両者の対決はたったの1分49秒で終わった。ベウフォートの左アッパーでダウンしたホリフィールドは再開に応じたものの追撃に遭ってストップ。1ラウンド2分で行われたが、結果的にそんなルールすら必要なかったのである。

 これを受けて米国では、オールドタイマーのこうしたファイトはもうやめるべきだ――という議論がわき起こっている。ボクシング殿堂にも入っている元チャンピオンの悲惨な姿を見たくないという意見はもっともだが、そのうち恐ろしい事故につながりかねないと懸念されているのだ。

 問題のひとつは、今回のホリフィールド戦がエキシビションなのか、それともまさか公式戦として行われるのか曖昧だったことだ。12オンス・グローブ着用、1ラウンド2分制を決めても直前までもめていた。最終的にエキシビションマッチとなったものの、公式試合との境目はかなりぼやけたままだったろう。実際にベウフォートは倒す気満々で老雄に襲いかかったのである。ショー的な要素はなかった。

 そもそもベウフォートは元6階級制覇王者のオスカー・デラホーヤ(48歳)の相手だったが、デラホーヤのコロナウイルス感染によりホリフィールドにお鉢が回ってきたという経緯がある。それが本番の8日前のことだから無茶な話である。当初計画されたカリフォルニアの地では州の許可が下りず、フロリダ州に会場を移さねばならなかった。

 ホリフィールドやデラホーヤ(復帰はかなわなかったが)に限らず、最近とくにアメリカでは、ひと昔どころかふた昔も前に活躍した元著名ボクサーの“カムバック”が流行っている。最たる例は昨年11月に行われたマイク・タイソン-ロイ・ジョーンズJrのエキシビションマッチだが、規定の8ラウンド(1ラウンド2分)を両者戦ったこのイベントは興行的に大成功をおさめた。

 この一戦も賛否両論あったものの、客を満足させたという点でいくつかのメディアから評価された。ペイパービューは160万件といわれ、タイソンはエキシビションで1000万ドルを稼いだ。

 近年のリングシーンの新たなブームは、元王者たちのカムバックだけではない。たとえばユーチューバー・ボクサーはこれまでの常識ではちょっと考えられないような存在だ。

 有名なユーチューバーであるローガン&ジェイクのポール兄弟が代表例。2018年8月、兄ローガンはイギリスのユーチューバーKSIとアマチュア戦を行った。これが大ヒットし、翌年にプロのリングで再戦。“デビュー×デビュー”のクルーザー級6回戦は世界戦を差し置いてのメイン扱いで、ともに1億円近くの報酬を得たという。

 ローガンはその後プロのリングに立っていないが、今年6月にフロイド・メイウェザーとエキシビションマッチを行い1500万ドルも手にした(メイウェザーは1億ドル以上といわれている)。

 弟のジェイクはプロ選手として活動を続けているが、4戦無敗のルーキーとは思えない大金を手にしている。8月の最新の試合はクルーザー級8回戦で判定勝ちし、200万ドルをゲット。驚くべきことに対戦相手のタイロン・ウッドリー(元UFC王者)もボクシング初戦であるにもかかわらず同額をもらったそうだ。オリンピック・チャンピオンでさえこんなにもらえない。

 ちなみにこのジェイクに対戦を呼び掛けているのが、ホリフィールドに勝ったベウフォートである。「勝ったほうが2500万ドルを総どり」とぶち上げている。

 ベウフォートのような総合格闘家のボクシング参戦も流行中である。メイウェザーのプロ50戦目の相手を務めたコナー・マクレガー(デビュー戦)もそうだったし、アンデウソン・シウバ(46歳)は今年6月、16年ぶりにボクシングに戻って元世界ミドル級王者のフリオ・セサール・チャベスJrに8回判定勝ち。プロボクシングの戦績を3勝1敗と更新すると、9月には同じ総合格闘家のティト・オーティスとボクシングで対戦して話題をふりまいた。

 名はあっても実力的に前座クラスのファイターが、より実力のある選手をしり目に堂々とイベントの目玉になる――新ジャンルの出現について、眉をひそめるボクシングファンも多いが、現状、大衆に受けているのは間違いない。たしかにボクシングに新規ファンを呼び込む効果を想像すれば結構なことだろう。元王者たちにしても、エキシビションに登場して元気な姿を見せてくれるのなら、決して悪いことばかりではない。

 ただし“マッチメーク”は肝心である。たとえば長いボクシング人生を送り、戦い終えて何年も経っている老雄を、現在の力を十分に把握せずにリングに引っ張り出すのは大きなリスクを伴う。ホリフィールドが最悪の事態に見舞われなかったのは単に幸運といえるかもしれない。ホリー本人はタイソンとの“第3戦”に意欲を見せているというのだが……。

VictorySportsNews編集部

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