これを受けて出場選手登録(一軍)29人のうち、キャプテンの山田哲人、大ベテランの青木宣親、球宴ファン投票選出の塩見泰隆、正捕手の中村悠平などなど、陽性判定を受けた15人を抹消。11日から行われる予定だったイースタン・リーグの対読売ジャイアンツ3連戦(戸田)を中止して二軍から選手を大量に引き上げ、12日から中日ドラゴンズとの3連戦に臨むことになったのである。

 野手では、本塁打と打点でリーグトップを行く4番の村上宗隆こそ健在ながら、そこまでレギュラーとしてプレーしてきた選手の大半が不在。投手陣ではチームトップの15ホールドを挙げていた左腕の田口麗斗、昨年まで2年連続最優秀中継ぎの清水昇らも登録を抹消された。首位を独走しているとはいえ、非常事態と言っていい。

「そうですね。戦力は整っていないし、選手はある程度、不安を抱えながらやることになると思います。そこで明らかに今までとはどこか違う野球になったり、(チームとしての)動きになってくると、選手っていうのはその辺は敏感だから、上手くいかなくなった時にどうなるのかっていう心配はありますよね」

 そう話すのはヤクルトのOBであり、現在は野球解説など幅広い分野で活躍を続ける五十嵐亮太氏である。

「確実に戦力としては落ちてるんで、どういった戦いになるのかっていうのは今のところ僕にも想像つかないですね。ただ、上手くいかないことがあっても、みんなで上手くやっていきましょうっていう、チームとしての組織力は強いと思うので、そこまで心配はしていないんですよ」

 陽性判定を受けた髙津監督に代わり、監督代行としてチームの指揮を執るのは松元ユウイチ作戦コーチ。五十嵐氏が入団した翌年の1999年にブラジルからの野球留学生としてヤクルト入りし、現役引退後は二軍打撃コーチ、一軍打撃コーチを歴任するなど、今年でチーム一筋24年目という生え抜きである。

「ずっとヤクルトにいて、ヤクルトの野球がどうなのかっていうのは二軍も含めて見てきている。今年からは作戦コーチとして、髙津監督がどういう野球をやってきたかっていうのは本人の中に染みついていると思うので、あくまでも留守を預かるという感じになると思います。何なら試合中も、髙津監督がこっそり電話か何かで指示を出すんじゃないかと思ってるんですけど(笑)。まあ冗談はともかく、何か大きく変わることはないと思いますよ」

最大のピンチも、プラスに転じる可能性がある

 とはいえチームにとっては今シーズン、最大のピンチ。その状況も、プラスに転じる可能性があると五十嵐氏は指摘する。

「フタを開けてみないと分からないですけど、これまでもこういった逆境を乗り越えてきたチームなんでね。もちろん、まずは陽性判定を受けた人たちが重症化しないようにっていうことが大前提で、そこを心配しつつも、今までの髙津ヤクルトを知ってる人たちなら、今回のことでまた若い選手が出てきたりだとか、何か良い方向に行くんじゃないかなっていう楽しみもあると思うんですよね」

 4年ぶりにセ・パ交流戦を制し、そこからは首位独走状態のヤクルトは、投打ともにほぼ固定された陣容で戦ってきた。そのためファームで好成績を残しながらも、一軍から声がかからなかった選手も少なくない。若手でいえば、イースタン・リーグでトップの18盗塁、同2位の打率.293、同1位の出塁率.372をマークしていた大卒2年目の外野手、並木秀尊などはその筆頭格といえる。

「チームの状態が良いと(一軍と二軍の)入れ替えっていうのもなかなか活発にはならないので、今まで(一軍に)上がって来れなかった選手にとっては大きなチャンスですよね。そういった選手たちがどういうパフォーマンスを見せるのかっていうのは、気になります」

 これまでチャンスに恵まれなかった選手がもしここで結果を出せば、それはチームにとってさらなる活性化につながる。もっとも、それは若手に限った話ではない。両リーグで首位打者に輝いた実績を持ち、今季はイースタンで打率.333、3本塁打、25打点をマークしながらも一軍でプレーする機会のなかった22年目の大ベテラン、39歳の内川聖一もここへ来て昇格の機会を手にした。

「年齢がかなり上になってきて(一軍に)上がらないとなると、精神的な部分も含めて良い状態を維持するのって難しいんですよ。年齢を重ねた分、体力的にも難しいんですけど、彼はそれを保ってきている。ここで結果を出すか出さないかっていうところで、彼にとってはすごく大事になるんじゃないかなと思いますね」

 12日に豊橋で予定されていた中日との3連戦初戦が雨天中止となり、松元監督代行にとっての初陣となった13日のバンテリンドームでの試合。ヤクルトは初回に村上の2ランで先制しながら逆転負けを喫したものの、1番・中堅でプロ初スタメンの並木が第2打席で三塁打を放つなど、さっそく結果を出してみせた。

 続いてバンテリンドームで行われた14日の試合では、3番・左翼で411日ぶりにスタメンに名を連ねた内川が、初回に通算2183安打目となる二塁打で先制点をお膳立て。それでもチームは追加点を挙げることができずに1対4で敗れ、3試合の中止を挟んで3連敗となり、マジックナンバーも消滅してしまった。

「(チームが)崩れるのってけっこう早いんですよ。僕も(福岡)ソフトバンク(ホークス)時代に経験があるんですけど、一気に負け始めると勝ち方が分からないみたいになって、そうなるとどう対処したらいいか分からなくなるんです。ここまでヤクルトは連敗が少なかったですけど、いったん連敗し始めるとそうなってしまう可能性もなくはないと思うので、それは避けたいですよね」

 中日戦を前に、五十嵐氏はそう警鐘を鳴らしていた。その後も敵地・横浜で7月15日の雨天中止を挟んで横浜DeNAベイスターズに連敗し、本拠地の神宮に戻って18日の巨人戦も落としたヤクルトだったが、続く19日の同カードに勝ってようやく連敗を6で止めた。

 17日には、4月に米国で左ヒザ半月板のクリーニング手術を受けたドミンゴ・サンタナが一軍に復帰し、18日の巨人戦で2ホーマー。18日には陽性判定により登録を抹消されていた長岡秀樹、内山壮真ら3選手が再登録され、19日の試合前練習には山田が姿を見せるなど陣容は徐々に整いつつあるが、「チームスワローズ」がここからどう状態を立て直し、後半戦につなげていくのか──。オールスター休みを前に、前半戦の残り4試合からも目が離せない。

菊田康彦

著者プロフィール 菊田康彦

1966年、静岡県生まれ。地方公務員、英会話講師などを経てメジャーリーグ日本語公式サイトの編集に携わった後、ライターとして独立。雑誌、ウェブなどさまざまな媒体に寄稿し、2004~08年は「スカパー!MLBライブ」、2016〜17年は「スポナビライブMLB」でコメンテイターも務めた。プロ野球は2010年から東京ヤクルトスワローズを取材。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』、編集協力に『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』などがある。