この傾向は今後も強まるものとみられている。

 井上に関して言えば、昨年12月の前戦(アラン・ディパエンに8回TKO勝ち)は日本開催にもかかわらずテレビの地上波放送がなかったことも話題になった。ひかりTVとABEMAがペイ・パー・ビュー方式で試合を配信したのだ。

 この時設定された視聴料は約4000円。その後、契約件数の正式な数字は明らかにされていないものの、配信サイドの立てた目標はクリアしたとされている。

 今回の試合は、日本以外ではアメリカでESPN+がストリーミング配信する。ESPNはネット配信を含め過去にも井上のジェイミー・マクドネル戦、ジェイソン・マロニー戦、マイケル・ダスマリナス戦などを全米に中継してきた。日本のモンスターの試合にはアメリカでもそれだけの需要があるのだ。最強のライバル、ドネアと再会する今回は注目度が一層アップしている。


VictorySportsNews編集部