「もっと変えていこうとする力があれば、変えられるものも多い」

―奥原選手は、YouTubeやSNSなどで、積極的に情報発信をされていると思うのですが、そういった活動を始めようと思われたきっかけはありますか?

奥原:元々、ヨーロッパの選手が試合後に、写真と共に試合の感想を書いているのを見て、それを真似しようと思ってはじめました。自分の反省にも役立ちますし、直接ファンにメッセージを届けられるっていうこともありますし。最初は日本語だけでやっていたんですけど、海外のファンもいらっしゃるので、是非英語でも書いて欲しいと言われて、日本語と英語で書くようになっていきました。そんな中で、投稿するのが当たり前になっていたんですが、コロナ禍で試合がない中で、何を伝えればいいんだろうっていうのは考えていました。

―そのコロナ禍でも継続して発信をされていましたよね。

奥原:応援してくださるファンの方たちのために、何かできないだろうかと考えて。毎日私の投稿を見て、少しでも元気になってもらえたらいいなと思って、投稿していました。それでも自粛期間は、怠けようと思えば怠けられる時間で。オリンピックもどうなるかわからないし、私にとっても葛藤があったんですけど、日記みたいに投稿していくことで、自分も何かをやる活力にもなりましたし、皆さんにとっても活力になればいいなという思いで発信し続けていました。

「もっとエンターテインメント要素を大きくしていかないと」バドミントン界への提言

―バドミントン界の中ではあまり例のない「プロ」として活動されていますが、実業団所属のときとの違いはありますか?

奥原:私としてはプロだからできる、できないって思われたくなくて、バドミントンのトップ選手みんなに、良い方向へ向かおうって思ってもらいたいですね。現状維持じゃなくて、もっと変えていこうとする力があれば、変えられるものも多いので、みんなの力を借りながらやっていきたいと思っています。

―そんな中で、奥原選手が感じられる、日本のバドミントン界の課題はどのあたりにあるとお考えですか?

奥原:もっとエンターテインメント要素を大きくしていかないと、直接お客さんが会場に観に行きたいとは思わないんじゃないかなと。スポーツの迫力を感じるために、会場へ観に行こうと思ってもらえるようにしたいですね。競技人口自体は多いんですが、「観戦人口」っていうのを、もっと増やしていかなければならないと思っています。私たちとしても、リモート応援より、直接声援を受けた方が嬉しいので。特にインドネシアの会場は声援がすごくて、シャトルを打つ音とかも聞こえないですけど、お客さんが楽しんでいる雰囲気もすごく伝わってきます。シャトルを打つ音が聞こえないっていう、プレーに向いた環境とは言えない状況なんですが、それでもバドミントン選手はみんなインドネシアでプレーしたいって言いますね。

―そんなに観客の皆様の力は大きいんですね。

奥原:観客の皆様がどれだけ楽しんでいるかが。私たちのモチベーションにもなるので、日本のスポーツ全体の観戦においても、盛り上がっていって欲しいですね。選手たちがバドミントンに限らず、他のスポーツでも世界トップで活躍することが多い中、せっかく身近でこんなに大きなイベントがあるのに、それを十分に楽しめていないというか。終わってからその大会を知ったとかであれば、本当にもったいないと思いますし、日常生活の一部にスポーツがあってほしいなって思います。

―スポーツ観戦人口を増やしていくためには、どのようなことが必要だとお考えですか?

奥原:会場に行くまでのハードルをなくしていくこと、そして会場に行くまでの労力を使ってまで、見に行きたいと思えるエンタメを作っていかないといけないと思います。ただ試合を観るだけだと、リモートでいいかなって思ってしまうので、試合以外の部分でも積極的に取り組んでいかなければならないと思います。飲食だったり、それこそ飲酒も認めて、体育館の中で販売するとか。そういう施策でどんどん、スポーツ観戦をエンタメ化していくことが必要かなと。

(C)ベースボール・マガジン社

五輪延期は「しょうがない」

―話は変わって、近況についてお伺いしますが、直近の日本代表合宿はどうでしたか?

奥原:みんなビクビクしている感じもなく、ソーシャルディスタンスは保ちながらでしたけど、久しぶりに代表レベルの選手と思いっきり打ち合えたので、いい刺激になったかなとは思います。楽しかったですね。

―練習内容はいかがでしたか?

奥原:最初は検査結果が出るまでは、できるだけコートに入らなかったんですけど、結果が出てからは、少しずつ今までに近い形でやれるようになっていきました。

―合宿問わず、コロナ禍も含めて、どのように練習をこなされてきましたか?

奥原:半年間ずっと練習してきて、怪我はほぼなく、短期集中で質の良い練習ができています。今、一番状態がいいですね。そんな中でも課題がないわけではなくて、でも前に進めているのが、試合がない中でも実感できているので、今までやってきたことが形になっているのかなとは思います。

―試合がない中だと、中々成長を実感できるタイミングもないのかなと思うのですが。

奥原:いつもは男子選手に相手をしてもらっているんですけど、今回の代表合宿では女子の選手とシャトルを交えることで、やっぱり男子選手の方がスピードが速い分、女子選手に通用する部分が実感できましたね。

―今後、ようやく試合が再開されると思うのですが、率直なご感想をお聞かせください。

奥原:やっと試合ができるなって感じです。今の状態でどこまで自分が通用するのかっていう意味で、挑戦して行こうと思っています。相手が格下であっても、自分のやってきたことを試せる場だと思います。去年は一回もタイトルが取れなかったんですけど、自分の中でその理由がやっとわかったし、だからこそ早く試合がしたいなと思っています。

―オリンピックの延期についてはどのようにお考えですか?

奥原:アスリートが試合をしたいって言うのは。世間の方からしたら「何言ってんだよ」っていう受け止められ方でしたし、仕方ないとは思っていて、あまり驚きもしなかったですね。延期になった現実は変わらないし。率直に私は練習が今までできていなかったので、延期を聞いて嫌な感じはしなかったです。ただ、この一年が私にとって長く感じたのか、短かったのか、よかったのか、悪かったのかっていうのは結果でしか何とも言えないので、今一瞬を大切に、悔いがないようにやっていくしかないなと。この半年の練習は充実しているので、延びてよかったかなとは今は思っています。

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VictorySportsNews編集部