サッカー日本代表キャプテンである遠藤は「2024 SAMURAI BLUE COLLECTION」のスーツを着用し、ヴィンテージカーに乗って来場。「初めてこのような車に乗せていただき、周りの方たちもざわざわというか、注目していただいたので、すごく良い経験ができました。こういう車に乗って格好いいと思われる男になりたいと思いました」と、うれしそうに感想を述べた。
 
 大勢の報道陣が集う中で行なわれたトークショーでは、着用している「2024 SAMURAI BLUE COLLECTION」について聞かれ、「着心地がすごくいいですね。僕はデザインも含めてとても気に入っています」とニッコリ。

 さらには25年という期間に思いを巡らせながら、「長らく日本代表を支えてくれているということに感謝しかありません。今回、僕がイギリスのリバプールに在籍しているタイミングで新しいデザインのスーツができて、それを僕が着て、今ここに立っていることは幸せだなと思っています」と噛みしめるように言った。

 前述の通り、ダンヒルは25年にわたってサッカー日本代表をサポートしており、2002年日韓ワールドカップの出場選手たちはもちろんのこと、新たな日本代表選手が誕生する度にスーツ制作のための採寸を行っている。

 遠藤が代表選出時の“儀式”である公式スーツの採寸を初めて行ったのは、湘南ベルマーレに所属していた2015年7月。EAFF東アジアカップ2015に出場する日本代表メンバーに選ばれたときのことだった。
当時のことをよく覚えているという遠藤は、「代表選手としていつも着させてもらっていますし、このスーツを着ると、これから試合に向かっていくんだと、いつも気が引き締まります。見られているという気持ちにもなるので、しっかりと着こなして試合に向かって行くというイメージです」と語る。

 初代表選出から9年がたち、この間に所属クラブは浦和レッズ、シント=トロイデン(ベルギー)、シュツットガルト(ドイツ)、リバプールと着実にステップアップしてきた。日の丸をつけてのプレーも2016年リオデジャネイロ五輪、2018年ロシアワールドカップ、2021年東京五輪(オーバーエージ枠)、2022年カタールワールドカップと、主要大会を次々に経験してきた。

 現在の体のサイズを聞かれると、「初めて選出された頃に比べると海外も経験して体格が良くなっていますね。腿やお尻周りのサイズは毎回少しずつサイズが変わっていると思います」と笑顔を交じえて告白した。

 トークセッションではサッカーの話も多く語られた。遠藤は昨夏にブンデスリーガのシュツットガルトからイングランドの名門・リバプールへ移籍。シーズンが開幕してからしばらくは途中出場や途中交代が多かったが、中盤以降はクロップ前監督の信頼を得て一気に存在感を上げていった。そして、昨年12月にはチームでただ1人、全8試合に先発し、日本人初のチーム月間MVPに選ばれるという快挙を演じた。

 8月に始まる新シーズンに向けては、まず「来季もリバプールでプレーすると思います」と言い、「リバプールでもっともっと試合に出場して、チャンピオンズリーグなどのタイトル獲得に貢献できるだけの活躍をしたい」とコメント。

 そのためには、「やはりもう1段階レベルアップしたいと思っています」と宣言する。

 「守備で言えば、もちろん1対1、ボールを奪うことが仕事なのですが、よりボールを奪える選手になりたいと思っていますし、今は中盤の選手もかなり攻撃参加を求められるので、守備だけではなく、ゴールや、アシストなどゴールに直結するようなプレーももっと増やしていきたいと思っています」

 そして、つねに上昇ロードを歩めている理由として遠藤自身が考えていることについても言及した。

 「自分は常に自分の良さとは何であるのか、日本人らしさとは何なのかを考えながらサッカーをしています。どうすればスタメンを取れるのか、どうすれば屈強な相手に対して1対1で勝てるのか、ボールを奪えるのか。プレー中は常にそういうことを考えている。それは自分自身の良さだと思う。何をしなければいけないのかを自分の中で客観視しながら行動していくというのは、プロ生活を歩んでいく上では非常に重要な要素の1つになっていると思っています」

 遠藤と言えば「デュエル」が代名詞になっているように、1対1の局面で無類の強さを発揮する選手として評価が高い。ただ、遠藤自身は、デュエルと同格かそれ以上に武器だと思っている要素がある。それは
「クレバーさ」だ。

 「1対1で勝つには、やっぱりクレバーでなければいけない。ある程度、賢さは必要だと思う。自分の最大の特長は多分そういったところ。プレーを俯瞰して見ながら、ピッチ上で表現できるのは隠れた能力というか、なかなか目に見えない部分ではあると思います」と言い、“デュエル王としての遠藤航”を支える武器が何であるかを明かした。

 具体的には、「その前のポジショニングだったり、予測だったり、相手が何を考えているのかを常に考えながらポジション取りをしています。1対1で勝つ以前に、いろんな準備をした中でプレーの選択をしています」という。

 遠藤がサッカーを始めたのは小学1年生だった1999年で、ダンヒルが日本代表とパートナーシップを締結したのは2000年4月。「遠藤航のサッカー歴」と「ダンヒル&サッカー日本代表のパートナーシップ」はどちらもほぼ25年。奇遇な数字にちなんで、“25年間、大切にしていること”を聞かれるとこのように答えた。

 「サッカーが心の底から大好きで、純粋にサッカーを楽しむ気持ちを持ち続けています。その気持ちはプロになってからも忘れたくないと自分の中でずっと思っていました。だからこそ、リバプールや日本代表キャプテンに辿り着けたのだと思います」

9月には北中米ワールドカップ・アジア最終予選が始まる。

 「僕がキャプテンに就任した時にワールドカップ優勝を公言させていただいたので、そこが最大の目標になります。最終予選ではキャプテンとしてしっかりチームを引っ張って、ワールドカップに導ける存在になれればいなと思っています」

 今、遠藤はしみじみと考えている。

 「ワールドカップでプレーしたいという思いや、日本代表に入りたいという思いは子どもの頃から持っていましたが、まさかキャプテンになるとまでは、小さい頃は思い描いていませんでした。でも、こうやって夢や目標を少しずつ叶えてきて、こうやって今ここにいて日本代表キャプテンとしてプレーできていることは、すごく幸せだと思います」

 最後に、子どもたちへのメッセージを聞かれ、このように言った。

 「とにかくサッカーをすることを楽しんでほしいです。一番大事なのはサッカーを楽しんでやれているかどうか。もちろん自分に対して厳しさがなければサッカー選手になれませんが、時にはリラックスして“自分はなぜサッカーをやっているんだっけ”と思い出していきながら頑張ってほしいと思います」

 遠藤は今、プレミアリーグ優勝もチャンピオンズリーグ優勝も目指せる立場にいる。ほんの数年前なら、日本人がこの2つを現実的な目標に据えられると誰が想像できただろうか。

 「ワールドカップ優勝」という目標もそれと同じかもしれない。ダンヒルのスーツがよく似合う遠藤が向かう先には、夢の実現が待っていそうな気がしてくる。


矢内由美子

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。ワールドカップは02年日韓大会からカタール大会まで6大会連続取材中。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。