#横綱
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相撲
失われる幕内最高優勝の価値~白鵬の引退とスイスドローの限界
もはや異変だ。1月の大相撲初場所は西前頭筆頭の大栄翔が初優勝を飾った。これで昨年以降実施された6場所のうち、平幕力士が賜杯を手にしたのが、半分の3場所となった。白鵬、鶴竜の両横綱は休場が目立ち、出場している上位陣には安定感が欠如。相撲界の根幹には番付があり、世界的に見ても屈指のランキング社会だ。誰が制してもおかしくないという状況は、独自の秩序が揺らいで幕内最高優勝の重みが薄れているという嘆かわしい側面を併せ持っている。
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相撲
屈辱と人種差別騒動に耐え忍んだ照ノ富士の復活劇 ~師匠への“恩返し”
始まりは、まだ浪速の街に肌寒さの残っていた昨年の3月10日だった。エディオンアリーナ大阪で行われた大相撲春場所初日。観客のまばらな午前中、元大関の照ノ富士が序二段の土俵に立っていた。5場所連続休場から復帰。ここが出発点となり、先の7月場所での〝史上最大の復活優勝〟へとつながった。想像を絶する番付降下から人間的な成長、新型コロナウイルス禍など、絡み合ったさまざまな糸。快挙の裏側を探った。
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相撲
調整能力がカギとなる“荒れる初場所“~徳勝龍の偉業と時代の変化
大相撲で〝荒れる〟との形容詞で表現されるのは、3月に大阪で開催される春場所と相場が決まっていた。番付で下位の力士が上位を倒す波乱が多いとされるためだ。しかし近年、異変が起きている。1月の初場所で、幕内で最下位の西前頭17枚目、徳勝龍がサプライズ初優勝を果たした。これで初場所は5年連続で優勝未経験の力士が制覇した。もはや〝荒れる初場所〟の様相を呈している。
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相撲
徳勝龍初優勝の価値~33歳幕尻での快挙
2人の横綱の相次ぐ途中休場、千秋楽までもつれた平幕力士による優勝争いと荒れた初場所も、幕尻と呼ばれる幕内で最下位の地位である西前頭17枚目の徳勝龍が14勝1敗の好成績で初優勝。初場所での初優勝は5年連続、幕尻力士の優勝は2000年春場所の貴闘力以来20年ぶり2度目の快挙だった。
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相撲
力士と観客の質の低下が招く大相撲の危機
2020年初場所もすでに終盤。冬の巡業で皆勤し場所前も好調と伝えられていた優勝候補筆頭の横綱白鵬は、初日は勝ったものの2日目から2連敗。大方の予想通り、前半戦で連敗した後の休場。横綱鶴竜も同じく5日目から休場。これでまた初優勝力士が誕生するか注目が集まっている。
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相撲
2019年大相撲を振り返って~世代交代を考える
2019年の大相撲界は「世代交代」というキーワードで語られてきた。貴景勝が3月の春場所後に22歳で大関に昇進し、5月の夏場所では25歳の朝乃山が初優勝と、次世代勢力の伸びがあった。ただ、幕内優勝力士を見ると白鵬2度、鶴竜と玉鷲が1度ずつと年6場所のうち4場所で30代が賜杯を抱いた。3場所はともに現在34歳の両横綱で、若手から中堅とされる力士たちが最高位の牙城を崩すまでには至っていない。
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相撲
相撲巧者の情熱家 ~角界に愛された井筒親方を偲んで
あふれ出る人間味に勝負師としての厳しい雰囲気。大相撲で元関脇逆鉾の井筒親方が9月、急逝した。享年58歳。元関脇鶴ケ嶺の先代井筒親方を父に持ち、兄の元十両鶴嶺山、弟の元関脇寺尾とともに〝井筒3兄弟〟として脚光を浴びた。色白で胸を張った立ち姿は力士としての色気を漂わせる一方、横綱を倒して思わずガッツポーズをしたり、一度立ち合い不成立とされた後で審判長をにらみつけたり。やんちゃな一面も憎めず、ファンの心をつかんだ。現役引退後は指導力を発揮し、横綱を輩出した。色紙にサインを求められれば、好んでしたためた文字は「情熱」。本人いわく「何事もパッションは大事だからね」。個人的な印象として、まさに〝情〟の人だった。
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相撲
貴乃花の大きすぎる負の遺産
2019年9月25日。スポーツ庁の記者クラブに一通の文書が届けられた。差出人は十両力士・貴ノ富士の代理人弁護士。その概要は、相撲協会側と師匠である千賀ノ浦親方から”引退を勧告”を受けている。その処分は不当に重すぎるのでスポーツ庁に適切な処置を求める上申書を提出したというものだった。 このちょうど1年前、2018年の9月25日は忘れもしない日だ。貴ノ富士の本来の師匠、当時の貴乃花親方が突然「引退会見」なるものを開いた日だからだ。新聞、テレビ、雑誌、ネットと各メディアがてんやわんやの大騒ぎとなり、希代の横綱の相撲協会退職へとつながっていったまさにあの日から1年、弟子がとんでもないことを言い出したのだ。もちろん意図していたわけではないだろうが、奇妙な偶然が貴乃花の負の遺産という側面を際立たせることになる。
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大相撲
貴乃花とは何だったのか~翻弄される“平成の大横綱”の人生(後編)
日馬富士暴行事件に端を発する一連の貴乃花騒動の元を辿れば、2014年に引退した貴乃花部屋の元幕下力士の不可解な引退劇にある。この幕下力士は自己最高位の幕下3枚目まで番付をあげ、次の場所で勝ち越せば無給だったこれまでの生活から月給約100万円の十両に昇進する可能性がかなり高い環境にあった。にもかかわらず突然の引退。
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大相撲
貴乃花とは何だったのか~メディアがおもちゃにした大横綱の人生(前編)
世間の話題をさらった日馬富士暴行事件から始まった貴乃花騒動、そして日本相撲協会からの電撃退職。あれからまもなく1年になる。秋場所が開催されている今月、またもや元貴乃花部屋の力士たちが土俵外で話題を振りまいている。大関から陥落した関脇・貴景勝の反社タニマチ疑惑。十両・貴ノ富士(元貴公俊)の付け人への暴行。これに至っては去年春場所、当時の親方を窮地に追いやった事件からわずか1年半後の暴挙だった。この2つの問題は師匠・貴乃花からの影響を消し去る事ができない弟子たちが起こすべくして起こしたものだといえるだろう。
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相撲
トランプも大相撲のタニマチに!? 資金援助だけではない本当の役割
令和最初の大相撲本場所の土俵にドナルド・トランプが立つ!このニュースを耳にしたとき思わず『時代だなぁ』とつぶやいてしまったが、優勝力士にはドナルド・トランプ杯(アメリカ大統領杯)が授与されるようだ。トランプ大統領が大相撲夏場所千秋楽を観戦したがっていると私が聞いたのはことし3月の末。日米首脳会談に向けスケジュール調整の真っ只中だったと思うが、トランプ大統領はよほど大相撲にご執心だったようで相撲協会も対応が大変だったと聞く。
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相撲
横綱鶴竜が実践する人材育成術~ ハラスメントの対極にあるもの
パワハラをはじめ、各種のハラスメントが社会問題化している昨今で、権力を有する者の立ち振る舞いが見直されている。そんなご時世の状況改善や人材育成のヒントになるような珍しい現象が、大相撲界に起きた。12日から始まった夏場所で、錣山部屋に所属する彩(いろどり)が新十両昇進を果たした。どこが特筆すべきことかといえば、横綱鶴竜に付いて身の回りの世話をする「付け人」たちが続々と十両に昇進し、角界で一人前とされる関取になっているのだ。そこには、後輩たちの力士人生をより良い方向に導く鶴竜の生きざまと考え方があった。
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大相撲
大物揃いの横綱審議委員会、ほんとに必要?
横綱・稀勢の里が土俵を去った角界。看板力士の不振という日本相撲協会にとって頭の痛い問題はひとつなくなったわけだが、まだまだ問題はある。それも同じ最高位、2人の先輩横綱だ。
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大相撲
横綱は引退で数億円の収入!?謎に包まれている退職金と引退相撲興行
稀勢の里の荒磯親方がスーツで出勤というニュースが出ていたが力士は引退すれば親方になる。それは大関以下の有資格者も同じことだ。ただし親方になるには年寄株と言われる年寄名跡を所持している者、あるいは借り受けた者で、かつ日本国籍を有していなければならない。親方になれば、いくら大横綱でもまずは管内の警備担当からというのが角界の慣わしだ。現在の相撲協会のトップ八角理事長も親方として最初の仕事は館内警備だった。前回は横綱の給料についてお話ししたが、今回は親方になるためにかかる費用から懐事情を探ってみよう。
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相撲
年収は少なくとも1億円!?語られることが少ない横綱の懐事情
「私の相撲人生に一片の悔いもございません」北斗の拳のラオウのような台詞を残して横綱・稀勢の里が土俵人生にピリオドを打った。改めて横綱論がテレビや紙面を賑わしているが、今回は横綱とお金の話をしようと思う。