『世界との差』を痛感させられたリオ予選

バスケットボール男子日本代表が『勝負の時』を迎えようとしている。11月下旬から始まるワールドカップ・アジア1次予選に向け、準備を本格化させているのだ。

日本代表の目標は2020年の東京オリンピック。ここに至る道は極めて険しい。『開催国の出場枠』は存在するが、それを行使するかどうかは2019年の時点でFIBA(国際バスケットボール連盟)が決定する。オリンピックに出場できるのは12カ国だけで、「開催国であってもレベルが低ければ参加させない」ということだ。現状では2019年に中国で行われるワールドカップに出場し、ベスト16以上の成績を収めることが基準とされている。

しかし、『世界の16強』に入るのは今の日本代表にとっては高すぎるハードルだ。現在、日本は世界ランク50位。アジアで上位に進出することさえも果たせていない。

去年からの道のりを振り返ってみよう。リオオリンピックの開幕を1カ月後に控えた昨年7月、『世界最終予選』が行われた。これはリオ出場を懸けた敗者復活枠のようなもの。日本はここに出場したが、ラトビアに48-88と完敗。続いてチェコにも71-87で敗れ、リオ行きの夢は断たれた。

Bリーグ開幕を控えてバスケットボールが盛り上がる気運がある中、田臥勇太が代表復帰し、NCAAで活躍する渡邊雄太も加える万全の体制で臨んだにもかかわらず、ラトビアとチェコに歯が立たず、『世界との差』を痛感させられた。しかし現実はもっとシビアで、ラトビアとチェコにしてもリオ出場権は得られず、世界では結果を出せていない。その程度の相手にも圧倒的な実力差を見せ付けられたのが1年3カ月前の出来事だった。

世界50位から16位へ、極めて難しいが失敗できない挑戦

©Getty Images

世界50位から16位への挑戦。これを成功させるには当たり前の強化をやっていたのでは到底無理だ。その判断から、この1年間は常識破りの強化が行われている。昨年秋からセルビア人コーチのルカ・パヴィチェヴィッチを招聘。Bリーグ期間中にもかかわらず毎月1回は代表強化の拠点となるナショナルトレーニングセンターに代表候補選手を集め、基礎から鍛え直した。スキル、フィジカル、メンタルとそれぞれに特化したコーチを付け、全体的な強化を図っている。

そして今年6月には、アルゼンチン人のフリオ・ラマスがヘッドコーチに就任。つい直前までサン・ロレンソというクラブチームを率い、アルゼンチンリーグ優勝を果たした『勝てる指揮官』だ。ただ、それでも東アジア選手権、アジアカップという2つの大会で優勝は果たせず。アジアカップではベスト16で韓国に敗れ、ベスト8進出すら果たせなかった。

Bリーグが始まり、毎週行われる試合でのプレーのクオリティは目に見えて上がっている。カネ回りが良くなったことで日本でプレーする外国籍選手のレベルも上がり、まだ力のある『元NBAプレーヤー』と当たり前のように対戦する環境も大きなプラスだ。そして、多くの観客に見られることが選手の意識を高めてもいる。また下のカテゴリーに目を向ければ、八村塁を擁するU-19代表がワールドカップで世界トップ10入りを果たすなど、こちらは結果も出している。

間違いなく進歩、成長はしている。ただ、2019年までに『世界の16強』になるには、そのスピードをさらに高める必要がある。そして何より、主観で測られるレベルアップ云々ではなく、『試合に勝つ』という客観的にも明らかな結果を求められているのが日本代表の現状だ。

代表強化が日本バスケ界の発展に直結する

©Getty Images

悠長なことは言っていられない。『世界の16強』を目指す以前に、まずはワールドカップ出場権争いに勝たなければ東京オリンピックへの道は断たれる。11月から始まるアジア一次予選では、フィリピン、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイと日本の4チームがホーム&アウェーで対戦する。上位3チームまでが二次予選に進出するのだが、オーストラリアは世界ランク9位、フィリピンが30位、そしてチャイニーズ・タイペイが57位。ランク通り『順当に』行けば日本は3位通過となる計算だが、今年6月に長野県で行われたアジアカップの前哨戦、東アジア選手権の準決勝で、日本はチャイニーズ・タイペイに敗れている。つまり、勝てる保証など全くないということだ。

二次予選をどう勝ち抜くかはまだ先の話。まずは11月から来年6月まで行われる1次予選を確実に通過するための準備をしなければならない。そこで代表は強引な手法を取った。10月中旬から、Bリーグの平日開催がある週を除いては毎週、強化合宿を実施することにしたのだ。本大会の登録枠12名の倍となる24選手を毎週東京に集め、強化とセレクションを図って1次予選に備える。

毎週主力を取られたのでは、Bリーグの各クラブは大いに困る。ケガのリスクがあるのはもちろん、選手は移動と練習で疲弊するし、ほとんどチームを離れるためチームプレーの熟成はほとんど進まない。アルバルク東京はエースの田中大貴を始め、竹内譲次、安藤誓哉、馬場雄大と主力をごっそり欠く。シーホース三河、川崎ブレイブサンダースも3選手が選ばれており、リーグ戦に影響が出るのは必至だ。

だが、どのクラブもこれに異を唱えたりはしない。東京オリンピックを目標に代表強化に全面的に協力することが、日本バスケ界の発展に直結すると理解しているからだ。選手も同様で、誰もが「めちゃくちゃ大変ですよ」と口にするが、その言葉とは裏腹に代表でプレーすることの意欲に満ちている。

これだけの自己犠牲を払っても、成功は約束されていない。1次予選通過さえもリスクがある日本にとって、ここを突破しても2次予選を勝ち抜いてワールドカップへの出場権を得るには相当なレベルアップが必要だ、さらにワールドカップでベスト16まで勝ち上がるとなると、また別の次元となる。

「世界観」の演出で観客を惹き付ける 千葉ジェッツが示すBリーグの可能性

2年目を迎えたBリーグの中で一際輝きを放っているのが千葉県船橋市を本拠にする千葉ジェッツふなばし。昨季は富樫勇樹を擁し天皇杯で優勝を飾るなど飛躍のシーズンとなったが、その実力とともに話題を呼んでいるのが、アリーナに足を運ぶだけで楽しめる「世界観」の演出だ。昨季はリーグトップだった観客動員数も好調で、Bリーグの成功例と言われる千葉ジェッツの魅力に迫る。(取材・文 大島和人)

VICTORY ALL SPORTS NEWS

旧NBLチームによるリーグ支配を認めない琉球、優勝を目指す「大勝負」に

bjリーグで4度の優勝を誇る琉球ゴールデンキングスは、大企業のサポートを受ける旧NBL勢とも十分に戦える、B.LEAGUEでも優勝を狙えると意気込んでいた。しかし、初年度は勝率5割を切る屈辱の結果に。旧NBLと旧bjリーグの間には歴然たる実力差があった。これを黙認して、安定中位のクラブに甘んじることも可能だったが、琉球は1年目のオフに「大勝負」に出る。日本代表のレギュラー2名を始めとする大型補強を実施。「沖縄色」というクラブのアイデンティティを曲げてでも、日本バスケ界の頂点に立つ強烈な意欲を見せている。B.LEAGUE2年目、琉球の戦いに注目だ。

VICTORY ALL SPORTS NEWS
Bリーグ初年度を盛り上げた小クラブの奮闘 来季は活気を維持できるかオリンピック出場権だけじゃない!2年目のBリーグに注目すべき理由ユニフォーム・サプライヤーの最新勢力状況(Bリーグ編)

VictorySportsNews編集部