まずはベスト16に進むことが出来ました。これから先の相手は、さらに対策を徹底してくると思います。負ければ終わりという厳しい戦いを、決勝まで4試合こなさなければなりません。
日本に対して相手が狙ってくることは決まっています。引いてしっかりブロックを作って守って、そこからカウンターを狙ってくるという戦いでしょう。ちょうど、2022年カタールワールドカップで日本がドイツやスペインと対戦したときの戦い方です。
ドイツに対して日本は4-2-3-1でスタートしました。ですがドイツの可変システムに手を焼き、後半から森保一監督は3-5-2に変えてマークをハッキリさせ、押し返すことに成功しました。前半のうちに失点していましたが、ドイツが後半の日本の変化に戸惑っている間に2点を取って逆転しています。
アジアカップの対戦相手は、ドイツ戦の後半の日本のように強固な守備を敷いてくるのは間違いありません。そして前線には背が高く、ボールを収められる選手がいます。日本の不用意なパスをカットして少ない人数で一気に攻めてくるという場面が一番危なくなります。また、高身長の選手を生かしたセットプレーを生かして効率的に攻めてくるという策も当然用意してくるでしょう。
イラク戦で日本が苦労したのはアバウトなボールを放り込まれ、高さのあるトップに収められることでした。日本としては4バックから3バックに変更してマンツーマン気味にすることで守備を整え、そこから反撃することも出来たのでしょう。
ですが、森保監督は後半開始から冨安健洋を投入して解決しました。冨安が入り、ボールを奪うだけではなくラインを押し上げてくれるのでセカンドボールも回収できるようになりました。確かにそういう解決策は一つあると思います。
ただし、理想としては監督のアクションを待つのではなく、流れが悪いのだったら選手が判断してシステムを調整できるのが理想です。ここまで森保ジャパンは4-2-3-1、4-1-4-1、3-5-2という形を試し、またニセサイドバックのオプションもやっています。
これを試合の中で流動的に変えられることが大切でしょう。「何かおかしい」「うまくはまらない」「うまくいっていない」と選手が気付いているのに、ベンチの指示を待っていては、どうしても対応が遅れてしまいます。
この大会では、特に前半のうちに修正できればよかったと思える場面があります。イラク戦も前半に失った2失点が大きく響いて敗戦ということになってしまいました。前半悪い流れになったとき、素早く選手が自分たちで戦い方を変えられればよかったと思います。そしてそういうことが出来るようになるトレーニングが大切になってきたと言えるのではないでしょうか。
日本の弱点を突こうとしてやってくる相手に素早く変化して対応し、主導権を握って早い時間帯に先制して勢いを付け、押し切っていく戦いが出来れば怖れるものはありません。特にこの大会で対戦するのは、最初に厳しくプレスをかけ、そのまま点を取ると萎縮しやすい相手が多いからです。
それに、選手が自動で可変システムを切り替えられるようになるのは、この大会のためだけではありません。すべては次のワールドカップで、これまで日本が達していなかった高さからの風景を見るためです。
2022年カタールワールドカップで、森保監督の最初の4年は終わりました。そこからどこまで上積みすることができるかが次のワールドカップでの成績に直結します。
カウンターで相手を沈めたサッカーだけではなく、自分たちで主導権を握るサッカーでどこまで戦えるようになるかがカギになると思いますし、実際に今の日本代表はその方向に動いていると言えるでしょう。
アジアの対戦相手が引いてくるので、ボールを保持しながら勝つのはカウンターのリスクがあると思います。しかし、そこでも4バック、3バックを状況に応じて使い分けながら勝っていけるようにならないと、力が付いたとは言えません。
実際のところ、システムとプレーヤーの役割を自然に変えていけるようにしないと、主導権を握り続けることは難しいと思います。その「自然可変システム」こそ日本の現段階で必要なことです。アジアカップを勝つと同時に、チームがそのレベルまで達してほしいと思いますし、達することが出来れば、自ずと勝利は見えてくるはずです。これから先のチームの成長に期待しています。
【前園真聖コラム】アジアカップでは何をして勝っていけるようにしなければならないのか
日本代表にとって一番大切だったのは、まずベスト16に進出することでした。各チームの戦いぶりを見ると、対戦相手の日本対策はかなり進んでいます。これは韓国に対しても同じことで、日韓両チームへの警戒心はものすごく高いということでしょう。
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