引退試合でさすがの活躍 ロッテ次期監督に決まった井口

6月20日に引退宣言をし、8月末に登録抹消。以前『VICTORY』で取り上げた引退特例の適用で「6番・DH」での試合出場を果たした井口選手。バックスクリーン右への同点弾を放ち、自らの花道を飾るスターぶりはさすがの一言でした。横浜DeNAベイスターズの元社長、池田純氏は井口選手の引退試合の盛り上がりを絶賛します。

「引退試合はとても大切な試合なんです。選手にとってもお客さんにとっても印象深いものになる。その試合で打ってくれるというのは本当に素晴らしいですよね。“持ってます”よね」

井口選手の現役最後の輝きを手放しで絶賛する池田氏ですが、来季からの監督就任が既定路線といわれる井口選手の引退後のキャリアについては、心配な点があるようです。

「引退後すぐに監督をするのか、というのが率直な感想です」

近年は、2014年から選手兼任監督を務めた中日の谷繁前監督、引退後に即監督に就任した巨人の高橋監督など、現役後に間を置かずして指導者への道を歩むケースが目立ちます。

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「このチャンスを逃したら…」 選手の心にある思い

現役引退から即監督に就任したのは、長いプロ野球の歴史の中でも藤田宗一氏(1954年・国鉄)、稲尾和久氏(1970年・西鉄)、長嶋茂雄氏(1975年・巨人)、広瀬叔功氏(1978年・南海)、有藤通世氏(1987年・ロッテ)、伊東勤監督(2004年・西武/現・ロッテ監督)、高橋由伸監督(2016年・巨人)のわずか7人。選手兼任からの監督就任を入れても14人と、決して頻繁にあったわけではありません。にもかかわらず、ここ数年は「またか」と思うような頻度でこうした事例が増えています。

「選手には『いま逃したら』という思い、そういう強迫観念みたいなものが、私たちが思っている以上にあるのかもしれません。井口選手や、三浦大輔さん、番長なんかは時が来れば自然と監督になる。そういう流れがあるはず。球界、球団にとって、そういう揺るぎないものがある選手だと思うんですけど、本人はこのチャンスを逃したらって思う部分もあるのかもしれません」

選手と監督はやはりまったく別の立場。それでも選手たちが監督のオファーを受け入れるのは、「いつかはもう一度ユニフォームを着たい」という強い思いがありそうです。

池田氏が井口新監督就任に対して気になったこととは

今季は早々に最下位に沈み、浮上のきっかけを得られないまま終戦したロッテ。チーム打率が1割台という時期もあり、伊東監督は8月に入った時点で今季限りの辞任を発表するなど、ロッテのチーム状況は決して芳しくありません。そんな中で出てきた、井口選手の監督就任の話。監督経験の無さを不安視する声もあります。

「井口選手どうこうじゃなくて、現状弱いチームをそのまま渡されても厳しいですよね。例えば、若い層が育ってきていて数年内に最低限はAクラスを狙えると思えるチームなのか、上り基調にいるのか、ドラフトにどこまで権限があって、選手補強はどこまで関われるのか? 仮にフロントがチームづくりを担うとすると、井口新監督が任されるのは采配だけ。正直若手もまだ育ってきていない状態でかなり難しいタスクを背負うことになります。さらに、ロッテはさまざまな噂も飛び交ったりするくらいいろいろな事情があって、外部から見ていると現状は不透明な部分がものすごく多い印象もあるように思いますが、そんな中でよく受けたなと思います」

現状と合わせて池田氏が指摘するのは、井口新監督に与えられる権限です。

「どういう打診があったのか、契約の際の条件とか、細かいところまで知っているわけではありませんが、井口選手にどれくらいの権限が与えられているのかというのがすごく気になります」

ベイスターズの球団社長として経営に携わった池田氏は自らの経験を語ります。

「横浜はGM制度を採用しているので、監督の権限は本当に采配ですよね。だから、2軍から1軍への選手の上げ下げに関しても、起案はできるけど承認を得たり、GMと合意したりもしないといけません」

ファンにとって「大切な選手」である井口選手が、監督として再びスタジアムに戻って来るのは喜ばしいことですが、権限を与えて環境を整えない限り、長期安定政権は難しそうです。

「やっぱり若手が育ってきて、これはクライマックスシリーズに持っていける、優勝できるという目処が立ったときに就任という方が、チームにとっても本人にとってもいいですよね。もちろんファンも強いチームが見たいですし、井口監督を長く見たいはずです。確かに外野がとやかく心配することではありませんが、こういったところが“野球”の“誰もが監督になれる”、“誰もが評論家になれる”という面白いところでもあります。とにもかくにも、結果を出さないと監督本人はクビになってしまう世界でもありますので、ロッテの飛躍を期待しています」

プロ野球で日本一、さらにはワールドシリーズ制覇も経験している井口選手。MLBを経験した日本人としては初めて監督に就任するレジェンドの来シーズンに注目が集まっています。

<了>

取材協力:文化放送
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VictorySportsNews編集部