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出世の定義:海外移籍、A代表キャップ、W杯出場

単に出世と言ってもその基準は各個人異なります。そこで、あくまでこの記事における基準を次のように設定します。
 
「A代表に入ったか」
「海外移籍をしたか」
「W杯に出場したか」
 
以上3点です。なお、「代表候補」はカウントしません。候補合宿などで呼ばれたものの、出場機会を得ないままの選手は多くいます。もちろんそれだけでもスゴいことですが、この記事においてはカウントしないことにします。
 
また、対象とするのはJリーグ発足後からの高校選手権としました。サッカー日本代表のプレゼンスを一気に押し上げたのはJリーグであるため(Jリーグ発足の目的もそれです)、こうした基準を採用しました。

歴代得点王リスト(1993年度~2016年度)

まずは、歴代の高校選手権得点王を見ていきましょう。
 
1993年度 第72回 野見山秀樹(鹿児島実)
1994年度 第73回 森崎嘉之(市立船橋)
1995年度 第74回 吉原宏太(初芝橋本)
1996年度 第75回 北嶋秀朗・日下亮(いずれも市立船橋)
1997年度 第76回 金古聖司(東福岡)河村優(藤枝東)
1998年度 第77回 林丈統(滝川第二)
1999年度 第78回 石黒智久(富山第一)
2000年度 第79回 大久保嘉人(国見)
2001年度 第80回 柴崎晃誠(国見)片桐淳至(岐阜工)
2002年度 第81回 平山相太(国見)
2003年度 第82回 平山相太(国見)
2004年度 第83回 山下真太郎(鹿児島実)糠谷祐真(前橋商)福士徳文(盛岡商)
2005年度 第84回 迫田亮介(鹿児島実)
2006年度 第85回 小室俊之(作陽)
2007年度 第86回 大前元紀(流通経済大柏)
2008年度 第87回 大迫勇也(鹿児島城西)
2009年度 第88回 山本大貴(ルーテル学院)
2010年度 第89回 樋口寛規(滝川第二)
2011年度 第90回 浅野拓磨(四日市中央工)
2012年度 第91回 小屋松知哉・仙頭啓矢(いずれも京都橘)
2013年度 第92回 渡辺仁史朗(富山第一)長谷川覚之(神戸弘陵)
2014年度 第93回 大田賢生(星稜)高沢優也(流通経済大柏)田場ディエゴ・中村恒貴(いずれも日大藤沢)河野翔太(日章学園)君垣隆義(米子北)坂本和雅(聖和学園)
2015年度 第94回 村上光樹(帝京第三)
2016年度 第95回 鳴海彰人(青森山田)
 
1993年~2016年までに誕生した得点王は以上の36名。この中から、まず「A代表で出場を果たした選手」で絞り込むと次の通りになります。

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A代表で出場した選手は6名

1995年度 吉原宏太(初芝橋本) 1試合
1996年度 北嶋秀朗(市立船橋) 3試合1得点
2000年度 大久保嘉人(国見) 60試合6得点
2002年度 平山相太(国見) 4試合3得点
2003年度 同上
2008年度 大迫勇也(鹿児島城西) 25試合7得点
2011年度 浅野拓磨(四日市中央工) 17試合3得点
 
この時点で、6名まで絞られました。36名中6名が多いのか少ないのかですが、日本代表という日本人サッカー選手の頂点に君臨するチームに約2割の選手を送り込んだ……と考えれば、高校選手権得点王の価値はまだまだ大きいといえるでしょう。
 
ここに「海外移籍」という条件を加えると、こうなります。

A代表入りし、かつ海外移籍した選手は4名

2000年度 大久保嘉人(国見)
⇒マジョルカ、ヴォルフスブルク
 
2002年度・2003年度 平山相太(国見)
⇒ヘラクレス・アルメロ
 
2008年度 大迫勇也(鹿児島城西)
⇒1.F.Cケルン

2011年度 浅野拓磨(四日市中央工)
⇒シュツットガルト(アーセナル)
 
大久保嘉人、平山相太、大迫勇也、浅野拓磨の4選手に絞られました。それにしても、16年前の大会得点王である大久保選手がいまだ現役バリバリなのはスゴいの一言です。そして、ここにさらにワールドカップというフィルターをかけると……。

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海外移籍し、W杯出場を果たした選手は2名

2000年度 大久保嘉人(国見)
→2010南アW杯(4試合)、2014年ブラジルW杯(3試合)
 
2008年度 大迫勇也(鹿児島城西)
→2014年ブラジルワールドカップ(2試合)
 
大久保選手、大迫選手の2名に絞られました。ここで雌雄を決すべく、3要素以外にも様々な要素を考慮しましたが、大久保選手は得点王はじめ多くの個人タイトルを獲得していますが海外ではそれほど目立った活躍はできていません。ただし、W杯の出場試合数は大迫選手を上回ります。
 
一方、大迫選手は大久保選手ほど個人タイトルを保持していませんし、W杯の出場試合数も大久保選手の後塵を拝します。ですが、現在プレーするケルンでは主軸として80試合以上に出場しており、海外でのプレー経験では大久保選手をしのぐものがあります。
 
すでに「A代表」「海外移籍」「ワールドカップ出場」という基準をクリアしたトップレベルの両雄、甲乙つけがたい名手です。どちらが上と決めつけるのも野暮というものでしょう。
 
よって本稿の結論、出世頭は大久保嘉人・大迫勇也の両選手に決定しました! 
 
もちろん、今回の評価軸は一つの視点にすぎません。あくまで「A代表」「海外移籍」「ワールドカップ」で絞っただけのことであり、他の軸を採用すれば変わってくるでしょう。
 
皆さんの評価はいかがでしょうか? ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください。

<了>

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VictorySportsNews編集部