「今回の目玉はなんといっても大谷(翔平、エンゼルス)です。戦力としても注目としても、彼が出るのと出ないのとでは、WBCの意味合いっていうところも大きく変わってくると思うので」
その大谷を「前編」では1番・DHで使いたいと話した五十嵐氏だが、もし自身が監督なら投手としてはどのように起用するのか?2月5日(現地時間2月4日)にはエンゼルスのペリー・ミナシアンGMがWBCでの二刀流を容認したとも伝えられており、五十嵐氏は大谷を投手で使うことが可能ならば、やはり最後の大一番を任せたいという。
「僕の中では決勝は大谷です。もちろん必ずそこまで行くとは限らないですけど、決勝まで行ったらもう大谷しかいないですよ。だから、まずはそこありきで考えたいですね」
過去2回、2013年と2017年はいずれも米国での準決勝で敗退した侍ジャパンにとって、WBCでの王座奪還は悲願。決勝まで進んだ場合は、大事な先発マウンドを大谷に託したいと力を込める。もっとも、3月22日(現地時間3月21日)にマイアミで行われる決勝戦に進出するには1次ラウンド、準々決勝、準決勝という3つのステージを勝ち上がらねばならない。そこまでのプロセスはどう考えるのか?
「やっぱり(メジャーリーガーの)ダルビッシュ(有、パドレス)、大谷と、NPBで言ったら山本由伸(オリックス)。この3人が投手陣の中心になることは間違いないと思います。さっきも言ったように決勝まで行ったら大谷に任せるとして、1次リーグでもポイントになりそうな韓国戦はダルビッシュで行きたいですね。初戦の中国は相手としては楽な印象がありますけど、一発目は絶対に勝っておきたいので山本ですね」
日本が1次ラウンドのプールB(東京プール)で戦うのは中国(3月9日)、韓国(10日)、チェコ共和国(11日)、オーストラリア(12日)の4カ国。ここで上位2チームに入れば、16日に同じく東京ドームで行われる準々決勝に進出するのだが、WBCには投手が50球以上投げた場合は中4日、30球以上では中1日以上の登板間隔を空けなければならないとの規定があり、起用に当たってはその辺りも考慮する必要がある。
「準々決勝の相手はプールA(チャイニーズタイペイ、オランダ、キューバ、イタリア、パナマ)の上位2チームのどちらかですよね。山本、ダルビッシュを中国戦、韓国戦で使っておけば(山本は中6日、ダルビッシュは中5日で)そこに持って行くことができる。先発しなかったほうは中継ぎに入れてもいいし、次の準決勝に持って行ってもいいですよね」
ただし、日本が準々決勝に勝って21日(現地時間20日)にマイアミで行われる準決勝に進んだ場合、五十嵐氏には先発で起用したい投手がいるという。
「勝ち負けっていうのが大前提なんですけど、アメリカのファンも佐々木朗希(ロッテ)は見たいと思うし、見せたいですよね。昨年(11月)の強化試合ではフォークが自分のイメージとの誤差があったみたいなので、その辺をどう修正できるかっていうところはありますけど、ボール(WBC公式球)に慣れてくれば問題ないと思います」
昨年は史上最年少の20歳で完全試合を達成し、メジャーリーガーにも引けを取らない最速164キロを誇る佐々木を米国のマウンドに立たせる。これで五十嵐氏の思い描く「世界一ローテ」が見えてきた。残る1次リーグのチェコ戦(3月11日)、オーストラリア戦(12日)の先発は誰に任せるのか?
「今回のメンバーを見ると先発の数が多くて、球の強さであったりコントロールっていうところも安定した選手が揃っているので、誰に任せてもいいと思うんですよ。本当は佐々木、大谷に一度投げさせておきたいところですけど、その辺で制限があるようなら、チェコ戦は宮城(大弥、オリックス)、オーストラリア戦は今永(昇太、DeNA)の両左腕で考えたいですね」
WBCには「球数制限」のルールもあり、1次ラウンドは65球、準々決勝は80球、準決勝以降は95球まで(打席中に上限に達した場合はその打席完了まで)と決められている。その点を踏まえ、五十嵐氏は1次リーグでは先に名前を挙げた先発投手と、戸郷翔征(巨人)、高橋奎二(ヤクルト)、高橋宏斗(中日)の「第2先発」をセットで考えたいという。その上で「投のキーマン」には、やや意外な名前を挙げる。
「めちゃくちゃ役割が大きくなりそうなのが伊藤大海(日本ハム)です。国際試合(東京五輪)でも結果を残してるし、安定感や使いやすさを考えても彼は計算できる。試合が壊れるか、なんとか持ちこたえるかっていうところで、絶対に何とかしてくれるピッチャーですよ。どうしてもダルビッシュや山本由伸、佐々木朗希が注目されるんですけど、僕は伊藤がキーマンになると思います。栗山監督とも(日本ハムで)一緒にやってますしね」
ちなみに五十嵐“監督”の構想では、抑えは東京五輪でもクローザーを担った栗林良吏(広島)。彼に繋ぐセットアッパーは、右の大勢(巨人)、湯浅京己(阪神)、宇田川優希(オリックス)に左の松井裕樹(楽天)。投打ともに充実のメンバーでWBCに挑む侍ジャパン。2009年以来となる、世界一の可能性は─。
「可能性はめちゃくちゃ高いです。ただ、他の国も戦力を揃えているので、どういった戦い方をするかとか、その時その時の状況によって監督がどう動くのかが、勝敗を大きく分けると思います。あとはこういう(代表)チームって、監督の考えに選手がどれくらい対応できるかっていうのも大事ですよね。何かイレギュラーなことが起きたときの対応能力の高さが大事になるんですけど、今回はダルビッシュのような(ベテラン)選手がいますし、若い選手でも村上(宗隆、ヤクルト)なんかは代表も経験していて、そういった空気感をつくるのは得意だと思うので、楽しみですね」
日本が金メダルに輝いた東京五輪と違い、WBCには日本のみならず多くの現役メジャーリーガーが出場する。これだけの豪華メンバーを揃えたとはいえ、決して楽な戦いにはならないだろうが、五十嵐氏の言うとおり「楽しみ」なのは間違いない。コロナ禍のあおりを受けて予定よりも2年遅れ、6年ぶりに開催される野球の世界一決定戦は3月9日、東京ドームで幕を開ける─。
五十嵐氏構想の先発ローテ
◎1次リーグ
3月9日中国戦:山本由伸(オリックス)
3月10日韓国戦:ダルビッシュ有(パドレス)
3月11日チェコ戦:宮城大弥(オリックス)
3月12日オーストラリア戦:今永昇太(DeNA)
◎準々決勝
3月16日:山本/ダルビッシュ
◎準決勝
3月21日:佐々木朗希(ロッテ)
◎決勝
3月22日:大谷翔平(エンゼルス)
※日付はすべて日本時間
「栗山監督じゃないとここまで揃えられなかった」 五十嵐亮太がもし監督だったら、の視点で考えてみた
いよいよ開幕までおよそ1カ月となった第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。2月17日からは日本代表の宮崎合宿がスタートするが、彼ら「侍ジャパン」は2009年以来の王座奪回に向け、世界とどのように戦うのか?現役時代は投手として日米球界で23年間にわたってプレーし、引退後は解説者やコメンテーターとしてさまざまなメディアで活躍を続ける五十嵐亮太氏に「監督目線」で予想をしてもらった。まずは野手を中心にした「前編」から。